Deadly Delivery

Deadly Delivery
(10.22.P42.2001)

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今回は ANTHRAXから  原文はここ
  なんだかロビン・クックの小説を読んでるような事件です。最近のテロ事件は、小説で 読んだものが現実になったような奇妙な恐ろしさを含んでいます。

死の郵便


語彙は主に『英辞郎』Ver.468から抜粋

BY MICHAEL D. LEMONICK
 

大意

語彙

P42 2つの都市における細菌攻撃──そして誤報──により新たな防護策と大掛 かりな推測が始まる germ : 細菌 false : 誤った safeguard : 防護対策 whodunit : スリラー映画,推理小説,Who done it?
1 先週1週間はほぼ、アメリカの炭疽菌騒動は南フロリダ──実際はただひとつ の建物──に限定されそうに思われていた。タブロイド紙を発行しているボ カラトンのアメリカンメディア社本部の問題の場所は既に立ち入り禁止とな り、従業員とその家族はこの恐ろしい細菌の検査を受けている。週半ばには 1人死亡、2人が感染しているという報告があったが、犠牲者は彼らだけだ と思われていた。オハイオ州、ニューヨーク北部それにハワイで誤報があっ たものの、最悪の事態は終わったかにみえた。 anthrax : 炭疽 outbreak : 勃発 tabloid : タブロイド新聞 seal off : 封鎖する undergo : 受ける dread : とても恐ろしい bacterium : 細菌,バクテリア casualties : 犠牲者 upstate New York : ニューヨーク北部地方
2 そして金曜日、すべてが変わった。正午頃、ニューヨーク市NBCナイトリー ニュースのトム・ブロコーのアシスタントの一人が同様の炭疽菌に感染した という発表があった。彼女が扱った1,2週間前の郵便物に何かが入っており、 それで感染した可能性がある。ニューヨーク市とFBIは市民に冷静であるよう テレビで呼びかけたが、NBCスタジオからわずか10ブロック先にあるニューヨ ークタイムズの3階のニュース編集室が避難したという噂が流れ始めた。理 由:タイムのレポーターがその朝郵便物を開封し、「脅迫の手紙」と書いた ものを取り出した──そして白い粉が空中に散らばったのを目撃した。 NBC Nightly News : NBCナイトリーニュース on television : テレビ放送で urge : せき立てる circulate : 流れる,広まる newsroom : ニュース編集室,報道室 New York Times : ニューヨーク・タイムズ紙 NBC : National Broadcasting Company evacuate : 避難する powder : 粉末 disperse : 分散させる
3 同じような恐怖がオハイオ州のコロンバスディスパッチ、テネシー州の地方 紙で隔週発売のディクソンヘラルドを席巻した。ニューヨークのフォックス ニュースは、社主のロジャー・アイルズ宛ての手紙──ブロコー氏への手紙 の場合同様にアシスタントが開封──にも謎の白い粉が入っていたことを明 らかにした。また、ネバダ州リーノーでは、マレーシアからマイクロソフト 社に戻ってきた手紙は明らかに誰かが途中で手を加えたとみられ、最初のテ ストで炭疽菌陽性反応が出たと当局は発表した。 scare : 脅し Columbus Dispatch :『コロンバス ディスパッチ』 《Ohio 州 Columbus 市で発行 されている朝刊紙; 部数 26 万》 biweekly : 隔週の Fox News : フォックス・ニュース reveal that : 判明する,明らかになる letter addressed to : 〜宛の手紙 intercept : 途中で捕まえる tamper with : 〜を改竄する,〜に手を加える test positive : 検査で陽性と出る
