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| P18 | 経済が衰えるとき、日本の老練な大蔵大臣は試練に直面 | wilt : 衰える、 |
| 1 | 今日、日本の状態は悪いように見えるが、本当に悪かった時期のことを宮沢喜一 ほど知る人はいない。元気な大蔵大臣−−小柄で、生気に満ちウィットに富 んで生き生きとしている−−は1950年に始めて渡米した。戦後日本のトップ 外交官のお供をしたのだ。日本は戦争による崩壊から必死に立ち直ろうとして おり、宮沢の特命は恒久平和と米国占領の終焉のためにロビー活動をすること だった。先週、日本のこの古参政治家は違う使命でワシントンにきていた:国際 金融の指導者達に、世界第二位の経済大国は崩壊−−世界を道連れにして−− しないと説得するために。怪しいものだと思われただろう。だが宮沢は確信 していた:「私はずっと、日本は逆境に打ち勝ち、信頼できる先進国として 蘇ると確信しています」と東京にある閑静な自分の事務所で大臣はTIMEに 語った。「時間はかかるかもしれませんが、道を誤ってしまうことはありま せん。」 | bad old days : 不快だった昔,いやな昔の頃、 sprightly : 元気な、 diminutive :小柄の、 animated : 活気に満ちた、 nervous energy : 神経エネルギー、 at the elbow : すぐ傍らに、 diplomat : 外交官、 painstakingly : 労を惜しまずに、 lobby : 議員に働きかける、 occupation : 占有,占領、 financial leader : 有力な財界人、 tank :だめになる,おしゃかになる、 skepticism : 懐疑、 overcome adversity : 逆境に打ち勝つ、 dependable : 頼もしい,信頼できる、 advanced country : 先進国 |
| 2 | 実際のところ方針を誤る暇はない。去年タイで始まった金融危機は、世界の 金融市場を巻き込んでその猛威を振るい続けている。先週、ヨーロッパ、 アジア、米国の市場は激しい乱高下を記録した。投資家が先を争って売ったり 買ったり、また売ったりした結果だ。恐怖感のためか、ドルは円に対して25年 間で最悪の下げ幅を記録。ドルの下落は、日本に対する信頼の回復によるもの ではなく、大幅にレベレッジ効果の起きる円に急いで現金に換えようとするヘッジ ファンドでの金融調整によるものであった。乱高下がどうなるかはわからない。 インドの大蔵大臣ヤシュワント・シンハは、先週のIMF会議の終わりにこう 語った:「現実は、5日間熱心に議論してもまだこの伝染病が広がり続ける 原因について途方に暮れている状態だということです。」 | rampage : 狂暴な行為,大暴れ、 chaotic : 混沌とした、 contagion : 伝染,伝染病、 yo-yo : ヨーヨー,(ヨーヨーのように)上下運動を繰り返すもの,変動するもの、 scramble :先を争って〜する、 jitters : 神経質、 wind sprint :スパートのための呼吸能力を高める短距離スピードトレーニング、 hedge fund : へッジファンド(信用取引やオプションを積極的に利用してできる だけ多くの投機的利益を配分することを目的とした有限責任のファンド)、 leveraged :他人資本をてこにした、 International Monetary Fund : 国際通貨基金、 brute : 獣のような |
| 3 | しかし誰もが同意することは、今でも苦しんでいる日本の経済が崩壊すれば 世界もそれに続くかもしれないということ。アメリカのクリントン大統領は こういった、「アジアのひいては世界の健康は日本にかかっている」と。 20年間成長の指標と迎えられてきた日本の経済は、7年間もたつき、厄介で さらに悪化する景気後退の第三四半期にいる。日本でもっとも急を要する 問題は:かつては力のあった銀行であり、少なく見積って6,000億ドル、 一説によれば1兆ドルとも言われる焦げ付き融資が問題だ。先週水曜日、 国会議員達がやっと銀行救済案に同意したというニュースで、希望を持った 投資家が日経平均株価を6%も押し上げた−−翌日には同じぐらい下がった のだが。金曜日にはここ13年で最低の水準まで再び下がってしまった。 | limp : 軟弱な,難儀する、 meltdown : メルトダウン,炉心溶融、 hail :歓迎する,歓呼して迎える、 beacon : 航路標識,信号灯、 sputter : 口ごもる、 third quarter : 第三四半期、 nasty : 険悪な、 recession : 景気後退、 immediate problem : 手近な問題、 nonperforming loan : 焦げ付き融資、 hopeful : 望みを抱いている,有望な、 Nikkei stock average : 日経平均株価、 stunning : とても魅力的な,気絶させるような |
