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| P40 | 先週の、治療がもう目前であるという驚くべきニュースは、当然のことながら、 本当では有り得なかった。だがそれでも、今は癌研究の躍進の時代なのである | imminent : 差し迫った,切迫した |
| 1 | 自分で経験するか、最愛の人が苦しむのを見るかしなければ、癌がいかに人を 死にもの狂いにさせるものかは理解できない。祈り、怒り、また神と取り引き したりするのだが、なによりも、少しでも生きる希望があればそれにすがるの である。たとえそれがどれほど微かなものであろうと。 | go through :経験する、 desperate : 死にもの狂いの、 rage :激怒する、 clutch at : つかもうとする、 |
| 2 | 先週の浮れ騒いだ何日か、まるで全世界が癌患者であり、人類は執行猶予を与え られたかのように思われた。いつもは抑え気味のニューヨークタイムズの1面に 載った医療ニュースに触発されて、誰も彼もが話していたことは−−ラジオで、 テレビで、インターネットで、友達や親戚に電話で−−タイムズが言っている、 2つの新薬を組み合わせると、癌が2年のうちに治療可能になるという記事のこ とだった。 | heady : 陶酔させる,せっかちな、 reprieve : 刑の執行猶予、 reserved : 控え目な、 New York Times : ニューヨーク・タイムズ紙 |
| 3 | 何時間もしないうちに、患者は医者に先を争って電話をかけ、奇跡の癌治療 薬を試す機会を求めた。投資家は儲けようとして、EntreMedと呼ばれる 小さな会社の株を、ウォール街でのもっとも変動の激しい株に変えてしまった。 癌研究者は、誰もがその研究について知っているかどうかを確かめようと、 電話やファックスに殺到、新たに見出しを飾ることとなり、何週間も続く 医療に関する第二の報道騒ぎとなる。またもやビアグラ騒ぎだが、冗談では ない。 | matter of : およそ〜、 scramble :先を争って〜する、 a piece of action :《俗》割当て,分け前、 volatile : 不安定な、 perpetuate : 永続化する、 frenzy : 狂乱、 Viagra :インポテンツを直すと言われる薬 |
| 4 | 確かに、癌の研究の躍進が見込まれる時期である。つい先月NCIが、タモキシフェン と呼ばれる薬の臨床実験を中止する−−偽薬を与えている患者にタモキシフェン を与える−−と発表したばかりである。それが乳癌の予防に非常に効果がある ことが判明したからである(子宮癌の危険性を高めはするけれども)。さらに、 予稿では、もう一つの薬ラロキシフェンは、他の腫瘍の発生を高めずに乳癌を 予防するだろうと示していた。2週間後に、2つの新薬は、なんら副作用を出さ ずにあらゆる腫瘍を縮小させるというタイムズの記事がでたのである。 | ripe for : 〜の機が熟して、 breakthrough : 進展,大発見、 National Cancer Institute : 《米》国立がん研究所、 halt : 停止する、 clinical : 臨床、 tamoxifen :《癌細胞のエストロゲンレセプターをふさぐ抗腫瘍薬,閉経後の女性の 乳癌の治療に用いる》、 placebo :偽薬、 uterine : 子宮、 raloxifene : SERMs(selective estrogen response modulators)という合成物質の ひとつ, estrogen therapyの利点を持ちつつ,その欠点を排除した薬、 malignancy :悪性腫瘍、 tumor : 腫瘍、 side effect : 副作用、 whatsoever : =whatever,少しの〜もない |
| 5 | 本当なら凄いことだが、無論のこと本当ではなかった。奇跡の癌の薬は ない、少なくともまだないのである。現段階でEntreMedが提供できるものは、 アンジオスタティンとエンドスタティンと呼ばれる非常に興味深い分子であり、 それによって治療できる癌はマウスの癌だけである。先週の中頃までには、 騒ぎ立てるテレビのショーの司会者でさえ、どの科学者も既に知っていること を知った:実験動物の病気を治すことと人間の病気を治すこととは違うと。 「癌研究の歴史はマウスの癌を治療する歴史であった」とNCI所長リチャード・ クラウスナー博士はロサンジェルスタイムズに語った。「私たちは何十年も 癌に罹ったマウスを治療してきました−−ただ、人には効果がなかったので す。」 | cancer drug : 制癌剤、 at this stage : この段階では,現在のところ、 molecule : 分子、 so far : 今のところ |