4 このようにどうかすると模倣犯がどこからともなく現れてくることがあるが、 炭疽菌事件と9月11日の大惨事とを結びつける証拠はまだ見つかっていない─ ─ハイジャックに関与したと思われる男性がアメリカンメディアタブロイド 紙のグローブを前金で購読していたという事実を考慮に入れなければの話で はあるが。新たにFBIの調査が始まったNBC事件は現在のところボカラトンの 捜査とは独立して行なわれている。だが少なくともこの2つの事件は関係し ているようにみえる:タイムズへの手紙とNBCに送られた2つ手紙のうちの1 通は共にフロリダ州セントピーターズバーグの消印があった。当初陰性と結 果がでたような短期的評価は時々誤ることがあるために、タイムズの手紙は 再度検査されている。事実、3度行なったテストでははっきりした結果がでな かったが、先週土曜日の午後マイクロソフトの手紙に陽性反応が出たと発表 された。これで炭疽菌による攻撃は3度となった:マイクロソフト社、NBC、 それにアメリカンメディアである。 copycat :模倣者 come out of the woodwork :(シロアリが)家屋の木造部分からぞろぞろ出てく る,どこからともなく現われる at times : たまに,どうかすると,時々,時たま,時には,折りに触れて tragic event : いたましい事件 involvement : 関与 paid subscriber :前金購読者 probe : 捜査 relate : 関連がある St Petersburg : セントピーターズバーグ,米国フロリダ州 postmark : 消印 assay :検定 retest : 再試験 inconclusive : 結論に到達しない
5 しかし最終の確定した検査結果がどうあろうとも、こうした攻撃の多くが ──本物であろうと模倣であろうと──メディアに向けられたことは特筆す べきである。9月11日にアメリカの金融及び軍事施設に向けて攻撃をしたあ と、アルカイダのテロネットワークはアメリカのメディアを攻撃する気になっ たのかもしれない──アメリカのメディアはある意味で自由と不摂生を体現 しているからだ。アルカイダはアメリカのジャーナリストをパニックに落し 入れ、仕事場でジャーナリストを襲っている恐怖を広めることにより彼らに 代わってテロの行為をさせようというのであろうか?炭疽菌の恐怖は世界貿 易センターへの攻撃に続くものだという可能性に対し、ディック・チェイニ ー副大統領は声を大にして次のような疑問を投げかけた、「2つは関係して いるのか?わかってはいない。その種の関係を特定できるに十分な証拠はな い。だが、気を許してはいけない」 definitive test : 確定的な検査 striking : 特筆すべき, military centers : 軍事施設 center on : 〜に集中する tempt : 気にならせる manage to : 何とか〜する,どうにか(こうにか)〜する embody : 具現する excess : 不摂生 address :対応する anthrax : 《名》炭疽 follow-up : 追加の pin down : 特定する
6 しかしこれが一貫したテロ攻撃であればまったく効果がなかった。炭疽菌の 殺傷力を考えれば、1人が死亡、1人が感染したが死ぬまでには至らない、 そして菌に触れたものの感染しなかったのが2人(土曜日にはこの数は7人 に増えたとアメリカンメディアは言っている、ただし連邦防疫官は確認して いない)という攻撃は、9月11日のハイジャック犯がバイクを盗み公衆電話 ボックスに突っ込むようなものである。「現実に目を向けろ」とタブロイド 紙で働く写真家は言う。「もしこれがテロ攻撃なら、換気システムにそれを 置くだろう。そうすればたちまち400人は炭疽菌に感染する」 coordinate :組み合わせの,連係する assault : 攻撃 ineffectual : 効果のない lethal : 致命的な infection : 感染 exposure : 被曝 health official : 防疫官 commandeer : 奪いとる telephone booth : 電話ボックス get real : 現実的に考える tabloid newspaper : タブロイド判の新聞 ventilate : 換気孔を設ける,通気を行う
7 誰もがこの事件をそう軽くみているわけではない。数週間にわたる政府の警 告と報道機関による報道のおかげで生物テロの恐怖に敏感になっている国民 は最悪の事態を考えてしまう。たとえ大掛かりな攻撃がありそうにもないと 思っても、炭疽治療として特に認可されている抗生物質シトロフロキサシン (Cipro)の需要が増え、南フロリダやニューヨークの医者は困っている。ア メリカ中の警察が怪しい物質に関する通報を処理している;金曜日にはニュ ーヨーク市の1つの分署で3回の警告それぞれに対応し、マンハッタン南部 のある建物を2時間にわたり隔離した。ニューヨーク市の救急治療室も同じ く人が押し寄せている。「誰もがひどく心配しています」と市のベスイスラ エル医療センターのマーク・ストーラー博士は報告している。 casually : 平気で sensitize : 抗原に敏感になる media coverage : 報道機関による報道 unlikely : ありそうもない besiege with : 〜で攻めたてる,〜で困らせる antibiotic : 抗生物質,抗生剤 approved : 認可された field :うまくさばく substance : 物質,薬物 precinct : 分署 quarantine : 隔離させる emergency room : 緊急治療室 besiege : 殺到する
