A Survivor's Tale

A Survivor's Tale
(12.29.P26.1997)

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今回は MAN OF THE YEAR から
  アンドリュー・グラブ。ビル・ゲイツに比べると目立ちませんが、この記事を読む限りでは 魅力的な人物です。まさに波瀾万丈。人生これぐらい変化があると、「生きている!」 という実感が感じられます。それに比べてわが人生、なんか退屈です(^^;
さて、お分かりのように、この記事は長いです。全部で65段落。どこまでいけるか分かりませんが いけるところまでいってみようと思います。疑問も多々ありますが、今回は無視します。それより も、進むことに専念しましょう。
で、結局31段落で終わりにします。ちょっと疲れました。

生存者物語


語彙は主に英辞朗から抜粋

 

大意

語彙

1 ブダペスト:1956年12月。赤軍が町にやってきて一ヶ月、ハンガリーの10月革命を 圧殺している。いつもは浮かれた学生の喧騒でにぎわう夜もマシン−ソ連の戦車 10師団−の響きにかき消されていた。ただ火炎瓶の炎だけだ雨のなかでゆらめい ている。失望から恐怖が生まれた。首相は姿を消した。 Red Army : 赤軍、 stream into : ぞろぞろ入って行く、 brutalize :に残忍な仕打ちをする、 foggy : 霧がかかった、 ecstatic : 有頂天の、 split with : 袂を分つ、 jostle : 押しのける、 division : 部,師団、 uneven : 一様でない、 damp :湿気,落胆
2 ほっそりとして目をみはるばかりに美しいその少年は、混乱が収まるのを 望んでいた。昼は学業に没頭し、夜は家で時がすぎるのを待った。だが 本を読みながらもこんなうわさを耳にする:ロシア人は学生を駆り集めて いる。子供たちは姿を消し、列車は辺境の地へと向かう。 tumult : 混乱,騒動、 schoolwork : 学業、 round up : を駆り集める
3 そんな話は聞きたくなかった。ナチの恐怖にさらされて生きてきたのだから。 SSを出し抜き、ブダペストのナチを避けてきたのだ。ある日母親が彼を 「勇気ある知人」の家に送り出した。そこで彼らは1944年の大虐殺を免れた のである。父親は東部戦線の強制収容所から帰ってきた。誇り高く饒舌な男が 腸チフスで体はしぼみ肺炎でふるえていた。学校ではからかわれた:戦前は ユダヤ人という理由で、戦後は父親が実業家という理由で。公式の書類上 では、少年はすでに「労働者の敵」だったのだ。彼はソ連を待つつもりは なかった。 outsmart : を打ちまかす、 SS : =Schutzstaffel,《独》ナチス親衛隊、 brownshirt : 突撃隊員,ナチ(Nazi)【語源】制服が褐色(brown)、 bundle :を放り出す,人を〜へ追い立てる、 sweat out : 耐え抜く、 pogrom : ユダヤ人虐殺、 labor camp :強制収容所、 garrulous : おしゃべりの,饒舌な、 shrivel : 縮む、 typhoid fever : 腸チフス、 pneumonia : 肺炎、 mock : ばかにする、 dairyman : 牛乳屋,乳製品販売業者
4 だから、彼は逃げた。親友と共に西へ、できる限りオーストリアへの国境近くまで 向かう列車に飛び乗った。(国境から)20マイルのところで、前方に検問所がある ということを聞いた。ロシア人が地方を席捲し、あらゆる人を逮捕していると いうのである。国境にたどり着くのが赤軍との競争になってしまった。二人は 頼るものもなく、勇気を振り絞ってなけなしの金で密輸業者から情報を買った。 ロシア人に知られていない脇道を教えてもらったのだ。 tip :についてそっと知らせる、 checkpoint : (通行)検問所、 Red Army : 赤軍、 army : 《n》(陸)軍アーミィ軍隊、 hunchbacked : 《a》せむしの、 smuggler : 密輸業者,密輸入者、 byway : 脇道,横道
5 何時間か後に、彼はオーストリア国境の近くでうつ伏せに倒れていた。兵士が うろつき、犬は吠え、炎が闇を照らした。と、その時ハンガリー語が聞こえた。 彼は恐怖に竦んだ:「誰だ?」 40年後の今も、それを思い出して笑いはするが 彼の目は厳しくなり、緊張をほぐさなくてはならない。密輸業者はだましたのか? 男は再び叫んだ。最後の勇気を振り絞り少年は応えた:「ここはどこ?」 「オーストリアだ」緊張が心地よく体から消えていった。アンドラス・グロフ、 後にアンドリュー・グラブとアメリカ風に名前を変えるのだが、彼は立ち上がり、 未来へと踏み出した。 facedown : うつ伏せに、 march by : 行進して行く、 paralyze : を麻痺させる、 collar : えり、 relief : 安堵、 Americanize : アメリカ風にする
