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大意
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語彙
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BY TAMALA M. EDWARDS/SAN FRANCISCO
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長年無視されてきたものの、希望する医者に中絶が再び教えられている
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aspiring : 向上心に燃えている
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サンフランシスコ郊外にあるスタンフォード医学校は、自由主義とは言わな
いまでも進歩的な制度の学校だと思われているだろう。しかし30歳になるサ
ラ・モーガンが5年前入学したとき、中絶に関する教習は何もなかった。中絶
というのはもっとも頻繁に行われる手術であるにも関わらず、一般的処置の
学習である疫学にもなかった;薬理学にもなかった。薬理学では今日RU486と
して広く知られているミフェプリストンが抗がん剤として記載されているが
中絶との関連では記載されていない;さらに病院での実習にも予定されては
いなかった。「中絶の倫理に関して授業が1時間ありました。それだけです」
とモーガンは振りかえる。
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Medical School : 医学大学院
progressive : 進歩主義の
liberal : 自由主義の,進歩的な
epidemiology : 疫学,伝染病学
pharmacology : 薬理学,薬学
mifepristone : ミフェプリストン,妊娠早期に用いられる経口妊娠中絶剤,別名RU486
anticancer : 制癌の
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今スタンフォードを訪れるとこれとは全く反対であることがわかる。ついこ
の前の午後、学生と教員が、「中絶の政治学」、「中絶に対する障壁」さら
には「中絶薬となる薬草」といった出し物を特集している、性と生殖に関す
る健康祭に出向いた。祭典は9週間に及ぶ性と生殖に関する健康の授業の一
環で、そこでは十分に中絶が扱われている。また、スタンフォードの学生は、
家族計画病院での実習では産婦人科医を選択できる。中絶手術を見学できる
のである。
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faculty : 教員,教授陣
feature : 特集する
reproductive health :性と生殖に関する健康、
fair :定期市,博覧会
herbal :ハーブの,(薬)草の
abortifacient : 人工妊娠中絶薬,堕胎薬
amply : 十分に
opt to : 〜することを選ぶ
ob-gyn : 産婦人科医
Planned Parenthood Federation of America :《組織名》米国家族計画連盟
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スタンフォード大学での変化、さらには全国にまたがる医学校の変化は、中
絶を受講する医学生(MSFC)と呼ばれるグループに所属するモーガンらの主張
によるものである。勉強で忙しすぎる医学生が改革者となる可能性は少ない
だろう。しかし、米国とカナダで、活動中の支部が110、会員が7,000人のこ
の組織はかなりの進歩を示した。1993年に創設以来、50校、つまり全医学校
の3分の1が、必須課程とか選択授業あるいは講義、または家族計画実習とい
う形で中絶の授業を導入したり復活したりしてきた。「大幅な変更がなされ
てきました」と、生殖問題に関する医学校のカリキュラムコンサルタントで
あるユタ・ランディは話す。
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med school : 医学校,医学部
advocacy : 主張
medical : 医学生
chapter :支部
headway : 進歩,前進
curriculum : 教科課程
mandatory : 必須の
coursework : コース学習
elective : 選択科目の
reproduction : 生殖
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中絶の教習というのは、MSFCが流れを逆転させ始めるまでは忘却の彼方へと
消えつつあった。1973年のローとウェイドの画期的な判決により中絶が合法
となり、いくつかの医学校は教育課程に中絶を組み込むことにはなったけれ
ど、その判決のおかげで、手術をする医者を非難しようという活動的な中絶
反対運動を煽り立てることとなった。(先週下院は、女性に暴行を働く際に
胎児に危害を加えるのは連邦犯罪となる、という法案を通した。この法案を、
中絶に関して新たな制限を設けるための第1歩だとみる向きもある)論争を
避けるため、あるいは保守的な議会や寄贈者の要請もあり、若い医者の訓練
所の役割を果している多くの病院が中絶手術を止めてしまった。その代わり
に、中絶手術はほとんどが専門の病院が行うようになり、費用効果も高いこ
とがわかった。
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slipping : 逃げ
oblivion : 忘却
landmark : 画期的な出来事
Roe v. Wade :ローとウェイド裁判,《米》大変な論議の後,妊娠中絶を認めた(1973年)、
ruling : 判決,裁定
fuel : 〜を煽る,〜を刺激する
antiabortion movement : 中絶反対運動
stigmatize : 非難する
bill : 法案
federal crime : 連邦犯罪
fetus : (妊娠3カ月以後の)胎児
at the behest of :〜の強い要請により
cost effect :費用効果
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その結果、1995年には正規の教育課程で中絶の訓練を受けているのは産婦人
科医の研修医のわずか12%しかいない。中絶手術のできる医者の数は確実に減
少している。今ではわずかに2,000人で、ほとんどが50代から60代である。
中絶賛成派は、自分たちの考えに対する最大の脅威というのは最高裁判所で
も宗教右派でもなく、こうした医者が退役したり死亡したあと代わりとなる
人間がいなくなるだろうということを心配し始めている。
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ob-gyn : 産婦人科医
resident : 研修医
advocate : 支持者
religious right : 宗教右派
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ジョディ・スタイナーは、サンフランシスコのカリフォルニア大学の医学生
と自分が中絶反対派から脅迫ともとれるパンフレットを郵送されてきたあと
に、MSFCを設立した。数週間後、フロリダで中絶手術をしているディビッド・
ガンが自分の病院の外で狙撃された。「警鐘でした」と彼女は話す。その夏