8 フロリダの犠牲者2人はアメリカンメディアの郵便室で働いていたので、こ の会社の郵便物を仕分けし配送していた郵便労働者もまた炭疽菌検査を受け ており、郵政従業員はボカラトン地区の郵便局員すべてに一斉検査をするよ う要求している。炭疽菌の脅威を受けた他の都市6ヵ所の郵便職員もまた検 査を受け、雑誌販売店──タイム紙も含む──は急遽警備を強化する間、一 時的に郵便室を閉鎖した。郵政局はどうすべきかという新ガイドラインを発 表した(例えば:消印と差出人住所が違う手紙はどんなものでも開封しない; 見知らぬ人からの予期せぬ手紙は開封しない、特に住所が手書きならなおさ らのこと)当面、FBIと疾病管理センターは事件の広がりをつかもうとし、攻 撃に使用された菌の出所──またはいくつかの出所──を特定するために綿 密な調査を始めている。 mailroom : 郵便室 postal worker : 郵便労働者 sort :仕分ける blanket : 無差別な post office : 郵便局 anthrax : 炭疽 outlet :小売店 shut down : 閉鎖する scramble to : 大急ぎで〜する beef up security : 安全対策を増強する postal : 《形》郵便(局)の,郵送の new guidelines : 新指導要綱 Centers for Disease Control :疾病管理センター《疾病撲滅・疫学研究・教育を 目的とする連邦政府の施設; 略 CDC; 本部は Georgia 州 Atlanta; 旧称 Communicable Disease Center (1946-70)》 get a handle on :〜を管理する,〜の手掛かりをつかむ、 scope of : 〜の範囲 painstaking : 骨の折れる pin down : 突き止める,特定する bug : ばい菌
9 最初の感染が見つかったとき、当局はこれが自然に起こる菌ではないかと考 えた──まれではあるが時々生じるケースである。サン紙の写真部長である ロバート・スチーブンスは熱心なアウトドアー派であり、炭疽菌というのは 野生動物に固有のものである。事実、スチーブンスは炭疽菌を吸入して感染 している──極めて珍しい感染経路で、過去25年間そういった例はなかった (それに比べると、ペストは毎年アメリカで数例発症している)しかし10月 5日、スチーブンスがこの病気にかかったとき、アメリカンメディアの職員 と話しをした防疫官はまだ、自然に存在する感染源から彼は感染したのであ り、同僚たちは恐れることはなにもないという見解に固執していた。 infection : 感染 authorities : 当局 naturally occurring : 自然に分泌される rare case : まれなケース pop up : ふっと現れる photo editor : 写真部長 avid : 熱心な outdoorsman : 戸外生活好きの人 endemic : 固有の contract :病気にかかる inhale :吸入する transmission : 伝染 plague : ペスト by contrast : 比較すれば succumb to : 〜に屈する health official : 防疫官 staff member : 職員 stick with : 〜にこだわる
10 職員の多くが熟練したジャーナリストでもある彼らは納得しなかった。どれ ほど珍しく致死率が高い炭疽菌であるかを考えれば──しかもスチーブンス は9月11日のハイジャック犯が飛行技術の仕上げをしたランタナの道路の先 に住んでいたのである──万が一の場合を考慮して、痕跡をチェックするた めに建物を1日か2日閉鎖すべきではないのだろうか。「予感がしたんだ」 とスチーブンスの同僚の一人は振りかえる。「建物がニューヨークかワシン トンにあったら彼らはもっと注意を払ったのだろうとね」 hijacker : 乗っ取り犯人 shutter : を閉める check for : 〜をチェックする trace : 手掛かり just in case : 万が一に備えて
