Mummy Not So Dearest

Mummy Not So Dearest
(4.23.P27.2001)

TIMEのホームページへ     NHKニュース戻る


今回は ASIAから  原文はここ
  驚くほど念のいった詐欺ですね

ミイラ、それほど可愛くもなし


語彙は主に『英辞郎』Ver.400から抜粋

BY HANNAH BLOCH/KARACHI
 

大意

語彙

P27 推定2,600年前のものとみられるパキスタンで発見されたミイラが、21世紀に おける偽物と判明 mummy : ミイラ sham : 偽物
1 去年の10月、パキスタン南西部の部族長が保有する、金で覆われ、少なくみ ても2,600年前のものと思われるミイラをカラチ警察が発見したときは、大 ヒット間違いなしの発見だと思われた。パキスタンではこれまでミイラが発 掘されたことはなかった。そのミイラは何千年も昔、古代の墓所から盗まれ 古代メソポタミアかペルシャ辺りで飾り立てられたエジプトの王女なのだろ うか。これら装飾品は古代ペルシャの王族の遺物なのか。 bedeck :を飾りたてる tribal chief : 族長 blockbuster :大ヒット unearth : 発掘する loot : 略奪する tomb : 墓 adorn : 飾る ornament : 装飾
2 この発見は驚くべきもので本当とは思えなかった。事実、本当ではなかった。 5ヶ月間に渡って、化学分析、微生物診断、X線、放射性炭素年代測定法、CT スキャン200枚などの分析の結果、先月パキスタンの専門家はこのミイラが 偽物だという結論を出した。「ミイラの死体は100%現代のものです」と考古 学化学者ムハメド・トシフーアルーハサン。当初世界でももっとも興味をそ そる考古学的発見のひとつだったものが、パキスタンにおけるこれまでで一 番不思議な殺人事件の一つとなった。 chemical :化学の microbial : 微生物の diagnosis : 診断,分析 X-ray : X線写真 radiocarbon dating : 放射性炭素年代測定法 fake : 偽物 mummified body : ミイラ死体 archaeological : 考古学の intrigue : 興味をそそる
3 10月、ミイラが身元未確認の大使を含む「大物外国人」に売りに出されてい るという報告をカラチ警察は受けた。アマチュアの手による50分間のビデオ には、ミイラの金冠や胸飾りのクローズアップが映っていて、日付は1990年 とある。提示価格:1,000万ドル。50年以上昔の骨董品の所有はパキスタンで は違法である。偽物は当然違法;カラチ警察副総監モハマド・ファロク・ア ワンはビデオを配布した人物を逮捕し、その男の話から警察はパルチスタン 州の険しい州都クウェッタに向かった。そこでアワンたちは、ラクダのミル クが好きで自分の私有地で2頭のラクダを飼っている有力な族長ワリ・ムハ マド・リーキィの家を手入れした。リーキィは警察を親類の家に案内した。 カギのかかった部屋のカーペットの下に隠されたミイラを発見。地震のとき に地面からポンと出てきたと話す男から購入したとリーキィは言っている。 offer for sale : 売りに出す unidentified : 身元不詳の ambassador : 大使 date stamp : 日付スタンプ featured : 特集の close-up of : 〜のクローズアップ gold crown : 金冠 breastplate : 胸飾り asking price : 提示価格 antiquities : 骨董品 crime : 犯罪 forgery : 偽造,偽造物 superintendent : 最高責任者 distributor : 分配者 rugged : 岩だらけの provincial capital : 州都 raid : 襲撃する estate : 私有地 locked : cough out : 咳をして吐き出す
4 警官がその300kgの重さの石棺を外に引きずり出し、トヨタハイエースバンに 押し込んだ。1時間足らずでクウェッタの警察所に着き石棺を開けてみると、 ミイラ化した遺体は茶色の綿の布で覆われ、ワックスと樹脂それに蜂蜜を塗っ た、編んだ敷物の上に手足を伸ばして置かれていた。ミイラの金冠と胸飾り には、古代メソポタミアで使われていたくさび形文字と古代ペルシャを連想 させるゾロアスター教の神アフラマズダの像が書かれている。重厚な木棺に 入れられているが、当初は石棺(乳白色のガラスの粒子でできていることが 判明)と見紛う中に入れられていた。この発見に驚いた警察はミイラをバン に運び込み、カラチまでの24時間のほこりっぽい田舎道をがたがた揺れなが ら戻った。 sarcophagus : 石棺 wedge : 無理矢理押し込む,詰め込む mummified body : ミイラ死体 wrap :包む cotton cloth : 綿布 coat with : 塗る wax : ワックス resin : 樹脂(製品) gold crown : 金冠 breastplate : 胸飾り engrave : 彫り込む,彫刻を施す cuneiform writing : くさび形文字 Ahura Mazda :《ゾロアスター教》アフラマズダ、 Zoroastrianism : 《名》ゾロアスター教 associate with : 連想する encase :入れる、 coffin : 棺 sarcophagus : 石棺 opaque white : 乳白色 jounce : ガタガタ揺れながら進む dusty : ほこりっぽい back road : 田舎道
