最近大ニュースになった毒素であるビスフェノール Aがどこにでもある物質であることは疑いようがない。硬いプラスチック製の水筒、食品や飲料の入った缶の内側に、さらに不安なのは、ほとんどの親が普通に使っているプラスチック製の哺乳瓶にBPAは含まれている。しかし、それが健康にどのような影響を及ぼすかは正確には分かっていない。 |
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10月31日、米食品医薬品局科学委員会が丸一日かけて議論したテーマがこれであった。これに先立って先週、科学委員会に依頼された調査団はFDA安全レポートに関する調査を公表した。その8月に出された安全レポートで、現在のレベルのBPA被爆では、実際上健康被害は起きないという結論が出ていたのだ。調査団はFDAの結論を誤りであると判断する17ページに及ぶ極めて批判的な調査結果を出していたが、この見解を議論し、この化合物を食物と飲料の容器に使用することを禁止すべきかどうかについて、また一般からの意見を聞くために、金曜日科学委員会が召集された。委員会は現在、FDAの最初の安全評価とともにこの見解を、FDA長官アンドリュー・フォン・エッシェンバッハ博士に提出しているところだ。委員会が次回開催される2009年2月までに、FDAはこれについて回答しなくてはならない。 |
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プラスチックに対して騒動が再びもちあがったのはなぜだろうか。8月にFDAが最初の分析を終えたあと、BPAに対する健康への潜在的な危険性についての新たなデータが出てきたからだ。高濃度のBPAに被爆すると、心臓病や糖尿病のリスクが高まり、さらには癌患者への化学療法の効果が弱くなるというものだった。BPAはまた、幼児の発達や脳への影響にもつながっている。というのは、BPAは体内のエストロゲン・ホルモンに似ていることで知られており、これは胎児や幼児の発達に変化を及ぼす酢可能性があるからである。「FDAが用心のために幼児製品からBPAを確実に排除するだけの証拠が今日十分にあります」と語るのは、消費者同盟の科学および政策上級分析員のウルバシ・ランガン氏で、「科学によって解明されるまでは、消費者はこの物質を摂取すべきではありません」とさらに付け加えた。 |
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FDAの初期の評価は撤回されてはいない。だが、「幼児および成人について、食品に触れる現在の使用法でのBPAのレベルは、適切な安全範囲内である」というその評価は、当時入手可能であったデータに基づいたものだった。たとえば4月に遡ってみると、国立衛生研究所内の国家毒性プログラムは予備レポートを公表し、動物実験によるとBPAは胎児、幼児および小児に対して現在のレベルの被爆で神経と行動に影響を及ぼす可能性があるという「懸念」を表明していた。疾病対策予防センターの調査によると、アメリカ人の93%の尿からなんらかのBPAが排出されていることが明らかになり、被爆が広範囲に及んでいることを示している。それでも証拠はほとんどが動物実験によるものなので、人間に重大な健康被害をおよぼすことにはならない、とFDAは説明している。 |
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しかし先週の調査団はそれとは意見を異にし、BPAの動物実験に関してFDAの分析からは重要な研究が除外されていると言っている。また、FDAが考慮した研究の中には質に疑問があるものがあり、評価に使用した特殊調製粉乳の標本が十分には組み込まれていないことを指摘した。調査団によれば、FDAの安全レポートは「安全についての誤った安心感を生み、BPA被爆の安全範囲は実際「不適切」ということになる。サンフランシスコ、カリフォルニア大学で、生殖に関する健康と環境に関する計画の責任者であり、環境保護局の元科学者でもあるトレーシー・ウドラフは次のように語っている。「よほど説得力のある証拠がない限り、科学者からそのようなはっきりとした発言を聞くことはできません」 |
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今後どうするかはフォン・エッシェンバッハ次第である。最初からやり直し、BPAに関する最新の発見を含む別の調査を依頼するかもしれないし、調査団の報告を拒否して、現在の被爆レベルではBPAは無害であるというFDAの当初の結論に従うかもしれない。あるいはまた、カナダ政府が4月に行ったように、幼児製品に関してはこの化合物を禁止するかもしれない。更なる研究がなされてこの未解決の疑問が完全に明らかになるまでBPAについて結論を出さない可能性もある。 |
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「BPAが幼児の容器からどれほど浸出するかについては分かっているが、そのことと幼児がどれほど摂取するかということの間にはいくつもの段階があり、モデルを作って数学的に計算しなくてはならないが、まだそうしたものはない」と話すのは、FDA、NIHそしてCDCと共同研究をしている国家毒性プログラムの副部長ジョン・ブッチャーだ。たとえば、FDAの報告では、1日に5 mg/kgのBPA被爆は容認できると主張している。保健職員は、幼児の容器はBPAを7 micrograms/gから57.7 micrograms/g含んでいると割り出している。問題は、その化合物がどれほど幼児の体内に吸収されるか、どれほど体内に残り、どれだけが排出されるかである。その被爆量はFDAの基準に近いのだろうか。 |
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こうした疑問にFDAはまだ答えることができないが、対策をとるのに躊躇う必要はないと主張する専門家もいる。「鍋やフライパンのテフロンの場合はBPAよりも少ない証拠で連邦政府は自主回収に踏み切った」とウッドラフは言う。「人に害を及ぼす可能性があるという証拠がいくつかある化学物質に国民が慢性的にさらされる懸念があったからだ」 ウッドラフが言うには、特殊調製粉乳を与えられた幼児のBPA被爆量は、動物実験で有害な作用が出てくる量になると推定されるらしい。 |
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政府が新しい評価や行動に決着をつけるまでは、BPAを含まない製品、たとえばガラス、ステンレス、あるいはこの物質を含まない革新的な次世代プラスチックといった製品を使うという選択肢が両親にはある、と専門家は述べている。 |
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