11 防疫官の安心といったものは長くは続かない。数日のうちに、スチーブンス のコンピュータのキーボードとアメリカンメディアの郵便室の従業員2人の 鼻孔に炭疽菌が存在することが検査により明らかになった。いずれも抗生物 資を投与されて症状は出ていない。しかしエバーグレイドを歩いていてスチ ーブンスが炭疽菌に感染したのではないことははっきりした。関連する炭疽 菌の量とそれが吸入されたという事実により、誰かが意図的にこの菌を「武 器として」使用したと当局は確信した──つまり、相当量の炭疽菌を作るた めに胞子を培養してからそれを一緒にして粉末にしたのである。 complacency : 安心,自己満足,無頓着 spore : 胞子,胚種 nostril : 鼻孔 dose : 投薬する antibiotic : 抗生物質,抗生剤 jaunt : 遠足をする Everglades : フロリダのエバーグレイド国立公園 inhale : 吸入する deliberately : 故意に culture :を培養する spore : 胞子,胚種
12 胞子がどのようにしてスチーブンスの肺に入ったかは未だに謎である。一つ の説は、アメリカンメディアの出版社のひとつに、その会社付で女優のジェ ニファー・ロペスに奇妙な「ラブレター」が送られてきたというもの。その 手紙が開封され回覧されたときスチーブンスがその場に居たことをタブロイ ド紙の職員が覚えていた。その中に粉末の物質(「媚薬のようなもの」じゃ ないかとそのとき誰かが冗談を言った)と、ダビデの星のように見えるアク セサリーが入っていた。その手紙は処分されたらしい。 spore : 胞子 lung : 肺 eccentric : 奇妙な in care of : 〜気付で staff member : 職員 powdery : 粉末状の substance : 物質 aphrodisiac : 催淫薬,媚薬 charm :お守り,護符 Star of David : ダビデの星,ユダヤ教の象徴である星型 discard : 捨てる
13 誰に責任があるかに関しては、FBIとCDCは細菌自体が手がかりを提供してく れるだろうと考えている。すべての炭疽菌は遺伝子紋を持っている;どれだ けの数の炭疽菌株が存在しているかは誰も知らないが、科学者によってこれ までに世界中の動物の発症例から1,200種以上が集められている。そのうち広 く研究されているのはわずかに3分の1にすぎない。アメリカンメディアの 菌は1950年代初期にハイチ大学とアイオワ州立大学という非常に離れた場所 で特定された菌に似ているが、どちらにも完全に一致するというわけではな い。そのために、この菌が海外から来たのではないかという懸念が生じる─ ─おそらくはイラクからか、あるいは旧ソ連のどこかのはぐれ科学者からか。 as for : に関しては CDC :Centers for Disease Control(疾病管理センター) clue : 手掛かり strain :菌株 Bacillus anthracis :炭疽菌 genetic fingerprint :遺伝子紋 outbreak : 発生 extensively : 大々的に isolated : 分離した rogue :ごろつき,悪党
14 もしも何らかのテロとのつながりがあれば、NBCの事件はそれを確定するのに 役立つだろう。9月半ば、ブロコー氏のアシスタント、エリン・オコーナー(38) は注目に値する手紙に遭遇した。最初の手紙は脅迫状と砂のような物質が入っ ていた;それを開封した女性は「砂」を捨て──なんの疑念も抱かなかった ──オコーナーに手紙を渡した。手紙は彼女が保管している。第二の手紙は セントピーターズバーグから投函されたもので白い粉末が入っていた;NBC はこの手紙をFBIに報告した。 NBC : National Broadcasting Company nail down :確定する in contact with : 〜と接触して noteworthy : 注目に値する threatening letter : 脅迫状
15 しかしFBIはオコーナーが発疹と熱の症状がでるまでその手紙の検査はしなかっ た。最初の発疹の生検は陰性。だが数日後胸に黒い病斑が現れると、オコー ナーは感染症の専門医に診察を受け、その専門医が生検の試料をCDCに送った。 病斑部の炭疽菌検査は陽性だった。それならばと、FBIはこの白い粉末を真剣 に取り扱った──しかし検査は陰性であった。そのときオコーナーの同僚が 第一の手紙のことを思いだし、FBIが検査するとそこに炭疽菌が見つかった。 無地の白い封筒に差出人住所が書かれていない匿名の手紙は、9月18日トレ ントンの消印があった。 rash : 発疹 biopsy : 生検,生体(組織)検査(法) lesion : 病気による組織の変形,病変,病斑 infectious disease :伝染病,感染症 test positive : 検査で陽性と出る anthrax : 炭疽 co-worker : 同僚 anonymous letter : 匿名の手紙