6 偉大さを定義するのは難しいが、生き延びることというのはその中に入る だろう。何はともあれ、アンドリュー・グラブは生き残ってきた男だ。 その身の竦む夜以来、61歳のグラブは生きるという意志に従ってきた。 グラブが作ったインテルという会社は極めて変動の激しい分野で生き残り、 最も力のある会社に成長した。20世紀の変容する技術の一つを支配している。 インテルの奇麗な部屋、優秀な技術者、bunny-suited(?)を着た従業員 はオーストリアの丘からははるかにかけ離れているけれども、ここほど切迫感 のある企業もないだろう。グラブはそれを新鮮だがぞっとする呪文にした: 「偏執者のみが生き残る」 elude : 逃れる、 tumultuous : 騒然とした、 stranglehold :完全な支配、 transformative : 変形させる力のある、 spotless : きれいな、 brilliant : 才気あふれた、 far removed from : 〜からほど遠い、 sense of urgency : 切迫感、 boil down to : 要約する、 mantra : 呪文,マントラ
7 無論、インテルはただ生き延びてきただけではない。ゴードン・ムーアと ロバート・ノイスにより1968年に設立され、グラブの指導の下で世界有数の マイクロプロセッサの製造業者になる。IBMがパソコンを作った1981年から 圧倒的な割合で世界に広まった。今年販売された8300万台の機械のうち 90%がインテルのチップを使っている。アンティロックブレーキ、 インターネットのサーバー、携帯電話、デジカメなど。10年、20年後に こうしたチップを使った製品がどうなるかは誰にもわからない。 chemist : 化学者、 pre-eminent : 顕著な、 microprocessor : マイクロプロセッサ,超小型演算装置、 populate :住む,〜に人を居住させる、 personal computers : パソコン、 cell phone :携帯電話
8 インテルはもはやシリコンバレーの奇跡ではない。デジタル経済の方向を 示すものとなり、また、製造業者、ソフト会社、Webプログラマーからなる 一つの生態系をなすようになった。彼らはパソコンの成長に依存しているのだ。 インテルはパソコンの将来を支配している。新しいチップの出荷日を決めるのは インテルだ。コンピュータ産業の成長率を指示するのもインテルだ。経済学の 教科書にしか見られないほど市場をがっちりとつかんでいる。競争相手を 鮮やかに出しぬく優良企業、収益も大きい。(クリントンが就任したときの 1万ドルの投資は今日では9万ドルの価値となっている。) weather vane : 風見鶏、 ecosystem : 生態系、 escalate : 拡大する、 blueprint : 青写真,設計図、 dictate : 決定する、 confident : 確信している,大胆な、 aplomb : 落ち着き、 hemline :《スカート・ドレスの》 裾の線、 ironfisted : 無情[冷酷]な、 grip : 支配(力)、 incidentally : 偶然に、 rack up : 獲得する、 inauguration : 就任(式)
9 簡単なことではない。半導体事業の歴史はイーリアスの章(悲運の歴史ね) を読むごときである。Unisemは衰微し、Advanced Memory Systemsは経営の 失敗で、Mostekは日本からのRAMの攻勢につぶれていった。インテルはチップ の不振、FTCの査察、ペンティアムチップの不良を乗り越えてきた。今は、 安いチップを使った安いコンピュータがインテルを脅かす。だが、インテルが 作り上げてきた微少な世界では、インテルほど信頼できる仕事をする会社は ない。デジタル時代にインテルは欠くことのできない会社なのだ。 semiconductor :半導体、 Iliad :イーリアス《Homer 作とされる Troy 攻囲戦をうたった叙事詩》 ,長く続くもの《災害・不幸など》、 obsolescence :老朽(化),衰微、 slaughter : 徹底的に負かす、 cripple : 不具にする、 recession : 景気後退、 Federal Trade Commission : 《米》連邦通商委員会連邦取引き委員会、 probe : 徹底的な調査,査察、 nasty : 意地の悪い,険悪な、 flogging : 鞭打ち、 flaw : を損なう、 Pentium : ペンティアム,インテル社が1993年に発表したCPUの名称80386,80486 という命名をしてきたが,数字だけではパーツ番号とみなされてしまい法的に不利 な面があるため,5番目のCPUは「5」を意味するpentと接尾辞の-iumを組み合わせて Pentiumとした、 loom : 巨大な姿を現す