| 4 | 市場を沈静化し日本の信頼を取り戻すべき立場にいる人は宮沢だ。国際主義者 のこの大蔵大臣は、アメリカとの貿易摩擦を戦い、改革に関しては自らの大蔵 官僚とやりあってきた。1987年、ブラックマンデーがアメリカの株式市場を崩 壊させたとき、宮沢(大蔵大臣として米国を訪問していた)は英雄だった:さ らなる暴落を防ぐため日本の膨大な資金を放出したのである。去年の11月、 日本の大手金融機関のうち4行の破綻がパニックを誘発するかにみえたとき、 宮沢から当時の橋本竜太郎首相に電話があり、危機回避のための資金を取って おくよう要請があった。橋本は今年7月の選挙の大敗で辞任、その後継者小渕 恵三は、8月、宮沢を大蔵大臣に任命した。 | designated : 指定された、 credibility : 信頼性、 internationalist : 国際主義者、 wrestle with : 〜に取り組む、 Black Monday : ブラック・マンデー、 equity : 普通株、 unleash : 解放する,放つ、 avert : 避ける,防ぐ、 financial institution : 金融機関、 touch off :誘発する、 prompt : を促す、 set aside :取っておく、 some money : なにがしかの金、 stem : くい止める、 election defeat : 選挙での敗北、 successor : 後継者,後任(者) |
| 5 | だが、今の日本は宮沢や筋金入りの自民党員が築いてきた国とは違う。奇跡 を起こしてきた銀行家は自分のことで精一杯だ。大蔵省(宮沢の経歴はここ から始まる)は一連のスキャンダルにより、全能の政策マシーンから信用の ない夢からさめたような浮かない官僚の集まりとなってしまった。そして 1993年までは他を寄せ付けずに日本を独占的に統治してきた自民党は今、 有権者が経済への信頼を失うにつれ権力基盤が崩れていくのをみている。7月 には、経済への実行能力の無さからか、自民党は選挙に敗れ議会での拒否権を 野党に与えてしまった。その結果は:宮沢と小渕首相は事ある毎に民主党 (日本の野党である民主党)と対決しなくてはならない。 | worlds apart : まったくかけ離れて、 Liberal Democratic Party : 自民党、 party stalwarts : 筋金入りの党員、 Ministry of Finance : 大蔵省、 all-powerful : 全能の、 discredit : の信用を落とす,不名誉、 disillusioned : 幻滅を感じて,夢が覚めて、 band of : 〜の一群、 unimpeded : 妨げられていない、 power base : 権力基盤、 erode : 侵食する、 voter : 投票者、 lose faith in : 〜に不信感を抱く、 inability : 無能、 veto power : 拒否権、 at every turn : 事あるごとに,絶えず |
| 6 | 政治での戦いは、日本の銀行の運命に関する争いに顕著に現れている。宮沢は 当初、日本の大手19行の金融機関に対して980億ドルの救済基金を提供す る予定であった。しかし、民主党の精力的な指導者管直人は、民主党は政府が 銀行を単に金銭的に救済することは認めないと通知した。それどころか、民主 党は公的資金の使用も反対し、日本の金融界では聞き慣れない言葉で、経営の まずい銀行はモラルハザードを起こしており倒産するべきものは倒産させよ と主張している。さらに悪いことには、宮沢自身の党内の若い改革志向の リーダー達も野党の側につき、宮沢の馬鹿げた案、すなわち単に銀行に金を 捨てるような案に代わるものを考え出そうとして終夜の会議に加わった。 「世代の交代によりやりかたが全く変わってしまった」と先週大蔵大臣は ため息交じりに語った。「政治家達が『大蔵省の』我々から銀行業務を 奪ってしまった。 | clearly evident : まったく明らかな、 struggle over : 〜に関する闘い、 dynamic : 精力的な, 活動的な、 serve notice to :〜に通知する、 bail out : 金銭で救済する、 public fund : 公共資金、 lexicon : 語彙目録,用語集、 moral hazard :道徳的危険《被保険者の不注意・故意など人格的要素に基づく保険 者側の危険》,モラル・ハザード、 collapse : 崩壊する、 reform-minded : 改革志向の、 side with :〜に同調する,〜側につく、 opposition leader : 野党党首、 all-night : 終夜の、 session : 集まり、 come up with : 見つけ出す,考え出す,提示する、 alternatives : 代案、 simple-minded : 愚かな,単純な、 throw money at : お金をつぎ込む、 generational change : 世代の交替、 concede : 真実と認める |
| 7 | しかし、宮沢は経済に長けているだけではなく政治にも長じている。先週彼は、 昏迷する銀行の解決策を早めるための妥協案の画策に一役かった。提示された 法案によると、政府は、資本不足だがバイアブルな(生き残れる、最近日本で 使われる新語の一つ)銀行に当初は2,400億ドル−−必要ならもっと多く−− を提供するというもの。米国も日本も、この2つの法案が今の国会が終わる 10月16日までに通ることを希望している。通過すれば確実に景気の後押しと なるだろう。逆に野党の反対で通らなければ、日本のほとんど残っていない 信頼の最後の一片が粉砕されることとなるかもしれない。 | as much : ちょうどそれだけ,等しく、 political animal : 政治家的な人間、 compromise : 妥協案,歩み寄り,和解、 bill : 法案、 undercapitalized : 資金不足の、 viable :生存能力のある、 new word : 新造語、 passage :通過、 solid : 確かな,根拠のある、 boost : 景気づけ,後援、 roadblock : 路上の障害物、 torpedo : 粉砕する、 fragile : もろい,割れやすい,危うい |