| 6 | だがそれでさえ、将来超えるべき科学的な障害を控えめに言っている。 アンジオスタティンとエンドスタティンが人に効くかどうかは誰にも分からない のである。その物質が効くようにする方法を見出したとしても、薬を市場に 出すための完璧な臨床実験には4億ドルと少なくとも10年−−2年ではなく−− かかると製薬会社は見積っている。 | understate : 控え目に言う、 hurdle : 障害物、 figure out : 解決する、 compound : 化合物、 pharmaceutical company :製薬会社 |
| 7 | とすると、先週の出来事は何だったのか?ある点では、これは科学雑誌編集の 失敗のケースである。著名な科学記者ギナ・コラタによって書かれた、ニューヨーク タイムズの元の記事には必要な注意があちこちに書かれてはいたものの、いくつか の重要な点でEntreMedの研究の趣旨を歪めていた。またそれは、薬の発見者である ボストンのChildren's Hospitalの研究者、ジュダ・フォークマンの役割を 誇張しロマン的に解釈していた。これには彼の同僚も驚き、フォークマンは 当惑した。 | go awry :しくじる,失敗する、 sprinkle : 〜をまく,点在させる、 caveat : 警告,注意、 distort :ゆがめる、 romanticize : ロマン的に解釈する,空想的にする、 colleague : 同僚、 embarrass :当惑させる |
| 8 | だが、まやかしや混乱を他所にして、まさに何かが進行中である。今は、 癌研究で活気のある時期である。恐らく、1971年にリチャード・ニクソン が癌戦争を宣言して以来もっとも活発な時期であろう。脈管形成抑制という、 フォークマンが先駆者である腫瘍の栄養を絶つ過程は、事実、研究としては 実りある方向である。多くの実験室が先を争って完成させようとし、 フォークマンの実験室より進んでいるところもある。だが可能性のあるのは そういう方向だけではない。同じく活気のあるのは、遺伝子と癌細胞が分子 レベルでどう作用するかを知ることによって可能となった、癌治療における 革命である。その成果は既に人間にも施されている(次の記事を見よ)。 | hype : 誇大宣伝,まやかし,いんちき、 angiogenesis : 脈管形成、 inhibition : 防止,抑圧,抑制、 gene : 遺伝子、 cancer cell : 癌細胞 |
| 9 | 実験動物における予備データの記事が、何をどう間違えてしまったのか? カギはタイムズのコラタの記事と、それが載せられた紙面にある。彼女は こう書き始めている、「1年以内に、もし全てがうまくいけば、あらゆる タイプの癌を除去できる2つの新薬が癌患者に投入されるだろう。これには 副作用も、薬物耐性もない−−マウスでは。」これは読者を惹きつけずには おかない文章であった−−重要な2つの言葉「マウスでは」があっても−− そして記事全体がこの調子だった。 | preliminary data : 予備データ、 laboratory animal : 実験動物、 spiral : 螺旋状に進む、 out of control : 収拾がつかない、 prominent : 目立った、 placement :配置、 go well : うまくいく、 eradicate : 根絶する、 side effect : 副作用、 drug resistance :薬物耐性、 critical : 重大な |
| 10 | ある程度の省略は別として、コラタが書いた記事には間違った事実はない。 フォークマンは、ことさらに自分の発見を重要視しないように言っていた。 だが彼が注意深く言葉を選んでも、コラタが大勢の科学者の言葉を引用し、 彼らがフォークマンの仕事を述べるときに使う表現によって、それはかき消さ れてしまった。彼の業績は「remarkable」であり、「exciting」であり、 「wonderful」だった。NCIのジェームズ・プラダ博士は、自分と同僚達は そのデータに「electrified」され「almost overwhelmed」されたと語った。 | apart from : 〜はともかく、 omission : 遺漏,省略、 inaccurate : 不正確な、 go out of one's way to :ことさら〜する,無理をしてまで〜する、 downplay : を見くびる,重要視しない、 findings : 研究結果、 cautionary : 警戒的な、 overshadow : 暗くする、 quote : 引用、 adjective : 形容詞、 electrified : メロメロになった,酔っぱらった、 overwhelm : 圧倒する,打ちのめす |