10 容赦ない変更と恐れを知らぬ指導力というグラブの考えはIBMから中国に至る まで知られている。彼は経済誌の一面をいつも飾っている。だが、彼は 「私は変わっていない」とぶっきらぼうに言う。彼は娘を守る父親であり、 生気あふれた教師であり、3億ドル以上の資産をもつ。毎朝1時間の運動で 鍛えられ、神経エネルギーが行き渡った体はマイクロプロセッサーの ようにきちんと配線されているようだ。 dogma : 独断的な考え、 relentless : 容赦のない,冷酷な、 Great Hall of the People :人民大会堂、 perennial : 1年中続く,絶え間ない、 point-blank : 単刀直入の、 locution : 言い方、 incidentally : 偶然に、 hone :磨く、 workout : 運動、 coil : グルグル巻く、 nervous energy :神経エネルギー、 tightly : きっちりと、 wired : 配線されている,回路設計になっている
11 仕事は皆と同じような小部屋で行う。(特典がひとつ:駐車場が見える) 3人いる秘書を切りきり舞いさせている。自分独自の「郵便コード」を 作って効率よく手紙をチェックする。彼は時間節約のため略語をどんどん 作るので、新人の秘書のためにグラブ語辞典が作られたこともある。 cubicle : 小部屋、 perk :役得,特権、 zip :疾走する、 put together : まとめる,寄せ集める、 bewilder : 驚きあきれさせる,きょとんとさせる,当惑させる、 CEO :=chief executive officer,最高経営責任者、 avalanche : なだれ、 abbreviation : 省略形,略語
12 グラブは仕事をするだけではない:スキーもバイク(自転車ね)も、オペラも聞く。時には 突然目茶苦茶なダンスを始めるときもある。また、夜遅くまで会社に残っている 経営者でもある。聴覚を若いときにほとんど失った。だが読唇術と頑張りで 難しい科学の授業もやり遂げた。その後20年かけて5回の手術で聴覚を取り戻す ことはできた。ちょっとした病気には弱いが、前立腺癌の診断には冷静に対処し、 医者の忠告を無視し選択肢を自ら調べ、今のところその療法はうまくいっている。 グラブの性格を「知性に基づいた仮借なき率直さ」と友人は言う。アンディに 言わせれば、それは:「恐怖」 break out : 急に〜しだす、 disjoint : 関節がはずれる,支離滅裂にする、 boogie : ブギを踊る,ダンスする、 groove :レコードの溝,楽しいもの、 ankle : くるぶし,足関節,足首、 shag : 粗毛,毛羽布地、 sound track : 映画音楽、 lip reading : 読唇術、 compulsive : 何かに駆りたてられたような、 whiner : 泣き言を言う人,不平を言う人、 ailment : (軽い)病気,不安定,不快、 prostate cancer : 前立腺ガン
13 アントラス・グロフ、1936年9月2日、 ブダペストに生まれる。父ジョージは、 乳製品業者、母マリアは経理事務員。父は社交的でかつ理性的、学歴はないが 必要なことは自ら学んだ。母は細身の可愛い女性で2部屋しかないアパートで 彼を育てた。幼いときからグラブは資本主義者の息子、ユダヤ人として目を つけられていた。両親の希望は、彼が頑張ってこの偏見を乗り越えること。 dairyman : 牛乳屋,乳製品販売業者、 bookkeeping : 経理,簿記、 gregarious : 社交的な、 easygoing : 気楽な,暢気な、 accounting : 経理、 spare : ほっそりした
