地球温暖化とハリケーン

地球温暖化とハリケーン

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HEALTH & SCIENCE からIs Global Warming Worsening Hurricanes?です。


ハリケーンGustavが先週ニューオーリンズを破壊しなかったことがニュースになるということは、2005年のハリケーン・カトリーナの記憶がどれほど凄まじかったかを物語る。Gustavの影響が比較的小さかったとしても、それでも最大風速自足10マイルの大きなハリケーンで、ルイジアナに上陸すると推定200億ドルの被害をもたらすほどだった。しかもGustavが今年最後のハリケーンというわけではない。先週大西洋ではハリケーン・Hannaが勢力を増し、Ikeも負けじと発達して、米国に向かっている。こうしたことは、今月の大西洋の話だが、太平洋ではこの5月に、大型のサイクロンNargisが東南アジアの国ミャンマーでおよそ10万人の人命を奪っている。

  • pulverize:粉々に砕く
  • fallout:副産物
  • maximum sustained wind:最大風速
  • swirl:渦巻く
短期間に起きたこのようなハリケーンによって次の問題が曖昧になる。ハリケーンは強大になっているのか、もし強大になっているのであれば、その原因は何か、という問題だ。 MBIと呼ばれる実験的手法は、平均的なリスクをもつ女性にとって、マモグラムに置き換わるものではない。雑誌ネイチャーに掲載された新しい論文によると、答えはイエスだ。そして原因は地球温暖化である。フロリダ州立大学の気象学者ジェームズ・エルスナー率いる研究者たちは、1981年以降に起きた熱帯性低気圧を人工衛星からのデータで分析し、大型ハリケーンの最大風速がそれ以降顕著に増大していること、特に北アメリカとインド洋北部での増大が著しいことを発見した。地球温暖化による海洋温度の上昇が、この変化の主な原因だと考えている。「より強大なハリケーンが生じる原因となる確固とした兆候が見られる」と話すのは、ジョージア工科大学の地球大気科学学部長のジュディス・カリーである。(今週のGreencastで、カリーが温暖化とハリケーンについて話すのを聴こう)
  • beg the question:論点を巧みに避ける
  • culprit:犯人
  • meteorologist:気象学者
  • Florida State University:フロリダ州立大学
  • tropical storm:熱帯性低気圧
  • robust:強固な
  • Georgia Institute of Technology:ジョージア工科大学
  • ハリケーンは数十年周期で変化する傾向があるので、年単位でハリケーンの数が実際に増加しているかどうかを知ることは難しい。今のところ増えているようには思われない。世界中のハリケーンの数は変化していない。実のところ、温暖化はハリケーンの周期全体において減少をもたらしている可能性があると主張する科学者もいる。だが、ネイチャーの論文によると、温暖な海面温度がより強大なハリケーンを生み出す。海面が暖かくなれば、発達中のハリケーンがより暖かい空気を引きつけ、それによってさらに力を得るからだ。「ハリケーンというのは、海から大気へのエネルギー移動によって起きるものだ」とマサチューセッツ工科大学の気象学者ケリー・エマニュエルは説明する。「海面が暖かくなえば、水は蒸発しやすくなり、蒸発する割合が多くなるとハリケーンはより強大になる」
  • Massachusetts Institute of Technology:マサチューセッツ工科大学
  • 1970年から現在までにおよそ0.5℃熱帯の海面温度が上昇しており、これが強力なハリケーンの説明となるだろう。ネイチャーに掲載した研究者たちによりと、海面温度が1℃上昇するごとにクラス4または5のハリケーンの発生頻度が地球規模で31%増加する。2100年までに海面温度が2℃上昇するというコンピュータモデルを考慮すると、これは恐るべき数値である。最も強大なハリケーンによる被害が最も大きいことが特に不安だ。1つの大型ハリケーンはそれよりも小型のハリケーン数個に匹敵する被害を及ぼす。「クラス1や2のハリケーンはたいした被害は及ぼさない。本当に被害を出すのはクラス3と4で、それらが多く発生する可能性がある」とエマニュエルは話す。  
    誰もがそう考えているわけではない。過去のハリケーンの強さに関する記録は完全なものではないので、近年起きているハリケーンの強大化が、地球温暖化が始まる以前には起きたことがないかどうか、科学者にも明らかではない。また、気候というのは誰もが知っているように複雑なものなので、将来の温暖化がハリケーンの形成に影響するかどうかを正確にシミュレーションすることは難しい。地球規模だと気候モデルはうまく当てはまるが、200平方マイル以下の面積では正確に適用できることは滅多にない。ところが、ハリケーンはこれよりも小さい面積なのだ。 Carrieは水曜日の電話会見で結果を述べ、今週ワシントンD.C.で開催される臨床腫瘍学会でこのことを報告する。「海面温度の関係というだけではなく、それ以上に複雑なのです。もっとよいモデルが必要です」とカリーは答える。  
    気候モデルは改良されるだろうし、やがては温暖化によってどの程度ハリケーンが強大化するか、またそのプロセスはどうなのかを知ることができるだろう。だがそれは二義的な問題だ。温暖化が超大型ハリケーンを発生させるかどうかに関わらず、ハリケーンは発生するし、それは人々に打撃を与える。同僚のアマンダ・リプレーが最近指摘しているように、ハリケーンに対して備えがあるかどうかで被害は違ってくる。メキシコ湾岸のような脆弱な地域で人口が増加し土地開発が進むと、温暖化の影響がなくても自然災害は悪化する。温暖化の影響がなかったときでさえ、ハリケーンが引き起こした影響を考えてみればよい。1969年のハリケーン・Camilleは90億ドルの被害をだし、1992年のハリケーン・Andrewは380億ドルの被害をだした。予測不可能な温暖化の影響によって、今こうしたハリケーンの勢力が増大すると想像してみるがよい。備えをしなくてはならない。Gustavの被害がKatarinaの場合よりもはるかに少なかったのはそれが小型のハリケーンだったからだが、我々がそれに対して備えていたからでもある。それにしても、炭酸ガスの放出を抑え、気候の変化を緩やかにしなくてはならない。さもなければ予想もしないハリケーンを経験することになる可能性がある。