The Subtle Magic of Koetsu

The Subtle Magic of Koetsu
(11.27.P64.2000)

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今回は ART  原文はここ
 
光悦って名前は知っているのだけど、実際はよく知らないのです(^^;

玄妙の技、光悦


語彙は主に『英辞郎』Ver.38から抜粋

By ROBERT HUGHES
 

大意

語彙

P64 17世紀のこの芸術家の作品が日本の国宝となる所以が、またとないアメリカ での展覧会によって明らかになる exhibit : 展覧会,展示会 national treasure : 国宝
1 日本の芸術家、本阿弥光悦はアメリカではほとんど知られていないが、日本 では彼は国宝以上の国宝だ──西洋で言えばベンヴェヌート・チェッリーニに 匹敵するほど有名。この理由は、彼が書道の達人だからなのだが、この書道 というのはアメリカでは太平洋岸の専門家にのみ関心を持たれているものの、 日本と中国では美学の中心となっている芸術だ。だから、フィラデルフィア 美術館で現在開催されている光悦展に、そこそこ人は集まっても、どっと押 し寄せることがないのもうなづける。展覧会は来年5月までであるが、それ までに見に行く人にはこの状況は幸い。墨で表現された円熟期の光悦の作品 を見るとき、あなたの肩越しに見る人が少ないにこしたことはない。日本の 美術館ではこれほどじっくりと見ることはできない。 several times over :幾重にも、 Benvenuto Cellini :ベンヴェヌート・チェッリーニ《Berlioz 作曲のオペラ (初演 Paris, 1838); ルネサンス期のフィレンツェの金細工師・彫刻家 Cellini を扱った作品で, 台本は Cellini の自伝に基づく》 calligraphy : 書道 aesthetics : 美(学) Philadelphia Museum of Art :フィラデルフィア美術館《Philadelphia の Benjamin Franklin Parkway の端, 26th Street の小高い丘の上に立つ, 世界有数の美術館; ルネサンスから現代までの絵画のほか, 東洋美術のコレ クションなども収蔵している》 respectably : 立派に,相当に pack in : 引き付ける,〜を詰め込む boon : 恩恵,恵み exquisite : 優美な,絶妙な
2 光悦の作品では、その大きさと文化的な影響力において反比例の関係がある。 これら小さくはかなくみえる絵柄、そこに自然のきらめく断片──風にうな だれる松、波状になった鶴の群れ──は、共同制作者である俵屋宗達が手作 りの和紙に色のついた墨で絵を描き、その上に光悦が文字を書いたものだが、 その絵柄は日本人の美的センスには極めて重要なものであり、私たちの文化 では一連のフレスコ壁画とか祭壇の飾りに匹敵する。光悦の作品は、日本人 の受け止め方を総合的に考えてみると、恐らくそれは小さいもの、絶妙なも の、取るに足らないものといっていいものの持つ力の典型的な例だといえよ う。 inverse : 逆(の) resonance : 共鳴(現象) fugitive :はかない luminous : 輝く,光る undulation : うねり crane :鶴 paint in : 描き加える,絵の具の色で特に引き立たせる collaborator : 共同製作者,合作者 of cardinal importance : 極めて重要な fresco : フレスコ画法,フレスコ壁画 cycle :一団,一群 altarpiece : 祭壇の背後の飾り accumulate : 積み重ねる exquisite : 優美な,絶妙な marginal :取るに足りない
3 1637年、美の後援者や目利きたちに惜しまれて光悦は79歳で亡くなった。美 を愛する彼は全生涯を芸術に捧げ、それはもう狂信すらときに利用すること もあるほどで、当然ながら恐ろしいまでの自尊心を彼は持っていた。光悦は プロの芸術家ではない。道楽を究極の水準にまで持っていったのだ。彼の作 品がより自然に近くなり簡潔に制作されればされるほど、その作品は教養人 に好まれた。彼のことを考えると常に、京都という都市の「ルネッサンス」 を連想する。京都は当時の日本の首都であり、16世紀の戦国時代が3人の相次 ぐ大名のもとで漸く安定した時代のことである。イタリア人がルネッサンス を磨き上げられた古典主義──「野蛮な」ゴート様式の灰塵から生まれ変わっ たローマ──の噴出と考えたのと幾分似て、京都のルネッサンスも日本の過 去の精神を懸命に思い起こそうというものだった。書道の分野では特にそれ は平安時代(794-1185)にまで遡る。また強烈なエリート主義、筆や刀や茶 碗で象徴される堂々と訓練された男性的な文化を生み出した。 esteem :尊敬,評価,鑑定 patron : 守護聖人,後援者 connoisseur : 鑑定家,目利き devotee : 熱愛者 degree of : ある程度の fanaticism : 熱狂 entail : 必然的に伴う horror : 恐怖 self-importance : 自尊 professional artist : プロの芸術家 associate with : 〜とつきあいがある Renaissance : ルネッサンス,文芸復興(時代) ferociously : 猛烈に successive : 連続する autocratic : 独裁の warlord : 将軍 upwell : 湧き出る,噴出する disciplined : 訓練された,しっかりとした classicism :古典主義、 barbarous : 野蛮な Gothic :ゴシック様式(の) strive :懸命に努力する,邁進する,戦う、 elitist : エリート主義の masculine : 男性の emblem : 象徴,ロゴ ink brush : 筆 tea bowl : 茶碗