14 4歳のときは死にかけた。ブダペストで流行ったしょう紅熱にかかったのだ。 病院で目を覚まし、こう考えたことを覚えている、「僕はもう死んでるの。 お墓から空を見上げてるんだ。」高熱の後遺症:中耳に感染したため鼓膜に 穴があいてしまった。 scarlet fever : しょうこう熱,猩紅熱、 epidemic : 伝染病、 succumb to a disease :病気で倒れる、 eardrum : 鼓膜、 perforate :穴を開ける、 colander : 水切り,濾過器、 middle ear :中耳、 infection : 感染
15 次に起きたのは第二次大戦。グラブはブダペストでの戦時中の生活を決して 話さない。世界を飛びまわるのだが、ブタペストにだけは立ち寄らないし、 戻りたいとは思わないという。当時、同じくブダペストに住んでいたユダヤ人 ジョージ・ソロスは、その時が人生で最も重大な時だというが、グラブは 何の影響も受けなかったという。だが夜遅く、スコッチを飲み、すしをつまみ ながら、ポツリポツリと語る。 swear :断言する,誓って言う、 in that respect :その点で、 late at night : 深夜,夜更けに,夜遅く,夜中に、 eel :ウナギ,言い逃れが上手な政治家
16 1941年、父親失踪。何が起こったかは誰も知らない。だが、東ヨーロッパで ユダヤ人が忽然と消えていくのは誰もが知っていた。1944年3月、ドイツ人が ブダペストを占領。「私たちを捕まえ始めた。私と母や隠れていたので大丈夫 だったのだが、ユダヤ人がね。彼らはユダヤ人を捕まえていたのだよ」と グラブは、目をしばたたかせ、スコッチを飲みながら語る。 draft :招集する,徴募する、 brigade :旅団、 occupy :占領する、 round up : 一斉に検挙する,一網打尽に捕らえる、 blink : まばたきする、 sip : を少しずつ飲む,すする
17 目に涙が溜まる。なまりのある英語で言葉を選びながら語る:「私は8歳で、 細かいところ点は覚えていないが、良くないことが起こっているのは分かっ ていた。母は私を連れて逃げ、私は名前を変えた」、アンドラス・マレセビック と。母と息子は、書類を偽造しクリスチャンの家族の知人として生活した。 「その家族は大変な危険を冒したのだよ」と彼は言う。いまだ聞いたことの ない話に、妻のエバはテーブル越しに夫を見つめる。「その人たちはどうなった の?連絡はとれなかったの?」と彼女は尋ねる。「分からない、よくは知らない 人たちだったし。」しばし沈黙が訪れる。「だが彼らは正しいことをしたん だろ?」との問いに、まさにプラグマティズムらしき返事をする:「効果が あったから正しいことをしたのだ。もし殺されていたなら、正しいことじゃ なかったのだよ」 brimful : あふれんばかりの、 deliberate : 慎重な、 lose contact with : との連絡を失う、 pragmatism : 実用主義
18 戦後、グラブにとって正しいこととは両親の夢、つまり彼が大学へ行くこと をかなえること。一番好きなのは科学ではなかった。14歳のとき、地元の 青年新聞に参加、ジャーナリズムの仕事に没頭:書き、考え、調べる。 「それが好きだったんだ」親戚が裁判なしで抑留され、自分が好ましくない 人物とされるまではね。40年後彼はこう書いている、「私は、政治に影響され やすい個人に対する評価が、仕事の出来不出来を決定する、そういった職業を 好まない。私は書く仕事を避け科学に興味を移した。 fulfill : をかなえる,実行する、 detain : 拘留する、 persona non grata : 好ましくない人物、 profession : 専門的職業、 subjective evaluation : 個人的な評価
19 特に化学に興味をもった。好奇心は極めて旺盛だったし、他の人が計算尺と 紙を使うよりも速く、小さな分子構造を頭に描いて操作できる能力があった。 「彼はがり勉ではなかった」と親友であり、一緒に国境まで逃げたJanos Lanyi は思い出す。二人は湖の真ん中までボートを漕ぎ、春の日を浴びて科学を 勉強したものだ。「彼は大変社交的だった」とも言う。「彼はどこでで も歌っていた。」 chemistry : 化学、 native : 生まれつきの、 standout : 傑出した人、 intuitive : 直観の、 mentally : 心で、 manipulate : 操作する,巧みに扱う、 slide rule :計算尺、 by no means : 決して〜ない、 nerd : (専門)ばか,ガリ勉野郎、 outgoing :社交的な