5 ミイラのニュースが広まってくると、自国の権利を要求する国も出てき始め た。イラン政府はそのミイラはエジプト人と結婚した古代ペルシャの王族と 信じているため、それを取り戻すべき手段をとると発表。アフガニスタンの タリバン政権もまたその所有権を主張している。ただし、その理由は不明だ。 しかし1月、漸くイラン政府が専門家チームをカラチに派遣した際、彼らはそ のミイラを「文化的価値のない偽物」と呼び、嫌悪感も露わに帰ってきた。 filter out : だんだん知られてくる stake : の分け前を要求する take steps to : するための手段を取る regime : 政権 team of experts : 専門家チーム in disgust : 不快そうに phony : 偽物
6 警察が被害者の身元──死亡時、21歳以下だったと思われる──とか、わざ わざ苦労してミイラ化の技術や古代のくさび形文字を使った大掛かりな殺人 者(あるいは殺人集団)のことを知ることはないかもしれない。カラチ考古 学部長サリーム・アル・ハクは、詐欺師は「間違いなく考古学の関係者だ」 と確信している。しかし細部にわたって注意が行き届いてはいたものの、十 分というわけではなかった。最初の手がかり:南アジアの古代文明にはミイ ラの伝統はない。それにまた、ミイラが保存されているカラチ国立博物館で、 ミイラにカビが生え始めた。とはいっても、パキスタン南部の大港町の湿気 を考えれば、カビ臭いミイラも考えられないことはない。関係者は大急ぎで、 窒素を充満させて密封した小部屋にミイラを保存した。 authorities : 当局 identity of : の正体 enterprising :進取の気性に富んだ duplicate : 再現する mummification : ミイラ化 cuneiform writing : くさび形文字 archaeology : 考古学 perpetrator : 加害者,実行者 fraud : 詐欺 as good as : 〜も同然,同じ分量だけ clue : 手がかり tradition : 伝統 mummification : ミイラ化 National Museum : 国立博物館 fungus : カビ humidity : 湿度,湿気 megacity : 百万都市 moldy : かび臭い inconceivable : 考えも及ばない rush to : に駆けつける seal : 密閉する nitrogen : 窒素
7 異例なことがまだあった。ミイラの腹部と骨盤にはガスがたまっていて、保 存処置が不完全であることを示していた。エジプトのミイラは鼻から脳を抜 き出すのだが、この脳は口から摘出されていた。腹部の切開部は刺し傷だと 疑えないこともない。この女性の椎骨には脱臼や骨折がみられる。歯は全く ない。刻まれたくさび形文字の文法的なミスから、それを彫った人間は現代 のペルシャ語を知っていることをうかがわせる。ミイラの金の装飾品の重さ はわずかに15g。「そんな粗末な宝石類を身につける王女などいなかった」と カラチの考古学部のハクは話す。 pile up : 積み重ねる abdomen : 腹部 pelvis : 骨盤 faulty : 不完全な,欠陥のある preservation : 保存 extract : 摘出する incision : 切込み look suspiciously : 疑惑の目で見る stab wound : 刺創 vertebrae : 椎骨 dislocate : の場所を移す fracture : 破損する inscription : 碑文,銘 engrave : 彫刻を施す ornament : 装飾 jewelry : 宝石類
8 パキスタンでは偽造工芸品は珍しくもない。この国の古代ガンダーラ時代の 仏教芸術はよく模造されて、疑うことを知らないコレクターに売られている。 この事件では、殺人でも偽造でも警察は誰も起訴していない。つまり今のと ころ、国立博物館の奥深く、カギのかかり、常に窒素が行き渡る状態の密閉 されたガラスの小部屋のドアの向こうで、生命維持装置をつけられた繊細な 患者のように、この遺体は収まっている。まさしくこのミイラは、パキスタ ンでもっとも保存状態がよく、また徹底的に調査された殺人の被害者である。 forge :偽造する、 artifact : 工芸品,芸術品 forgery : 偽造物 life support : 生命維持(装置) hermetically sealed :密閉されている bowel :奥深いところ


間違ってるところがあるかもしれません。見つけたらメール下さい!