4 この社会で、第1級の流行の仕掛人として──ある意味で、芸術の指導者と して──の地位を光悦がいかにして得たかは定かではない。その仕事は決し て楽なものではなかった:将軍徳川家康は、真偽がはっきりしないまま不忠 の名目で、光悦の仲間の一人である茶人古田織部に切腹(儀式的な自殺)を 命じた。しかし光悦は品位を保ち無事に生涯を終える。京都近くの鷹峰の、 半ば芸術家集団、半ば僧侶の村のような地域社会で準宗教的な長に収まって いたのだ。 tastemaker :流行の仕掛人、 artistic : 芸術の sinecure : 閑職楽で収入のいい仕事,おいしい仕事 warlord : 将軍 ritual : 儀式的な disloyalty : 不忠 dignified : 堂々とした artists' colony : 芸術家村 monkish : 修道院の
5 光悦の原点は何百年も昔に遡るが、彼の書き方である「太く細く」、すなわ ちときに大胆かつ勢いがあり、ときに線が延びついには微かに訴えかけるか のごとく細くなるという書き方は彼独自(少なくとも日本の書道家では)の ものであり、真似ができない。書における彼の空間の扱いには崇拝者も驚嘆 する。19世紀の終わり、光悦を西洋に紹介するに多大の貢献をした、ボスト ンの偉大なる日本美術の鑑定家エルネスト・フェノラサが、感極まって次の ように述べている:「間と配置に対するこれほどまでの感性は、世界に類が ない。シェイクスピアが劇に新たな局面を開いたとすれば、光悦はこれまで と全く異なる感覚で空間を捉たといえる」 reach back : 記憶を遡る emphatic : 語気の強い,断固たる visual : 目に見える whisper :ささやく emulate : まねる Fenollosa :《米国の東洋美術研究家・教育家; 東京大学で哲学などを講じるかた わら岡倉天心らと日本画の復興につとめ, 東京美術学校設立 (1887) に協力; 帰国後 Boston Museum of Fine Arts 東洋美術部主管 (1890-97)》 connoisseur : 鑑定家 go into raptures :有頂天になる,狂喜する exhibit : を見せる new species : 新種
6 これは1人で成した芸術ではない。光悦と、和紙作りの名人であり彼とぴっ たり息のあった画家宗達、それに──特にといっていいが──光悦が書き写 した和歌という古来の詩の作者による合作である。この様式の中でももっと も美しいものに色紙という詩のカードがある。そこに鮮やかな光悦の文字が 書かれているのだが、それがまた、宗達の描く水の紋様、鋭く先端がとがっ た茎、徐々にぼやけていく遠くの山々と見事に調和している。何枚もの紙を 貼りつけた上に書かれた光悦の書、その紙自体想像できないほどの微かな色 合いと生地をもち、サーモンピンクのその色はまたこれ以上ないほどほのか にくすんだ青に近く、そこに書かれた書はジョージ・ブラックに優美さを加 えたような感性を示している。 collaboration : 共同制作,合作 suitably : ぴったり合って dead hand : 死者の影響力 verse : 詩歌 transcribe : 〜を書き写す visual :目に見えるような,あざやかな chime : 調和する loop : 環状を成す折返し点,宙返り eddy :小さい渦巻き stem : 茎 blur : にじみ,ぼやけ sheet of paper : 一枚の紙 paste : 〜を貼る imaginable : 【@】イマジナブル,《形》《a》考えられる,想像できる,思いやられる tint : 色合い,色彩 texture : 生地,織り目 salmon pink : サーモンピンク abutting : 隣接する delicate : かすかな,ほのかな smoky :くすんだ etherealize : 〜にエーテルを加える Braque :Georges Braque (1882-1963)《フランスの画家;ピカソとキュビスムを創始》
7 光悦は陶器も作っている。実際、彼は17世紀最大の陶芸家2人のうちの1人 と日本ではみられている。もう1人は野々村仁清。だが仁清はプロ、茶壷と か香合といった茶道具を専門に作っていた。アマである光悦は陶芸家と一緒 に制作したりときには彼らに制作の一部を依頼したりした:彼が認定して始 めて作者の銘を入れるようになった。彼の情熱は茶器──儀式において「動 」きの中でねんごろに扱われる道具であるが、その儀式は、中国から輸入さ れ、日本では千利休という第一人者によって禅と結びついた文化的な作法に 変化していった。「茶道」は、日本の上流階級たる武士に影響を与える行動 様式に必要不可欠なものとなる。荒削りであり自然なものを内包し、──少 なくともその起源においては──見かけを飾ることはしない。茶道には美学 と道徳が融合しているのだが、その裏には厳しい自制が見られる。 ceramic : 陶器の potter : 陶芸家 specialize in : 〜を専門にする tea utensil : 茶器,茶道具 caddy :小物入れ,容器 incense : 香(料) commission :〜に依頼する approval : 認定 signature : 署名 authorship : 生みの親,原作者 ceremony : 儀式 rite : 儀式,儀礼 Zen Buddhism : 禅 code :法典,規約,慣例 connote : 意味する,内包する roughness : 粗雑,粗野,不作法 naturalness : 自然性 pretension : 気取ること,うぬぼれ aesthetic : 美学 conjoin : 結合させる restraint : 慎み,自制
