A Whole Lot at Steak

A Whole Lot at Steak
(10.15.P60.2001)

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今回は ASIAから  原文はここ
  またもや官僚主義。改革は果して可能でしょうか?

危機に瀕して


語彙は主に『英辞郎』Ver.468から抜粋

BY TIM LARIMER Tokyo
 

大意

語彙

HP 狂牛病が突如日本に出現、政府がもたつくあいだに消費者は脅える mad cow disease :狂牛病,牛が立ち上がれなくなり死に至る,脳がスポンジ状 になる,1990年代英国で流行 pop up : ふっと現れる fumble : しくじる,口ごもる
1 日本の農林水産大臣武部勤が肉汁のしたたるぶあついステーキを箸でとり高 く持ち上げて口に運ぶ。「こんなにおいしい牛肉を食べたことがない!」急 遽設定された記者会見に集まったテレビカメラと記者に向って彼は得意そう に話す、そして同僚の閣僚である厚生労働大臣坂口力の方を指しこう言う: 「彼は医者なんだよ、その彼がこれを食べている。わかるだろう、日本の牛 肉には全く問題がないんだ!」坂口はうやうやしく噛んで飲みこんだ。「う 〜ん、牛肉が安全だとわかったよ」と宣言した。「私の胃袋に入っていった んだから間違いなく安全だとわかるんだ」 Agriculture Minister : 農相 jab at : 〜を素早く突く juicy : 多汁な slab : 平たい厚切り grilled steak :焼いたステーキ crow : 自慢する TV camera : テレビ・カメラ press conference :記者会見 cabinet member : 閣僚 Health Minister : dutifully : 恭しく,うやうやしく chew : 噛む swallow :を飲み込む proclaim : 宣言する suck : 吸収する
2 安心したかって?とんでもない。日本人が学んだことがあるとすれば:政府 の大物が危機に際してカメラの前に立ちすべては大丈夫だというときは、い くつもの危機に立ち向かう時がやってきた、ということだ。今回の安請け合 いは狂牛病の日本上陸への懸念に対するもので、この狂牛病というのは、人 が感染した牛肉を食べると、衰弱し死に至る可能性がある病気に罹るという ものだ。しかしながら1999年9月に東海村で原子力発電所の事故があったとき、 事態を無視した当局は近隣の住民に避難勧告を出すのに丸1日かかってしまっ た。去年の7月には、雪印乳業の牛乳がバクテリアに汚染されていることを 言葉を濁して認めなかったため、最終的には14,000人以上の人々が病気になっ た。1980年代には、政府が国民に輸血用血液は安全だと保証したにも関わら ず、1,400人以上の血友病患者がHIVに汚染された血液に感染した。今年初め、 狂牛病と戦うためにヨーロッパでは何千頭もの牛を殺したのだが、日本には この病気は決して上陸しないという確固たる信念を日本は持っていた。「私 たちは大胆なしかも断固とした手段をとってきました」と農林水産省の官僚 はタイムに語った。「この病気が日本で広がる心配をする必要はないと考え ております」 big shot : 大物 assurance : 保証 debilitate : 衰弱させる fatal : 致命的な ailment : 病気 contaminate : 汚染する nuclear accident : 原発事故 dissemble : 見ないふりをする,無視する authorities : 当局 evacuate : 避難する stall : 言葉を濁す,言い逃れる dairy : 乳製品製造所 lace : 混ぜる bacteria : 細菌,バクテリア hemophiliac : 血友病患者 infect : を感染させる HIV-tainted blood : HIVに汚染された血液 blood supply : 輸血用血液 cattle : 牛 staunchly : 水も漏らさぬほどに,断固として breach : 破る
3 これほど実績がいい加減だとほんのちょっとしたニュースでもパニックは広 がる──そしてまさにこれが起きている。今のところ牛海綿状脳(BSE)と診断 されている牛はわずかに1頭だけ。だが日本人は明らかに心配している。 「今のところ政府の言うことを信用するつもりは全くありません」と、日本 消費者連盟の事務局長Hiroko Mizuharaは言う。一般庶民は消費を控えること で同じ意見だと表明している。牛肉販売は落ち込んだ──日本の牛肉卸売業 者の最大手のひとつは40%異常の落ち込みと報告している──多くの業者が日 本産の牛肉を売らないし使っていないと書いた貼り紙をしてもこうなのだ。 オーストラリアはもとよりアジアすべての国で日本の牛肉が禁止された。貧 しいカンボジアですら日本の牛肉を輸入しない。 spotty : むらのある track record : 実績,成績,業績 sliver :小さく細い一片 diagnose : 診断する bovine spongiform encephalopathy : 牛海綿状脳症,=BSE,ウシ海綿状脳症 spongiform encephalopathy : 海綿状脳症 secretary-general : 事務局長 Consumers Union of Japan :日本消費者連盟 householder : 世帯主 pocketbook : 財政 wholesaler : 卸売業者 slide : 下落する establishment : 施設 impoverish : 貧乏にする