| 11 | しかしながら、その記事が確かだとし、第一面に持ってこさせた言葉は、 DNAの二重らせんの共同発見者で、世界でももっとも有名な科学者の一人 であるジェイムズ・ワトソンの言葉である。「ジュダは2年以内に癌を 治療するだろう」と言ったとされている。 | nail :強く打つ,直撃する、 double helix : (DNA分子の)二重らせん |
| 12 | これはジャーナリストが一番聞きたいことだ。タイムズは高級紙であり 非常に影響力があるので−−また新しいものに対する判断は極めて保守的で あるという評判もある−−詳細をチェックする間記事を差し止めようという レポーターはほとんどいなかった。また、もっと冷静な記事を書いた人達で さえ、何か重要な事が起こっているという印象を強めただけのように思えた。 通信社はその重大ニュース報道し、テレビのニュースキャスターやラジオの アナウンサーは同じ報道を繰り返した。タブロイド紙は、ご丁寧にも、何でも やってみようという必死の癌患者の、涙を誘う物語を報道した。 | endorsement : 裏書き,賛成,確認、 wield : 行使する、 check out : (調べて)確認する、 all the details : 一部始終、 reinforce : 〜を補強する,強める、 wire service :通信社、 tick off :チェックする,的確に述べる、 ticked off : Angry. See pissed off.、 anchor : (テレビ・ラジオの)ニュース番組の責任者兼キャスター、 sound bite : (ニュース番組で)出来事を端的に伝える映像(繰り返してよく使われる)、 tabloid :タブロイド新聞《普通の新聞紙の半ページ大;写真が多く記事は短くて, しばしば いかがわしく煽情的》, dutifully : 恭しく、 serve up : 給仕する,蒸し返す、 desperate to : 〜しようと必死の |
| 13 | ほとんどの人は、自分達は新しい発見について聞いているのだと考えた。実の ところは、アンジオスタティンとエンドスタティンに関するフォークマンの研究 は、何ヶ月も前に科学雑誌に載っていたし、数週間前にはビジネス・ウィークに も掲載された。ネイチャーに載った11月の記事で、EntreMedの株は28%跳ね上 がり、一株15.25ドルとなった。だがそれも、先週に比べるとたいしたことはない。 先週は、結局は金曜日の引けで33.25ドルになったものの、一時は80ドルを超える ほど暴騰したのである。 | scientific journal : 科学雑誌,学術誌、 boost : 押し上げる,つり上げる、 rocket : 暴騰する |
| 14 | 時が経つにつれ、事態はさらに複雑になった。タイムズへの手紙で、ワトソンが 自分の言葉を否定したのだ。「6週間前のUCLAの会議で、私は[コラタ]の隣に 座った」と彼はタイムに語った。「彼女はメモをとってなかった。」フォークマン の研究に興奮したとは言ったが、癌が2年以内に治療されるだろうとは彼女に 話していない、と彼は言っている。 | complication :合併症,混乱 |
| 15 | コラタは自分の記事を支持している−−タイムズも同様だ。「私たちは、その記事 にも、その記事を載せた紙面にも満足しています」と雑誌のスポークスマン、 ナンシィ・ニールセンは言う。ワトソンの言葉については:「評価の高い科学者 と争うつもりはありません。しかし記事の正当性には確信があります。」 | stand by :〜を支持する、 coverage : 取材,報道、 confident : 確信している |
| 16 | だがまもなく、事態はコラタにとって悪いほうに向かった。水曜日に、 ロサンジェルス・タイムズが、フォークマンの研究に彼女が熱心なのは、本の 出版に関係があるかもしれないと言ったのである。事実、彼女の代理人の ジョン・ブロックマンに勧められて、ブロックマンが言うところの、うまく 出版社が見つかれば200万ドルの価値があるという電子メールを急いで書いた のだ。だが編集者との会談の後で、コラタは本を書くという考えは放棄 した。「私は本を書く予定はなかった。わずかでも申し出と思われるような ことは書く事はなかったし、思い付きはすぐに取り消したわ」と彼女 は言う。 | deal : 取引,商売、 at the urging of someone:〜に勧められて、 dash off a letter :手紙を大急ぎで書きあげる、 e-mail : 電子メール、 quash : 却下する,取り消す、 remotely : およそ,ほんのわずかも,これっぽちも |