20 グラブのもう一つの興味:オペラ。カルメンの"Toreador March"に魅せられて オペラ歌手になることを夢見ていた。レッスンも受けていた。ハンガリーから 逃げる何週間前かには、級友達とグラブはドン・ジョバンニの第一幕を歌った のだ。下僕のLeporelloの役を演じたのか、ならず者のDon Giovanniの役を 演じたのかは、グラブは覚えていない。だがDonの忠告には従った(逃げたと いうことね)。 seduce :引き付ける、 toreador : 闘牛士、 opera singer : オペラ歌手、 handful of : 一握り、 recital : 独演会、 footman : 下男,従僕、 beseech : に懇願する、 blackguard : ならずもの,不良、 bellow :怒鳴る、 wretch :かわいそうな人,、 performance : 上演
21 ソ連がブタベストに来たとき、逃げる時期だとグラブは知った。私は こう言ったんだよ、「ここに座って一切れのパンを求めて外に出る、そして いなくなるかも。あるいは逃げることもできる。」今の言葉で言えば 裏か表かだ。賭けにでるのはこれが最後じゃないけど、このときグラブ は表に賭けた。 terminology : 術語,専門用語、 upside :上側,良い面
22 この若者はニューヨークに向かった。 そこでの平等主義に彼は驚嘆した。 「20歳になるまで、なにかにつけてお前は望まれてないよと言われ続け てきた」と彼は言う。「アメリカに来ても、移民なので同じ事だろうと思っ ていた。だが違っていた。」ブルックリンの一部屋だけのアパートに住み、 グラブはアイゼンハワー率いるアメリカをむさぼるように吸収した。 immigrant :移民、 cramped cell :狭苦しい小室、 devour : むさぼり食う,破滅させる、 Eisenhower :アイゼンハワー第 34 代大統領 (1953-61)
23 ニューヨークのCity Collegeに入学。授業料は無料で、移民にとっては オックスフォードのようなもの。ほとんとA'で、もう少しで首席だった。 (そのことを学部長から聞いて、彼は車を目茶苦茶に壊した。「フォークナー でCを取ったのだ」と今でもムッとしながら説明する。「英語を話して3年、 フォークナーを読むんだよ」)だが1960年に卒業するときには ニューヨークタイムズはその成功を褒め称えた。「そうした向上心には 驚かされた。ハングリー精神にはいいところもある」とグラブが1年だった ときの指導教授は言う。 enroll : 入学する、 free school : 授業料無料の学校、 tear : [猛烈な勢いで]行動する、 shy of : 〜に足りない、 summa cum laude : 《ラテン語》首席で、 total :〈車を〉完全に破壊する、 dean : 学部長,学生部長、 Faulkner : William (Cuthbert) Faulkner (1897-1962) 《米国の小説家;Nobel 文学賞 (1949)》
24 彼は恋もした。妻のエバ、彼女自身も亡命者だったのだが、彼女は最初の 出会いを思い出す。1957年の夏、ニューハンプシャーの行楽地のことで、 二人ともそこで働いていた。出会いはエバには衝撃だった:「部屋に入って いくと、男の子達がいた。握手をされたが、それはむめっとした感触だった。 そのときだった。本当にハンサムな男性が握手をしたの、で、私は、 そう、やった〜!」その時のことを思い出し、彼女は目をくりくりさせ くすくす笑う。1958年6月、彼らは結婚した。 refugee : 亡命者,難民、 resort : 行楽地,保養地、 busboy : ウェイターの助手,皿洗い、 encounter : 思いがけない出会い、 bunch of : 山ほどの、 limp : ぐにゃっとした、 good-looking : ハンサム,魅力的な、 roll :目をぎょろぎょろさせる、 giggle : クスクス笑い
25 二人はカリフォルニアに引っ越し、グラブはそこのカリフォルニア大学の 大学院に入学。そこでも優秀で、卒業時には米国の研究所を選択できるほど だった。グラブは二つに絞った:ベル研究所とフェアチャイルド。 自ら「目先がきくんだよ」というグラブはうわさに耳を傾け、将来性に手応え を感じて戻ってきた:フェアチャイルド。 have the pick of the basket :良いものを選び取る、 prestigious : 名声のある、 Bell Laboratories : ベル研究所、 Fairchild Semiconductor : フェアチャイルド、 semiconductor : 半導体、 start-up : 新興企業、 handful of : 一握り、 brilliant : 優秀な,才気あふれた、 buzz : うわさ