4 政府、それに99億ドル産業の日本の牛肉と乳製品業界にとって、現在現実の 健康上の危険とは不釣合いなほどの反応が起きているがそれも自業自得とい うものだろう。この病気の多くが依然謎に包まれている。感染した牛の脳や 脊髄を含む牛肉製品を恐らくは人間が食べて病気になるのだろう。この病気 の専門家である神経疫学者の一人は、BSEに感染する確率は9,000億分の1だ と推定している。この病気が牛乳を飲んで感染するという証拠がないにも関 わらず多くの学校が、給食のメニューから牛肉だけではなく牛乳も外してい る。 have only oneself to blame for :〜は身から出た錆である out of proportion : 釣り合いを失って health risk : 健康上のリスク beef product : 牛肉製品 spinal cord : 脊髄 infected : 汚染した epidemiologist : 疫学者,伝染病学者 scratch : ラインアップから外す
5 BSEが最初に検出されたのは1980年代半ばイギリスの牛においてであった。 200,000頭近くの動物が感染し、昨年までにこの病気はヨーロッパ大陸にまで 広がっていた。人々が不安になるのは、1996年にクロイツフェルト・ヤコブ病 (CJD)という新しい変種が産まれそれによりこの病気が動物からヒトへと移行 したときである:イギリスでは80人以上の人がCJDで亡くなった。昨年後半、 国連食糧農業機関が日本を含む他の牛肉生産国に用心するよう警告を出し始 めた。1年近く前、ヨーロッパの危険分析研究に参加することに日本は同意し た。しかしながらその報告書が公表される1ヵ月足らず前に、政府はこの研究 から手を引いた。「日本は参加するためにデータを送り始めていたのです」 と東京在住のE.U.スポークスウーマンであるDominique Inoueは話す。「しか しその後政府はそれ以上参加しないことに決めました。この研究は完全に自 発的なものでしたから、委員会がどうこうできるものではありませんでした」 農水省BSE委員会議長のTakashi Onoderaは6月、この未公表の報告書を見たと いい、そこには日本は「BSEの危険性はあり得る」と書いてあったと言う。 detect : 検出する,認める cattle herd : 牛の群れ migration : 移行 new variant : 新しい変種 Creutzfeldt-Jakob disease : クロイツフェルト・ヤコブ病 on edge : 不安で United Nations Food and Agriculture Organization :国連食糧農業機関 back out : 手を引く spokeswoman : 女性のスポークスマン,女性広報官 voluntary : 自発的な
6 この予測は8月に、東京の東方千葉県Shiroi市の酪農場で5歳になるホルス タインが奇妙な行動を示し始めたとき本当となった。元気がなく方向もわか らなくなり、立っていることが難しくなったのだ。酪農主はこの牛を屠殺場 に連れていき、そこで屠殺され、肉を食べても安全かどうかの検査が行なわ れた。その肉は危険だと宣言される。屠殺場は地元の防疫官に連絡し、検査 のために脳は保存されて研究センターに送られた。8月15日に行なわれた筑 波にある国立研究センターでの最初の検査ではBSEは陰性だった。しかし別の 試料がShiroi酪農場からほど遠くないSakuraにある家畜保健医療施設に送ら れていた。そこで、獣医のAkio Ikedaは日常業務として30から40の脳のBSE検 査の仕事をしていた。Shiroiからの試料を受け取ったとき、彼はこれまでに 見たことのないものを発見する。試料とBSEに感染した脳の写真とを比較し関 連性を発見した:正常な細胞があるべき場所に小さいが明確な空白──空洞 部を発見したのだ。「目が飛び出ました」と彼はタイムに語った。それが8 月24日のこと。 Holstein : ホルシュタイン dairy farm : 酪農場 listless : 無関心な disorient : 向きを狂わせる,混乱させる slaughterhouse : 屠殺場,食肉処理場 declare unsafe : 危険だと指定する health official : 防疫官 research center : 研究センター livestock : 《名》家畜 health facility : 保健医療施設 veterinarian : 獣医 routine : 日常業務 eye-popper : 目を見張らせるもの