16 オコーナーにとって運の良いことには、この病気は肺よりも皮膚の方がはる かに危険が少ないことだ;彼女が感染源になったことは決してなく完全に回 復する見込みだ。それでもNBCと市当局それにFIBは危険を冒すつもりはない。 ナイトリーニューズの事務所はロックフェラープラザ30番地にあるが、そこ のネットワーク本部のある2つの階の一部が避難させられた。そこで働いて いる人すべてが検査を受けた。トレントンの手紙を開封した女性も同様。ブ ローコーは隣のビルのスタジオから金曜日の夜のToday showを放映した。 contagious : 伝染性の NBC : National Broadcasting Company authorities : 《名》当局 take no chances : 危険を冒そうとはしない plaza : 広場 evacuate : 避難する adjacent : 隣接した
17 NBCの炭疽菌検査の結果が明らかになった丁度そのとき、偶然にもニューヨー クタイムズ紙の恐怖が始まった。レポーターのジュディス・ミラーは中東が 専門で、生物兵器テロについて書いたベストセラーブックの共著者でもある のだが、ウェストストリート43番街にあるタイムズ紙3階の報道室で仕事を しているとき、社内の郵便配送による手紙を受け取った。 New York Times : ニューヨーク・タイムズ紙 coincidentally : 偶然の一致で NBC : National Broadcasting Company come to light :明るみに出る,公になる best-selling book : ベストセラー本 newsroom : 報道室 West Street : ウェスト・ストリート mail system : メールシステム
18 ミラーが手紙を開封すると、白いタルカムパウダーのような粉末が顔や手、 それにセーターに降りかかった。粉末の多くが空中にも飛び散ったので、 この事件が報告するとすぐに彼女とその近くで働いている人たちはどこか 他に移動して働くように言われた。その後30分ほどすると、報道室は閉鎖 される;レポーターたちはロビーに避難し、防護服を着た作業員が階段を 昇っていく。土曜日になって始めて職員はその粉末が九分九厘炭疽菌では ないことを知った。 talcum powder :タルカムパウダー,滑石粉,香料入りパウダー seal : 封印する almost certainly : 九分九厘
19 今週の攻撃と誤報が炭疽菌の手紙の件でのクライマックスだとすれば、アメ リカ人は自分たちが幸運だと考えることができる。細菌というのはこれまで ずっと、生物戦争を遂行しようと考えるものなら誰でもが選択する菌だった。 アメリカとソ連はともに冷戦時代炭疽を兵器として完成させた。今日では17 カ国ほどの国が生物戦争プログラムを擁しており、その多くが炭疽菌を含んで いる。 false alarm : 間違った警報 bacterium : 《名》バクテリウム属,細菌,バクテリア bug : ばい菌 wage :(戦争などを)行う germ warfare : 細菌戦,生物戦争
20 しかしながら先週までは、炭疽菌を兵器としてうまく使ったものはいない。 そうした攻撃のなかでもっともうまくいったと科学者が考える攻撃は、1979 年スベルドロフスクで起きたソ連の事故によるものである。ガルベストンの テキサス大学医療部の病理部長であったデビッド・ウォーカーは、1992年の ロシア訪問団の一員であったのだが、その直後にボリス・エリツィンはやっ と生物兵器工場から炭疽菌が紛失したことを認めている。感染者77人、死亡 64人という空前の事実に直面し、ウォーカーたちは炭疽菌の生態と医者はど のようにその発症に対処すべきかについて真剣に考え始めた。炭疽菌が吸入 した胞子から出てくると、それは成長増加して強力な毒素を分泌し、細胞を 破壊しながら血流に入り込むことがわかっている。血流に入り込むと、毒素 は身体中に広がり内臓を攻撃する。その間、リンパ節は侵入物と戦うべく集 まってきた免疫系細胞で詰まってしまい、内臓に負担をかけてその機能を阻 害し始める。 spore : 胞子 Sverdlovsk : 《地名》スベルドロフスク pathology : 病理学 acknowledge : 認める bioweapon : 細菌兵器 unprecedented : 前例のない infection : 感染 think hard about : 〜についてよく考える biology : 生態学 outbreak : 発生 Bacillus anthracis :炭疽菌 emerge from : 〜から姿を現す inhale : 吸い込む spore : 胞子 secrete : を分泌する toxin : 毒素 chew : 噛む tissue : (細胞の)組織 bloodstream : 血流,大動脈 internal organ : 臓器,内臓 lymph node :リンパ節 clog :詰まらせる summon : 招集する interfere with : 〜に干渉する