26 1960年代初期、コンピュータ産業は変革のさ中にあり、フェアチャイルドは その飼育場であった。初期のコンピュータは速かったが、さらに速くするには 熱の問題があった:コンピュータを速く動かせばそれだけ熱が発生するのだ。 熱は真空管から発生。真空管はオン−オフスイッチの役目をし、電荷を溜めた り放出したりするもの。(「コンピュータ」はオン−オフ信号を0と1として記録 しそれを数学に翻訳するもの。)だが、大量の熱を吸収する真空管は、初期 コンピュータの限界ともなった。 in the midst : 真っ最中に、 benign : 良性の、 breeding ground :飼育場、 thermodynamic : 熱力学の、 grad student : 大学院生、 oral :口頭試問、 vacuum tube :真空管、 electric charge :電荷、 tally :記録する
27 それを解決するのは真空管を代えること:同じ役割をするが気まぐれでは ないもの。その装置はトランジスターと呼ばれる電気的「スイッチ」で、 電子の流れを制御する電気的な門である。だが、極小な電子を所定の位置 に留めるには極めて純粋に化学的な表面が必要となる(不純物が混じっては いかん、ということかな)。1950年代から60年代にかけては、これは錬金術 のようなもので、科学者の手には負えなかった。で、世界が必要としていた ものはこうした回路に必要に基盤だったのだが、それはどういうものなの だろうか? temperamental : 気まぐれな、 wrangle :説き伏せる、 infinitesimally :微小に,無限小に、 phenomenally :著しく,すばらしく、 alchemy : 錬金術
28 それは、シリコンバレーの名の由来となるものだった。 ゴードン・ムーアは、 MOSトランジスタと呼ばれる電気回路に酸化物と珪素を挟み込んでできた 集積回路に、こうした電荷を蓄えることができると信じていた。珪素は 良伝導体でありいくらでも熱を吸収できる、つまり光速で電子を送りこん でも融けないのだ。さらに珪素は精製された砂なので、至る所にある。 arm : 部門、 mentor : 良き指導者、 integrated circuit : 集積回路、 oxide : 酸化物、 silicon : 珪素、 tricky :扱いにくい、 semiconductor : 半導体、 conductor : 伝導体,導体、 bottomless : 底抜けの、 refined : 精製された、 abundant : 豊富な
29 だがMOSは不安定だ。サンプルに電圧をかけてある結果を得たとしよう; 翌日に同じサンプルに同じ電圧をかけると結果が違うのだ。悪夢としか いいようがない。無論、これが解決できればたいしたものだ。 MOS : MOSトランジスタ、 unstable : 不安定な、 as hell : ひどく、 voltage : 電圧、 onto, be :=be on to,に通じて
30 これについて、グラブは最初何にも知らなかった。ただ印象づけたかった だけだ。緊張?とんでもない。流体力学を学び、材料化学で仕事をする予定 の人間なのだよ。得意な数学は同じだろうしね。MOSの電気的特性を研究 するように言われて、グラブは内容をよく理解しかつキラリと光るレポート を提出した。ボスは感銘を受けた。 fluid dynamics :流体力学、 comprehensive : 包括的な
31 グラブと同僚二人が、シリコンを使用可能なものにしようとした。数ヶ月後 に分かったことは、MOSの不安定性はチップを保存処理する際に使われる ナトリウムの不純物が原因ということ。ミルクにレモンを1滴入れるのと 同じで、ナトリウムは高価な半導体を台無しにする。これにより、基本問題は 解決、半導体革命への幕が開いた。グラブのチームは最高の賞を得たし、 エバは、アンディがただのハンガリーの皿洗いではないかも、と思った。 それはグラブが望んでいた勝利、能力があれば報われるということでも あった。だが、フェアチャイルドでは、誰も気にかけなかった。 usable : 使用可能な、 instability : 不安定性、 traceable : 起因して、 sodium : ナトリウム、 cure :保存処理する、 sour : 気難しくなる、 fundamental problem : 根本問題、 materials science : 材料科学、 award :賞、 crave :を渇望する,熱望する,切望する,懇願する、 meritocracy : 能力主義


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