| 17 | その後、ニューヨークポストは、フォークマンがランダムハウスと100万ドルの 出版契約に加わっていると掲載した。根も葉もない、とランダムハウスは言う。 ランダムハウスがニューズデーの科学記者ロバート・クックを指名してフォーク マンの人生につていの本を書かせようとしたこと、フォークマンがそれに協力 すると言ったことは本当である。だがフォークマンは、その取り引きでお金を 受け取ることはない。 | share in : 分配にあずかる、 tap :選ぶ,指名する、 Newsday :ニューズデー《New York 市郊外で発行されているタブロイド版夕刊紙; 部数 56 万; New York 市からの帰宅途中の通勤客が読者層》 |
| 18 | 彼が得るものはと言えば、一人で築き上げてきた脈管形成の分野の認知である。 1970年代というと、癌の研究者が考えていることは、大部分の腫瘍はウイルスに よって引き起こされるというものだったが、フォークマンは独自の異なる見地 を追求していた。癌細胞がまだ小さいとき−−直径1ミリか2ミリ−−には 生きていくのに血管は必要としない、ということに彼は気付いていた。 しかし、生命を脅かすほどに成長するには、血液が必要となる。近くの毛細 血管に命令して、自分の癌細胞のところまで届くようにして血液を手に入れる のである。 | hard-won : やっとまとめ上げた、 recognition : 認知、 single-handedly : 独力で,単独で、 angiogenesis : 脈管形成、 conventional wisdom : 従来から培われてきた知恵,一般通念、 tumor : 腫瘍、 virus : ウイルス、 insight : 見識、 blood vessel : 血管、 life-threatening : 生命を危うくする、 capillary :毛細血管、 |
| 19 | 科学界では事実上孤立した状態ではあるが、腫瘍を殺すには、直接攻撃する より血液の供給を止めるほうが簡単だとフォークマンは考えた。彼の推論は 妥当なものだった。腫瘍は、急激に分裂する突然変異細胞でできており、 それらに投与されるあらゆる治療にすぐに対応してしまう。それに比較して、 血管は通常の細胞からできており、成長ははるかに緩やかで、治療を無効に することもない。栄養の供給ラインを通じて腫瘍を餓死させようと、フォークマン は、新しい血管の作成を阻止する薬を探し始めた。 | virtually : 事実上、 blood supply : 血液供給、 reasoning : 推理,論法、 divide : 分割する、 mutant cell : 突然変異細胞、 adapt : 順応させる、 nowhere near : はるかに〜でない、 outwit : 鼻をあかす,裏をかく、 starve : 飢えさせる、 supply line : 供給ライン,補給線、 nutrient : 栄養物,食物 |
| 20 | 最初は、もう少しで成功するかと思われた。あらゆるものを調べた−−軟骨から 菌、そして悪名高き鎮痛剤サリドマイドまで−−フォークマンは抗血管形成を 示す物質を次々と見つけた。だが、どれも彼が望んでいるほど効果的ではな かった。次に、外科医がよく見かけるものを思い出した:患者の大きな腫瘍を 摘出すると、たくさんのもっと小さい腫瘍が成長し始めるということ。腫瘍は、 他の腫瘍の血管の成長を阻止する物質を分泌するのだろうか? | cartilage : 軟骨,軟骨組織、 fungi : 《名》fungusの複数形,菌(類),キノコ、 notorious : 悪名高い、 sedative : 鎮痛剤、 thalidomide :サリドマイド《鎮静薬・催眠薬》、 compound : 化合物、 properties :特性、 surgeon : 外科医、 secrete : 〜を分泌する、 substance : 物質、 inhibit : 〜を抑制する,妨げる |