21 つまり、医者は内臓への圧力を軽減するためにその周辺からリンパを取り除 く良い方法を見つけなくてはならないとウォーカーは言う。さらに、たとえ 抗生物質がこの細菌を殺しても、細菌が産み出した毒素によって患者が死亡 する可能性があるので、抗毒素血清を開発する必要がある。ミシガン州ラン シングにあるBioPortという名の民間企業が米政府の委託により独占的に製造 している炭疽菌ワクチンもある。しかし1999年、BioPortが品質管理基準を改 善するまでワクチンの出荷を中止するようFDAは求めた。BioPortは今年末に は出荷を再開したいとしているが、その場合でも、ワクチンの副作用はあま りにもきついので、湾岸戦争時の兵士の中にはワクチン注射を受けるなら軍 法会議も辞さないというものもいたぐらいだ。 drain :流出する lymph : リンパ,リンパ液 relieve : 軽減する antitoxin : 抗毒素血清,抗毒薬 antibiotic : 抗生物質,抗生剤 exclusively : 独占的に FDA : アメリカ食品医薬局 stop shipment : 積み出しを中止する quality-control measure : 品質管理基準 side effect : 副作用 Gulf War : 湾岸戦争,(1991年)クェートを侵略したイラクに対し米欧軍が攻撃, イラクは大敗,これにより米軍が冷戦後の世界唯一のスーパーパワーである事 を世界に知らしめた court-martial : 軍法会議にかける
22 しかしこのような治療と予防が完璧なものとなるまでは、抗生物質が唯一信 頼できる治療法である──おまけに、それの効き目は菌に触れてすぐに与え られたときに限られる。このため、大量の炭疽胞子を培養し、それを兵器化 し、さらに大量の人々にばらまくといった様々な困難があるので大掛かりな 攻撃はできないだろうと当局は期待するしかない。 cure : 治療(法) preventive : 予防法 antibiotic : 抗生物質,抗生剤 large-scale : 大規模の
23 その点に関しては、日本のオーム真理教団の経験が役に立つ。1995年に東京 の地下鉄に悪名高い神経ガス攻撃を遂行したこの団体は、炭疽菌を兵器にし ようとしていた。オームには多額の現金があり、科学者を仲間に誘い込み旧 ソ連における生物兵器の専門家に育て上げた。だが結局は、炭疽菌を使った 攻撃を成功させることはなかった。 in that regard : その点において cult : 宗派 instructive : 教訓的な infamous : 悪名の高い recruit : 募集する cultivate : 養う expert in : 〜における専門家 pull off : 成し遂げる successful assault : 成功した襲撃
24 アルカイダも似たような問題を抱えているのかもしれないとテロの専門家は みる;サダム・フセインのような世界からののけ者から菌を受け取っても、 それをばらまく手段を見つけなくてはならない。ハイジャック犯モハムド・ アタが9月11日の攻撃の前に農薬散布用の飛行機について尋ねたことを関係 者は知っている。またフロリダ州デルレイビーチのドラッグストア店主は、 8月の終わり頃アタに似た男が、自分の異常に赤くなった手が焼けるような 感じなので薬が欲しいと言って現れたと言う。しかしこれはいずれもはっき りしたものではない。 supplies : 供給品 pariah : 社会ののけ者 crop duster : 農薬散布用の飛行機 show up at : 〜に顔を出す burning sensation : 灼熱感,焼けるような感じ conclusive : 決定的な,結論的な
25 先週の事件がテロリストが通常狙っている目的を達成した──広範囲に渡る 恐怖と不安を撒き散らすこと──その一方で、どのような政府広報も成し遂 げることができなかった方法で国民の炭疽菌への関心を高めることにもなっ た。1ヶ月ほど前よりもハイジャックがはるかに難しくなったように、今で は粉末入りの手紙でアメリカ人を驚かせることは非常に難しくなるだろう。 もしこれが本当にビンラディンがらみのもうひとつの攻撃であるなら、アメ リカは思った以上に安全なのかもしれない。 sow : (〜の種を)蒔く consciousness : 自覚 public service announcement :公共サービス情報,政府広報 surprise with : 〜で驚かす


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