| 8 | 悲しむべきことに、2つの法案が通っても日本の低迷を元に戻すには遅すぎる かもしれないということだ。消費者はお金を使うのに非常に慎重になっている ので、政治家は「楽しい月曜日」などというのを提案したりする−−日本人が 働く代わりにショッピングを奨励される日のことで、220ドルの「商品券」が 配られるのである。銀行に対する圧力は大規模な信用危機を引き起こし、それ がまた空前の破産件数の原因となっている。誰も買い物をしないので、価格は 下落し続ける。「デフレの脅威が目前にある」と日銀のアメリカにおける 総支配人のAkinari Horiiは言っている。改革志向の自民党議員Nobuteru Ishiharaはもっとわかりやすく次のように言う:「去年の夏我々は崖から 少し離れたところにいたのだが、今は30cmと離れていない。」 | reverse : を反対にする、 desperate : 自暴自棄の、 entice : 誘惑する,誘う、 gift certificate : 商品券、 credit crunch : 信用危機,クレジット・クランチ、 all-time high : 空前の高さ,空前の高記録、 deflation : デフレ,収縮、 general manager : 事業部長,総括管理者、 Bank of Japan : 日本銀行,日銀、 reform-minded : 改革志向の、 graphically : いきいきと、 cliff : 崖 |
| 9 | 何ヶ月もの間日本の病気を治す単純な処方箋が提供されて来た:消費せよ。 アメリカの財務長官ロバート・ルビンとFRB長官アラン・グリーンスパンは 銀行を救済し経済を活性化するために公的資金を使うよう日本政府に要求 してきた。小渕と宮沢の下で、その蛇口がようやく開き始めた。8月に減税 と支出法案を持ち出したあと、先週政府は経済にさらに800億ドル投入する ことを提案。宮沢が日本の計画を説明するためワシントンでルービンと会談 したとき、彼が新たに提示したのはわずかに一つ−−昏迷するアジアの経済 に対する300億ドルの援助計画−−だけで、それも、日本の経済刺激対策は 期待するほどの効果は保証できないと警告していた。日本の大蔵大臣はアメ リカの財務長官にこう言った:「成功することをひたすら願っています。」 | formula : 処方、 Secretary of the Treasury :財務長官、 Federal Reserve : 連邦準備制度、 spigot : 樽などの栓,蛇口,栓、 tax cut : 減税、 aid package : 総合的援助計画、 stimulus package : 刺激策、 desired effect : 所期の効果、 cross one's fingers :幸運を祈る,人差し指の上に中指を重ねる |
| 10 | 運を天に任すしかないことはアメリカの高官も認めるところである。この木 曜日に79歳になった宮沢は、祝うどころじゃないと語る。「私がこれまでや り遂げて来たことは全く自慢できることではありません。単に損失を最小限 に食い止めようと最善を尽くしているだけです」と彼は言う。宮沢は、日本 の誰よりも、失うべき物を持つ以前の古い時代のことを覚えている。1950年 にアメリカの首都に行ったとき、この若い官僚はホテル・ワシントンの一晩 7ドルのダブルの部屋で、大蔵大臣池田隼人とごろ寝をした。近頃は一流の マジソンの豪華な部屋を宮沢は好んでいる。しかし今月日本の銀行の状態が 悪化すれば、あの古きホテル・ワシントンの部屋に戻りたくなるかもしれない。 | minimize : 最小限にする、 bunk :ごろ寝する、 Hotel Washington : ホテル・ワシントン、 deluxe : 贅沢な、 swank : 高級な,一流の、 Madison : マジソン、 head south : 景気が下向く |
cash in the bond: その債権を現金化する
cash out だったら逆だから円化あるいは円に換えておくとなりません?
By 茜さん
Cash outと言う言葉の意味は知りませんが、最近の円高の犯人はヘッジファンドだそうです。 心は、以前に金利の安い円(公定歩合いくらだっけ?)で借りマクッテ、ドルに換えて米国その他の金融資産(ロシアが最悪だったらしい)に投資して、損を沢山だした。円借りのポジションを解消するため、ドルから円に換えなければならず、これが円買いとなって現れ、円高となったようです。
解消とでも言えばいいのだと思います。 普通は?unwindと言う言葉を使うようで、日本
でも金融関係者はunwindと言っているようです。
By 篠原さん
(注釈)
銀行で言うモラルハザードと言うのは、銀行はtoo big to fail であることを自ら知っていて最後には中央銀行或いは国が救済すると思って野放図な経営を行うこと。 その端的な現れが不良債権
By 篠原さん
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