| 21 | それはあまりに変わった考えだったので、フォークマンの研究室の科学者は 誰もそれに関わろうとはしなかった。そのうちの一人、マイケル・オレイリィ が遂にその研究を引き受けた。彼とフォークマンは、プラスミノゲンという 天然蛋白質の様々な部分が目的に適っていると断定した。彼らはその分子の 集まったものをアンジオスタティンと呼び、物質の各バージョンは、腫瘍の 成長を止める能力がわずかずつ異なっていることを発見した。だがアンジオ スタティンのどのバージョンもマウスの腫瘍を除去できなかった。つまり、 フォークマンとオレイリィが、もう一つの、天然蛋白質でエンドス タティンと呼ばれる物質をそこに加えるまではできなかったのである。 2つを合わせると、マウスのあらゆる腫瘍を除去できた。その結果は余りに 驚くべき効果があったので、人間に試す価値があった−−これはまさに NCIでプラダがやろうとしたことだ。この研究の進展は、EntreMedとその提携 会社Bristol-Myers Squibbがどれほどアンジオスタティンとエンドスタティン を生産できるか、また、最初に重点を置くべき部分を見つけることができるか どうかにかかっている。 | take on : 引き受ける、 segment : 断片,部分,分節、 protein : 蛋白質、 plasminogen :プラスミノゲン《プラスミン《血漿中の蛋白質分解酵素》の前駆体》、 do the trick : 効き目がある,目的に適う、 fragment : 断片,小部分、 configuration : 構成,配置、 startling : 驚くべき、 figure out : 見つけ出す |
| 22 | 少なくとも今では、フォークマンは自分の時間を割いて、癌治療のこの方法が 有力であると他の研究者に説明する必要はない。科学者達は、脈管形成阻止の 可能性がある300の物質を今調査している。そのうち20の物質が既に人間に 対して臨床実験の段階に入っている。実のところ、タモキシフェンのような 最新の癌治療のいくつかは、新しく形成される血管の成長を部分的に阻止 するのではないかと考えられている。 | nowadays : この頃は、 currently : 目下,現在、 substance : 物質、 angiogenesis : 脈管形成、 tamoxifen : タモキシフェン |
| 23 | 血管に関わるとあるリスクが生じる。脈管形成は時にはいいこともあるのだ、 特に妊娠期間中は。今日研究されている有力な抗脈管形成は、あの昔の悪夢 サリドマイドであり、これは1950年代、発育中の胎児に血液供給を断ち多くの 奇形児を生み出した。 | mess with : かかわり合いになる、 pregnancy : 妊娠、 potent : 有力な、 scourge : 災難,天罰、 birth defect : 奇形児,先天性異常、 blood supply : 血液供給、 fetuses : 胎児 |
| 24 | また、傷を治すときにも、脈管形成により新しい血管を作っている。これは 糖尿病患者の関心事であり、彼らの傷−−特に足だが−−は傷口がふさがるのに 時間がかかり、感染しやすくなる。幸運なことに、彼らは新しい処方クリーム を使うことができる。FDAが認可した最初の脈管形成製品で、体の回復過程を 促進し、足や爪先の小さな毛細血管の成長を助けるものである。 | wound healing : 創傷治癒、 diabetes : 糖尿病、 abrasion :すり傷、 vulnerable to : 〜に弱い、 infection : 感染、 prescription : 処方箋,処方薬、 angiogenesis : 脈管形成、 FDA :=Food and Drug Administration,食品医薬品局、 approval : 認可、 stimulate : 促す、 repair : 修復する、 capillary :毛細血管、 toe : つま先,足指 |
| 25 | 最新の脈管形成抑制剤は、放射線や化学療法に比べると比較的副作用はない けれど、リスクが全くないというわけではない。「動物に対して毒性がない ということは、必ずしも人間に対して毒性がないというわけではない」と ボストンに本拠を置く、最新の研究に対する非営利情報センター Angiogenesis Foundationの医療部長、ウイリィアム・リーは言う。 | chemotherapy :化学療法、 toxicity : 毒性(度)、 medical director : 医長、 nonprofit : 非営利的な,非営利的団体、 clearinghouse : 情報センター |
| 26 | また、脈管形成抑制剤が、すべての癌に等しく効果があるわけでもない。 Angiogenesis Foundationは29種類の充実性腫瘍を分析し、血管網への 依存に違いがあることを発見した。 | analyze : 解析する、 solid tumor : 充実性腫瘍 |