8 自分の茶碗──「富士」碗、日本の国宝に指定されているため、アメリカで 見ることができない──に銘を入れたのは光悦が最初だが、自分の窯を持つ ことはなかった。先人の利休同様、光悦は後に楽焼と呼ばれる、ろくろを使 わず低温で焼く陶器全体を総称することになる陶芸家一家と共に作品を作っ た。だが利休とは違って、光悦は自らの手を汚し、土をこね、へらで形を仕 上げていった。 designate : 指定する national treasure : 国宝 hence : それ故に,故に kiln : 窯 ware : 陶器 clay : 粘土 carve : 刻む spatula : へら
9 とはいえ、セーブルとかウェッジウッドといった非の打ち所のない作品に慣 れ親しんでいた人々にとって、赤ぬけない光悦の茶碗を目にしたときは驚き であった。落してつぶれたようでもあり、くぼみがあったりと、その茶碗は もとの土の特徴を残しているようだ。あまりに不均一なので、テーブルに置 くとぐらぐらすると思われるだろう。模様とか絵などはなく、表面に見られ るのは上薬の滴りとかひびとかだけだが、茶室の微かな自然の光でじっくり 見ると、壮大な自然現象を表現しているのかもしれない。今回の展示でもっ とも美しい茶碗の一つは、ザラっとした手触りの茶色を背景に黒の釉薬をか けた茶碗で、それは初期の所有者がつけた雨雲つまり「Rain Clouds」という 名に相応しく雷を引き寄せそうな重厚さがある。 immaculate : 欠点のない refinement : 精妙,精練 Sevres :セーヴル(焼き) 《高級磁器》 Wedgwood :ウェッジウッド《英国の代表的な陶器で,皇后の御用陶器ともなった》 pitted : あばたのある crater : クレーター,くぼみ,あばた uneven : 平坦でない,一様でない wobble : ぐらつく drip : 点滴 crack :ひび contemplate : じっと見つめる dim : かすかな natural light : 自然光 teahouse : 茶室 glaze : 艶,光沢,釉薬 gritty : 砂のような,砂利の入ったような,ザラザラする thunderous : 轟き渡る,雷が来そうな bestow : 与える,授ける
10 素人には、こうした作品は牛の糞にように見えるかもしれないが、その荒削 りなところがこれまでも日本の目利きには貴重なものに思われてきた。光悦 は一度、買いたいと思っていた格別有名な茶筒を購入する資金──金貨30枚 ──を調達するために家を売ったことがある。後に彼は、そのような高貴な 物を所有することを「わずらわしい」ことと、またそれがもたらす骨董趣味 をお門違いなものと考えるようになる:自分で作ったほうがまし。 uninitiated :新米の,未経験の cowpat : 牛糞 roughness : 荒削りな所 tea caddy : 茶を入れる箱,茶筒,茶入れ yearn : 切望する exalted : 高貴な nuisance : 厄介者,迷惑 antiquarian : 好古家的な,好古趣味の irrelevant : 的はずれな,適切でない
11 光悦の名で連想するのはまた日本の伝統の一つである漆。連想するというの は、彼が蒔絵を自分で作った可能性は少ないからである;その技法は高度で 習得には長い年月を要する。明らかに彼は漆のことをよく知っていたし、そ の可能性に没頭していた──驚くことはない、というのも彼は刀の目利きと して有名であり、刀の鞘や金具などの飾りは常に漆だったのだから。また彼 が技法の革新を好んだことも明らかだ。私たちにとってそれはささいなこと のように思えるが、伝統に縛られ変化の少ない日本の芸術や意匠という世界 では大変なことだった。その一つが漆に鈍い鉛の象嵌と輝く緻密な金を錬金 術のように対比させたもので、それは葦舟すなわち「Reed Boat」と名づけら れた美しい硯箱に採用されている。 lacquer : 漆 unlikely : ありそうもない demanding : 厳しい,要求の多い immerse : 没頭させる classification : 分類 scabbard : (刀の)鞘 fitting : 金具,結合金具 adorn : 飾る innovation : 革新 tradition-bound : 伝統に縛られた slow-moving : のろい,ゆっくり動く context : 状況 design : 模様,意匠 alchemical : 錬金術の lead :鉛 inlay :象眼,はめ込み(細工) bright gold : 輝く金
12 だがあれこれ考えてみるに、光悦には類別ということが、彼の生きた時代と か場所でもってすら類別ということができない芸術家の一人である。彼はあ くまでも無上の素人であり、その権威は彼独自の作品から引き出される。西 洋に彼のような人物が全くいないというのは驚くにあたらない、なぜなら日 本にもいないからである。 in the end :ついに,いろいろ考慮してみて elude : 逃れる consummate : 完全な,無上の


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