の医学会で、スタイナーは新しいグループのお披露目をしたところ、学生で
一杯になった。
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threatening : 脅迫的な
booklet :パンフレット,小冊子、
anti-abortion : (人工)中絶反対の
wake-up call : 警鐘
medical convention : 医学会
swarm : 群れ集まる
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時期は熟してきたのだが、そのひとつには医学校に女性が増えてきたことが
ある。1970年には医学生のわずか9%が女性だった;現在その数字は45%である。
昔から若い白人男性というのは医学校では普通の生徒というだけではなく、
模範的な患者でもあった。女子学生の数が増えると、彼女たちは女性の健康
についてもっと関心を寄せるように要求しだした。
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ripe : 熟した
med school : 医学校,医学部
feminize : 女性化する
traditionally : 伝統的に
normative : 規範に従う,規範的な
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MSFCは穏やかだが絶え間ない働きかけによって前進してきた。例えば、教授
に頼み込んで講義に中絶を加えてもらうとか、学生がその問題について討論
できるように逃げ腰の学部長を説得したりした。ハーバードでは、MSFCの学
生が中絶の講義の手はずを整え、その後それを必須教科とするように理事を
説得した。ブラウン大学では学生たちが教授に、講義内容にRU486とかその他
の科学的進展を加えて最新のものとするよう要請した。テキサスサウスウエ
スタン大学の理事たちはそもそも支部を認めるのですらしぶしぶだったのだが
が、そこのグループは家族計画病院での研修を4年生の選択科目に取り入れる
ことを要求し勝ち取った。
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headway : 進歩,前進
persistent : 粘り強い
lobby : 議員に働きかける
cajole : おだてて〜させる
skittish : 内気な,用心深い
dean : 学部長
debate on : 〜について論議する
set up : 手筈を整える
mandatory : 必須の
update : 最新のものにする
wary : 用心深い,慎重な
push for : 〜を強く要求する
elective : 選択科目
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しかしいくつかの大学、とくに南部や中西部の大学の学生はあまり成功しな
かった。支部の中には、性と生殖に関する健康のための学生連合といった遠
まわしな名前をつけて、中絶への関心を軽視せざるを得なかったところもあ
る。学生課主任が支部の設立に許可を与えないところもある、とMSFCは話す。
ジェイン・ヴァン・ディスは去年サウスダコタ大学でMSFC支部を設立した。
「学生も教授陣も、将来を台無しにするかもしれないよ、と私に警告した」
ヴァン・ディスの話では、敵意を抱くクラスメイトはグループのメンバーを
「子殺し」と呼び、支部には爆弾を仕掛けるという匿名のEメールがきた。
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campus :構内
Midwest : 米国中西部《アパラチア山脈の西,Rockey 山脈の東,Ohio 州,
Missouri 州, Kansas 州以北の米国の中央北部地域》
euphemistic : 婉曲な,遠回しな
reproductive health :性と生殖に関する健康、
downplay : を見くびる,重要視しない
give permission : 許可する
in jeopardy : 危険にさらされて
hostile : 敵意に満ちた
bomb threat : 爆弾の脅威
anonymous : 匿名の
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MSFCの活動家の中には自分の中絶の経験から運動を始めたものもいる。しか
し、多くの人が政治的というより教育的な理由で参加しており、その手術に
は吐き気を感じている。コロラド大学のケリー・ファグナンは産婦人科の選
択科目では、体外受精と妊娠中絶の臨床実習との両者に時間を割いている。
8週間になるお腹の胎児に夢中になる女性がいる一方でその胎児を取り除こう
と必死になる女性をみるとき、中絶という行為に彼女は困惑を感じる。しか
しまた、女性の43%が45歳になるまでに一度は中絶を経験するだろうという報
告をもとに、中絶というのは自分が知る必要のある処置だと他の学生と議論
しているときには彼女も同意見となる。
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motivate : 動機付けをする
queasy : 吐き気がする
medical student : 医学生
ob-gyn : 産婦人科医
elective : 選択科目
in-vitro : 試験管内の
abortion clinic : 妊娠中絶医院
in love with : に心を奪われて
fetus : (妊娠3カ月以後の)胎児
desperate to : 〜しようと必死の
discomfit : まごつかせる,敗走させる
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また多くの医学生が、産婦人科医を自分の専門とする前に自分の限界──妊
娠3ヶ月の胎児を中絶する度胸があるか?妊娠6ヶ月ではどうか?──を知る
機会を持てるのは当然だと考える。ファグナンは、自分が処置できるのは妊
娠3ヶ月までの中絶だとわかった。「誰もが自分で決断する必要があります」
とテキサスサウスウェスタン大学の学生、エリザベス・ドッジ。「これまで
は、情報が全く与えられていなかったので、選択そのものが奪われていたの
です」
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have the nerve : 度胸がある
terminate : 終わらせる
specialize in : 〜を専門にする
on one's own : 自力で
effectively :事実上
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MSFCのメンバーの第一陣が研修を終え医者として出発する今、MSFCにとって
もっとも重要な試練が始まる。彼らは実際中絶手術を行うのだろうか。手術
を行うとしたら、中絶反対者にかっこうの標的になる専門病院にとどまるこ
とになるのだろうか。それとも、医療行為の中のささやかな手段として大き
な病院とか個人病院で中絶処置をするよう働きかけをしていくのだろうか。
少なくとも今、その処置の教育を受けた医学生は選択の機会を与えられてい
る。
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specialty : 専門
easy target : だまされやすい人,いいカモ
lobby : 議員に働きかける
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