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大意
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語彙
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BY DONALD MACINTYRE Seoul
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韓国は世界最高のアーチャーを生み出す。その秘密は?まあ言ってみれば、
標的を射るのは秘密の中でも一番簡単なことなのだ
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archer : 弓の射手
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オリンピックアーチェリーで金メダルをとったKim Kyung Wookは、この競技
がどれほど厳しいものか知っている。しかしこの夏の研修会は彼女にとって
予想もしないものだった。弓とも矢とも関係がなかった。8月、コーチがこ
の国の最高の男女アーチャーたちを、韓国南西部にある軍事基地での4日間
に渡る特殊部隊訓練に参加させたのである。排水溝の開渠にそって行進した
り、背中に車のタイヤをくくりつけて走ったり、冷たい海に30分間浮かんで
いたり、奇襲部隊の格好で泥のなかを転がったりするのはKimには簡単だった。
しかし真夜中コーチが彼女を目隠しして火葬場に連れていき、焼却炉から骨
を持って来いと言われたときには自制心を失いそうになった。日に焼けたオ
リンピック選手、引き絞れば17kgという骨も折れんばかりの弓を使う筋肉の
引き締まった選手がこう言う:「お母さんって叫びました」
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demanding : 厳しい
training session : 講習会
arrow : 矢
male and female : はめ込み形
commando : 特殊部隊
training camp : 訓練所
military base : (軍用)基地
sewage : 汚水,下水
open ditch :開渠、
strap :を携行する
frigid : 寒さの厳しい
blindfold : に目隠しをする
dead of night : 丑三つ時
crematorium : 火葬場
oven : 死体焼却炉
tanned : 日に焼けた
draw weight :ドローウェイト《(1) アーチェリーでは, 引きしぼった弓にたくわ
えられた力の実測値; フィートポンドで表わす》
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韓国というのはスポーツ選手に過酷な訓練を経験させるが、アーチャーはそ
の中でももっとも厳しい訓練を受けるのかもしれない。アーチャーたちは定
期的に月明かりの中を行進させられる。過去の訓練では、へびを扱ったり、
夜間に戦闘形式の上陸作戦を練習したり、ボートをかついで山に駆け上った
りした。肉体的に過酷なだけではなくこの一風変わった訓練により、70m離れ
た標的に常に矢を射なくてはならないアーチャーは精神的な強靭を得ること
ができる。だがこんな訓練はリスクをおかすだけの価値はないといって反抗
する者もいる。2週間前北京で開催されたアーチェリー世界選手権に向けて
の8月の訓練半ば、4名のアーチャーが突然訓練を止めてしまった。これに
対して韓国アーチェリー協会は、彼らが今後1年から5年間国際競技に参加
することを禁止した。女子チームのヘッドコーチ、Jung Pil Wooはこう話し
ている:「韓国アーチェリーの将来のために、私たちは彼らを処分しました」
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put through :を経験させる
grueling training :くたくたに疲れる訓練
regimen : 方式
moonlit : 月明かりの
landing : 上陸
physically demanding : 肉体的にきつい
weird :風変わりな,変な
hone : 磨く
consistently :常に
plunk : はじく
bull's-eye : 標的
fight back : 反撃する
workout : 運動,トレーニング
bar :禁止する
international competition : 世界規模での競争
head coach : ヘッド・コーチ
reprimand : 叱責する,懲戒する
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まったくもって誇るに足る伝統だ。この奇妙な訓練のゆえにか──それにも
関わらずというべきか──韓国はアーチェリーでは世界を圧倒している。女
性陣は世界で抜きん出ており、1984年にこの国がオリンピックのアーチェリ
ーに参加して以来常に金メダル──団体でも個人でも──を獲得してきた。
男性陣も常にメダル獲得の上位にランクしている:昨年のシドニーオリンピッ
クでは金メダル4個のうち3個を獲得した。
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legacy : 遺産
bizarre : 奇妙な
dominate : 優位に立つ
consistently : 常に
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もちろんこうした成功はひとつの疑問を投げかける:火葬場に赴くといった
際立った勇気はチャンピオンを養成するのに必要なのか?Kimは、自分とチー
ムの中間たちが生きたへびを拾って噛みつく(やさしく)という1994年のと
きの訓練を思い出すと今でも身震いする。Kimがあまりに怖がるので、噛みつ
くあいだコーチがへびをつかんでなくてはならなかった。同僚の一人は最初
そのへびをゴムでできていると思ったので首に巻いたりしていた。へびにキ
スをしようとしたそのとき、へびが舌を出したのだ。Kimはこう言っている:
「彼女は完全に気が動転しました」韓国のスポーツドクターも同様に感じて、
この訓練にはゾッとしてこれはトップアスリートが耐えているストレスをさ
らに強めるだけだと言っている。Sunmoon大学のスポーツ心理学の専門家
Han Myung Wooは次のように言う:「競技までの1ヵ月間というのは身体にへ
びを巻きつけるようなときではありません」
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feat : 快挙
crematorium : 火葬場
nurture : 育てる
shiver : 震える
colleague : 仲間,同僚
rubber : ゴム
sling :吊るす
one's : ?
flick out : をサッと出す
freak out : 気違い状態に陥る,自制(心)を失う
sports doctor : スポーツ・ドクター
appall : ゾッとさせる
top athlete : トップ・アスリート
sport psychology : スポーツ心理学
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韓国のコーチ陣は根性と鉄のごとき神経を作り上げるのに役立つといって、
こうした伝統的訓練を弁護する。大昔はアーチェリーは沈黙の中で行なわれ
たものだった。現在は騒々しい観衆のいる国際大会で選手は競技する。選手
が柔になってほしくないとコーチも考えている。「猛訓練をしなくてもトッ
プになれると彼らは思っているのです」と韓国アーチェリー協会会長
Kim Ki Changはいう。出場停止処分中の選手の一人であるChung Jae Hunでさ
え、韓国は今のやり方を続けるべきだと感じている。後悔の念を抱いている
このオリンピック銀メダリストは今キャンプを止めたことを悔やんでいる:
「思わず決断してしまったのです。チームから放り出されると知っていたら
そんなことはしなかったでしょう」
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ritual : しきたり,儀式
gut : 気力,根性
steely : 鋼の
boisterous : 騒がしい
soft : 弱い,優しい
suspended : 出場停止になった
stick with : 〜にこだわる
repentant : 後悔している
regret : 後悔する
spur : 刺激
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北京選手権では女性陣はいつもどおり金メダルを獲得した。しかし出場停止
処分の選手の代わりとなり厳しいキャンプに参加していない男性陣も金メダ
ルを獲得した。とすれば、へびをつかむ訓練は過大に評価されているのでは
ないだろうか?そんなことはない、と女性チームのコーチJungは言う:「そ
れは、訓練せずに免許をとれたので運転の練習をする必要がないというよう
なものです」来年のチームへ通告:火葬場で会おう。
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championship : 選手権
as usual : いつものとおり
overrate : 過大に評価する
license : 免許証
crematorium : 火葬場
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