| 27 | こうした知識を基にして、若い研究者達は、フォークマンの技術を改善できる と考えている。彼らは好んで研究を絞り込む:新しい血管を形成するときに 関与する分子や生化学信号に的を絞るのである。例えば、サンディエゴにある バイオテクノロジーの会社Ixsysの研究者は、腫瘍の毛細血管を繋ぎ止めておく 生化学的接着剤を溶解する、人工的抗体を開発した。実際、安全を考慮した 研究で、患者の一人は予想を大きく上回って、腹部の腫瘍のうち2つが70% 縮小した。「今では1年以上薬を服用している。9ヶ月前より元気だし、 体重もずいぶんと戻ってきた」と、珍しい肉腫に苦しんでいるイリノイ州 の大学教授、バリー・リッチオは語る。 | armed with : 武装して、 biochemical : 生化学の,生化学的な、 biotech :=biotechnology,バイオテクノロジー,生命工学、 antibody : 抗体,免疫体、 dissolve : 溶解する、 glue : 接着剤,膠状、 abdomen : 腹,腹部、 sarcoma : 肉腫,肉しゅ |
| 28 | 別のターゲットに的を絞っている研究者もいる。VEGF(血管成長因子)と呼ばれる 特別な成長因子に注目している人もおり、それは今のところ、腫瘍に栄養分を与え る血管にのみ見つかっている。UCLAでテストされている合成物質は、細胞の レセプター内でVEGFをわきに追いやり、それに取って代わることで、VEGFが成長 を促すのを阻止する。安全を考慮した30人以上の患者における研究では、副作用 は今のところ現れていない。ただ腫瘍は成長が遅くなっただけで、止まったわけ ではない。抗脈管形成に対して違う方法を追求している、ニューヨークの Montefiore Medical Centerのジョセフ・スパラノ博士は、実験が成功かどうか を判断するには、腫瘍が完全に成長を止める必要はない:「もし、転位乳癌 の患者が20年生存し、しかも症状がでないならば、それは治癒と同じこと である。」と言っている。 | zero in on : 〜に焦点を絞る,〜に的を絞る、 specialized : 分化した、 growth factor : 成長因子,生育因子,増殖因子、 vascular : 導管の,脈管の,血管の、 endothelial : 内皮の、 synthetic : 合成物質、 take one's place : 交代する,後がまに座る、 receptor : 受容体、 metastatic :《腫瘍などの》転移、 symptom : 症状 |
| 29 | しかし、先週希望を抱かされた多くの癌患者にとって、これは十分とは言えない だろう。彼らにとって、希望とは貴重かつ必要なものであり、与えられたりもて 遊んだりするものではない。3年前に非ホジキンリンパ腫に罹った、テキサス州 ドリッピング・スプリングスのレニー・スミスに聞くとよい。かの女には 4歳の娘がおりその成長を見守りたいし、夫と共に年齢を重ねていきたいので ある。先週、友人が新しい治療の可能性を興奮して電話してきたとき、理性的 に落ち着いて対処しようと決めていた。「私は今の一瞬一瞬を生きようとして います。その方が喜びから絶望へといった激しい感情の変化に振り回されない から」と彼女は言う。だけど、時にはその諦めが無くなる。「私は完璧じゃ ないもの。ダライ・ラマじゃないわ。」皮肉なことに、画期的な進展が 望まれるのはスミスのような患者なのだ。だが先週の見込みはずれの希望に 振り回されるのも彼女達なのである。 | commodity : 必需品,有用品、 ration : 支給する,消費を制限する、 trifle with : 〜をもてあそぶ,〜を軽くあしらう、 non-Hodgkin's lymphoma :非ホジキンリンパ腫《ホジキン病 (Hodgkin's disease) 以外の悪性リンパ腫の総称; バーキットリンパ腫 (Burkitt's lymphoma) など》、 philosophical : 淡々たる,理性的な、 emotional roller coaster : 感情[気分]の激しい変化、 Dalai Lama : ダライラマ(=Grand Lama)《チベットのラマ教の教主》、 ironically : 《副》皮肉にも、 vulnerable to : 〜に弱い、 false hope : 空頼み |
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