7 動きの鈍い研究者、粗雑な計画の危機管理、それに悪評から牛肉業界を守ろ うとの願いが相俟ってBSEの診断を遅らせることになった。この脳がBSEの症 状を示した牛のものだとはIkedaは知らされていなかった。「それはありふれ た試料でした;緊急という区別はされてはいませんでした」と言い、この研 究室がこの脳を分析し検査するのに15日要した理由を説明した。だが彼はこ の発見をただちに農水省に連絡する。明らかな危険にも関わらず手続きは長 引いた。「何をすべきかという指令が来るのは遅かったです」とIkedaは言う。 「驚きました」(省の役人は度重なる説明要求を却下した)Ikedaが宅配便 で脳試料を筑波研究所に送るまでに2週間が経った。この国立研究所は9月 10日までBSEの診断を追認しなかった。「これは官僚的形式主義によるもので、 日本でこういうことが起こるとは誰も考えていなかったために切迫感がほとん どなかったのです」と農水省BSE専門家のOnoderaは言う。 slow-footed : 足の遅い crisis management : 危機管理 diagnosis : 診断 symptom : 症状 just another :ありきたりの,ありふれた urgent :緊急の lab : 研究室 dissect : 分析する via : 〜によって courier service : 国際宅配便 government-run : 国営の bureaucratic red tape : 官僚的な形式主義 sense of urgency : 切迫感
8 一旦診断が確認されると政府は主導権を握った──だが大失態を演じただ けだった。農水省の役人は当初汚染牛の屠殺体は焼却されたと発表した。4 日後おずおずと次のことを認めた。実際はその屠殺体は肉骨紛に精製され飼 料業者に売り渡された──つまりは、感染した牛肉は結局更なる牛に餌とし て与えられる可能性が大いにあるということになる。これこそがBSEが広がっ た方法だと専門家は信じており、ヨーロッパが肉及び肉骨紛(MBM)の利用を禁 止した理由でもある。「牛の屠殺体を焼却しなかったという事実には弁解の 余地がありません」と先週農水大臣武部は認めた。「だけど狂牛病の症例が 出てからわずかに3週間しか経ってないのだから、私たちにはまだまだ新し いことなんだ」 fumble : いじくり回す,しくじる big time :非常に,大いに carcass : 屠殺体 incinerate : 焼いて灰にする sheepishly : おどおどと render :溶かして精製する bone meal :骨粉,骨灰 no excuse for : 〜の弁解の余地はない concede : 認める
9 ヨーロッパがこの病気と長く格闘してきたことを考えれば、甘くみるべきで はなかった。事実、日本の政府は1996年には輸入MBMを使用しないように酪農 家に通達していたものの違反者への罰則はなかった。(国内産の飼料は安全 だと判断されていた)先月明らかになったところによれば、6県の少なくと も100ヶ所の酪農家はこの禁止について知らなかったかあるいは無視しており、 輸入飼料を相変わらず使用していた。さらには、肥料に利用するとかニワト リや豚の餌にするといって、日本はつい昨年までヨーロッパからMBMをずっと 輸入していた。先週になって漸く日本はMBMの使用を完全に禁止し、これまで よりも厳しく施行することを約束したのである。実のところ4年前に、厚生省 のある委員会が日本はMBM使用を完全に止めるよう勧告していた。「農水省で は『心配ない』としか言わなかった」と、この病気の政府顧問をしている北海 道大学の疫学者Kiyotaro Kondoは言う。 impose : 課す violator : 違反者 deem : 判断する rancher : 農場主 fertilizer :肥料 altogether : 全く enforcement : 励行 committee : 委員,委員会 Hokkaido University : 北海道大学 epidemiologist : 疫学者
10 現在日本はお決まりの強気な発言を口にしている。この2週間にわたって460 万頭の牛を抜き打ち検査し、すべての屠殺場の残余物をテストすると厚生省 は言っている。製造業者には固形ブイヨンや医薬品、はてはパンケーキによ る化粧でCJDに感染するとは誰も思っていないのに化粧品にまで牛の素材を使 用しないよう求めている。「これで牛肉は安全だと国民は安心するでしょう」 と厚生大臣坂口は強調する。安全対策は:寿司を食べること。 trot out :披露する,を口にする tough talk : 強気の発言 spot-check : 抜き打ち検査をする,無作為抽出検査をする refrain from : 〜を控える,〜を避ける bouillon cube : 固形ブイヨン,ブイヨンの素 drugs : 医薬品 cosmetic : 化粧品 pancake makeup : パンケーキによる化粧 stick to : 〜に固執する


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