| |
大意
|
語彙
|
BY CATHY BOOTH THOMAS/College Station
| P47 |
「クローンを作るほどの価値がある人にはお目にかかったことがありません」
と、クローンの専門家Mark Westhusinはテキサス農工大の狭苦しい自分の研
究室で話す。「バカげた実験ですよ」ミシィという名の十三歳になる犬のク
ローンを作るために何百万ドルもかけている男の口から出たにしては面白い
表現だ。これまで彼の研究チームは犬のクローンには成功してないが、子牛
は二頭クローンに成功したし、猫のクローンもまもなくできる。今年後半に
はミシィのクローンを成功させるかもしれない──あと五年は無理かもしれ
ないが。人類最良の友の生殖器官は近代科学の謎のひとつと言えよう。
|
cramped : 窮屈な,狭苦しい
confine : 領域
lab : 実験室
Texas A&M University : テキサス農工大
endeavor : 試み
adjective : 形容詞
calf :子牛
reproductive system : 生殖器官
modern science : 近代科学
|
| 2 |
動物のクローンを作る経験を通じてWesthusinはヒトクローンのこうした話
題に苛立ちを感じている。ミシィ化計画を始めて三年、無数の犬の卵子を使っ
て農工大チームが産み出したのはわずかに一ダースほどのミシィのDNAを
もつ胚芽。代理母に移して生き延びたものはいない。卵子が無駄になること
も胎児の多くが自然流産することも、それが猫とか牛なら許されるだろうが、
人間ならそうはいかない。「クローン作成は恐ろしいほどに非効率的であり、
また危険でもあるのです」と彼は話す。
|
vex :イライラさせる,悩ませる
work on : に取り組む
canine : 犬の
embryo : 胚芽,胎児
surrogate : 代理
spontaneously : 自然に
spontaneous abortion :自然流産、
fetus : (妊娠3カ月以後の)胎児
bull : 雄牛
inefficient : 役に立たない
|
| 3 |
たとえそうであっても、犬のクローンを作るのは商売になるし、研究が報わ
れることでもある。一九九七年に羊のドリーがクローンよって作られてから
というもの、農工大の獣医学部のWesthusinのところには、自分たちの猫や犬、
牛や馬のクローンができるのではないかという電話が鳴りっぱなしだった。
「大勢の人がペットのクローンを作りたがっています。たくさんいるのです。
値段が妥当ならなおさらです」と驚いた風にまゆを上げながらWesthusinは話
す。「多いです」ウェストコーストの大金持ちとだけわかっているミシィの
飼い主にとって、費用は問題ではない;農工大の研究資金にと彼はこれまで
に三百七十万ドルをポンと提供した。
|
commercial opportunity : 商機
payoff : 利益
Dolly : 霊長類初のクローン羊
veterinary medicine :動物薬,獣医学
duplicating : 複製
raise one's eyebrows : 《軽蔑して・驚いて・疑って》まゆを上げる
plop :落とす
|
| 4 |
ミシィが亡くなったと報じているものもあるが、亡くなっているわけではな
い。飼い主はプライバシーを守るために匿名を希望しているが、彼がいうに
は、ミシィが亡くなったあとその優れた資質を引き継ぐクローンが欲しいと
いうこと。原型となるミシィは誰がみても強壮であり、性格がよく、頭はず
ば抜けていい。ミシィは大会用の犬だと思われるかもしれないが、動物の収
容所からもらってきた雑種──コリーとハスキー犬──だ。飼い主はミシィ
と全く同じ犬を期待しているわけではない。またクローンの気質はミシィと
違うかもしれないことも彼は知っている。研究の目的について、飼い主と農
工大チームは、「クローンとミシィの違いを研究したい」と語っている。
|
decease : 死亡する
anonymous : 匿名の
protect one's privacy : プライバシーを守る
prototype : 原型
by all accounts : 誰から聞いても
athletic :運動神経が発達している
good-nature : ネアカ
mongrel :雑種犬、
collie :コリー《スコットランド原産の顔の長い大型牧羊犬》
husky :エスキモー犬,ハスキー犬
pound :はぐれ動物収容場
temperament : 気質
statement of purpose : 目的説明書,志望動機説明書
|
| 5 |
言い換えれば、大型雑種犬のクローンを作るのは別としても、この研究は昔
ながらの疑問、すなわち氏か育ちかという問題への手がかりを与えるかもし
れない。また、特殊な救助犬とか、あるいはエチオピアンウルフとかアフリ
カンワイルドドッグといった絶滅の危機に瀕している犬科の動物のクローン
化につながる可能性もある。農工大の研究室のマイクロマニピュレーターの
上にはミシィの元気な写真が飾られており、そのマニピュレーターを使って、
格別誰からも興味を持たれていないDNAをもつドナー犬の卵子にミシィの遺伝
情報を注入する。最大の問題は卵子を入手すること。それというのも、犬の
発情期は半年から一年間隔なので、研究室にいる五十匹の犬のうちの一匹が
発情期になるのを待つのは時間がかかるのだ。先週ベッツィという名の雌犬
が発情期に入り興奮状態になったが、実際に排卵するかどうかはわからない
──また、別の雌犬が発情期に入り代理母の役割をなすことができるかどう
かもわからない。
|
mutt :雑種犬
insight : 洞察
nurture : 養育
rescue dog : 救助犬
endangered : 絶滅寸前の
canid : 犬科の動物
mug : 顔写真
micromanipulator : マイクロマニピュレーター,極微操作装置
inject : を注入する
genetic code : 遺伝情報
donor : 提供者
go into heat : 発情する
estrus : 発情期
bitch : 雌犬
flurry : 興奮
ovulate :排卵する
go into heat : 発情する
surrogate : 代理
|
| 6 |
犬ではまだ画期的といえる躍進はないが、犬の飼い主というはミシィ化の商
業上の副産物としてできたGenetic Savings & Clone社にとっては最大の得意
先である。この会社は将来のクローン用のためにペットのDNAの冷凍保存を提
供する会社で、その冷凍には八九五ドル、それと年間保管料が百ドル。白い
容器──アールツー・ディーツーのようにみえる──は既に猫や犬の遺伝物
質を入れている何百もの容器で一杯となっている。貴重な馬や牛も幾頭か、
冷たく渦巻く液体窒素の中に納まっている。
|
canine : 犬科
breakthrough : 躍進
spin-off : 副産物
canister :密閉容器,缶
Artoo Detoo :R2-D2 (ARTOO-DETOO)(スターウォーズのキャラクター)
genetic material : 遺伝物質
eddy :小さい渦巻き
subzero : 《形》氷点下の
liquid nitrogen : 液体窒素
|
| 7 |
犬の試料の運命はWesthusinの研究次第だ。無事に妊娠し産まれたとしても、
産まれた子犬は生誕時に他のクローン動物にみられた問題に直面することは
彼にはわかっている:未発達の肺とか心血管の異常とか体重の問題である。
「人のクローンをなぜ欲しがるのだろうね、動物のクローンでさえ結果が出
るにはほど遠いというのに」とWesthusinは疑問視している。
|
viably :生存[生育・生活]能力のある
offspring : 子
immature : 未発達の
lung : 肺
cardiovascular : 心血管,心臓血管
|