Lots of Action in the Memory Game

Lots of Action in the Memory Game
(10.30.P42.2000)

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今回は SCIENCE から
  何か新しいことが分かっているのかと思ったけど、記憶というのはまだまだ未知の 領域なのですね。

記憶に絡む様々な要素


語彙は主に『英辞郎』Ver.33から抜粋

By GEORGE JOHNSON
 

大意

語彙

P42 新たな実験により、記憶がいかに形成されるか──また、記憶の形成が成さ れない時があるのはなぜか──に関して、科学者は昔ながらの考えを改めよ うとしている prompt :を促す
1 長い間、記憶の形成は神経学的ティンカートイを組みたてるようなものだと 科学者は信じていた。外界からの圧倒的な量の刺激にさらされると、脳細胞 がパッと結合し、イメージ、匂い、触覚、音を表す新しい電気的接続パター ンを形成する。 construct : 構築する neurological : 神経学的 Tinkertoy :【商標】ティンカートイ《組み立て玩具の商品名》 barrage : 圧倒的多量 sensation : 感覚,知覚 from the outside : 外側から brain cell : 脳(神経)細胞 electrical connection : 電気の接続 stand for : を表す
2 この信念の中でもとくに揺るぎないものに、記憶回路形成に用いられるニュ ーロンは石油や金と同じく有限の資源だというのがある。私たち個人の細胞 数は限られており、年毎に供給される数は少なくなる。だからこそ、中年に なると記憶が曖昧になると感じたり、新しいものを覚えるのが段々難しくな るのである。しかし多くの完全無欠なものがそうであるように、この昔から の考えは忘れさる必要があるかもしれない──少なくとも、大幅に変更する 必要がある。 unshakable : 不動の,揺るぎのない neuron : 神経単位,ニューロン circuit : 回路 depletable :涸渇させる petroleum : 石油 bequeath : 伝える cellular :細胞の、 building block : 基礎的要素 blur : ぼんやりさせる absolute : 完全無欠の,明白な time-honored : 昔からの notion : 概念,観念 radically : 完全に,根本的に revise : 修正する
3 去年、一連の困惑する実験のため、このことや記憶がいかに働くかに関して 抱かれていた仮説を、科学者は考え直さざるを得なくなった。そして、最後 の最大の謎のひとつ──一生を通じて、脳は個人の記憶をどうやって保存し、 それによって私たちは自分の頭の中に過去を持ち歩くことができるのか── について、どれほど多くのことを学ばなくてはならないかを思いしらされた。 series of : 一連の,重ね重ねの puzzling : まごつかせる,わけの分からない cherished : 大事にしまっておいた remind : 〜に思い出させる through life : 終世ずっと,終生
4 「10年前に知らなくて、今知っていることの数はあまり多くありません」と 嘆くのは、カリフォルニア、ラホーヤにあるソーク研究所の記憶研究家チャ ールズ・スティーブンス。「実際、ある意味で私たちの知識は減っているの です」 lament : 嘆く in some ways : ある点では,いろいろな意味で
5 次のことははっきりしていると思われる:記憶の痕跡──神経科学者が言う ところのエングラム──は海馬(弓形をしているため海馬というラテン語か らとられた)と呼ばれる脳の奥深い領域でまず形成される。一種のメモ帳と して機能するこの海馬は、一時的にエングラムを蓄えるが、その後何らかの 形(恐らくは睡眠中)でこのエングラムは、大脳皮質を通して永久保存場所 に移される。額のうしろに位置するこの領域は、知性と認識の中心だとよく 言われる。海馬と同じように、ここでも情報は、神経学的な書き込み、つま り一群の連結した細胞の形で存在すると考えられている。 trace : 痕跡 engram : エングラム,記憶痕跡 neuroscientist : 神経科学者 forge : を形作る hippocampus : 海馬状隆起 sea horse :タツノオトシゴ,海馬、 arch : 弓形 neurological : 神経学的 scratch pad : スクラッチ・パッド,メモ帳 permanent storage : 永久記録媒体,固定記憶装置 storage site : 置き場 cerebral cortex : 大脳皮質 forehead : 額 perception : 知覚,認識 reside in : 〜に存在する,属する neurological : 神経学的 scribble : 殴り書きする cluster : 塊,一団
6 こうした方式は、生まれたときから持っているニューロンで形成されるのは 当然だと考えられてきた。さらに、新しい記憶は新しいニューロンを必要と しない──ただ古いニューロンを新しく紡ぎかえるだけ──とも考えられて きた。記憶を呼び戻すのは、こうした回路のひとつを活性化する、つまり昔 の刺激をなんとか蘇らすという問題である。 gospel : 福音,福音書 neuron : 神経単位,ニューロン since birth : 生まれたときから string : 一列に並べる retrieve :検索する,回復する circuit : 回路 coax : なだめる,説得する stimulus : 刺激
7 こうした考えはまことしやかなものである。一つの脳内には何十億ものニュ ーロンがあり、その組合せは無数、どんなに豊かな人生でも十二分に記憶す るに足る。もしも成人の脳が、皮膚や骨が新しい細胞を生み出すように簡単 に新しいニューロンを作り出すならば、記憶という繊細な工芸品をごちゃ混 ぜにするだけである。 eminently sensible : 際立ってしっかりした countless : 無数の more than enough : 十分過ぎる,十二分に,余計な crank out : 機械的に作る scramble : ごちゃ混ぜ filigree : 線条細工,金銀線細工
8 1960年代半ばに行われた成体のサルの研究は、ニューロンの量は出生時に決 まるという考えを裏付けているようだった。だからこそ、去年プリンストン 大学のエリザベス・グールドとチャールズ・グロスが、研究しているサルは 脳の海馬で一日何千もの新しいニューロンを生産しているらしいと発表した ときは驚きであった。絶え間なく生まれるその新しい細胞が次々と大脳皮質 に移動していくらしいという証拠ををグールドとクロスが発見したときには 不快感すら抱いたのである。 hence : それ故に,故に,従って,今から先,今後 Princeton University : プリンストン大学 mint :鋳造する、 jarring : 感情を乱す,不快感を与える steady : 規則的な continually : 頻繁に migrate : 移動する cerebral cortex : 大脳皮質
9 これらの発見をどう捉えたらいいのか誰にもよく分からない。手がかりとし ては既に、脳細胞の生成、これは神経発生と呼ばれる過程であるが、これは もっと原始的な神経系をもつ動物に起こるというのがある。長年、ロックフェ ラー大学のフェルナンド・ノッテボームは、カナリアは、歌を覚えるたびに 一連のニューロンを作り出し、歌を変えるとそれを捨て去るということを示 してきた。 spawn : 生む,生じる brain cell : 脳(神経)細胞 neurogenesis : 神経発生 primitive : 原始的な nervous system : 神経系 batch of : 一群の slough off :捨て去る,脱却する、 tune : 曲
10 しかしながら、哺乳類、とくに霊長類(人類を含む)においては、この大規 模な脳の部品の生産は進化の過程ではるか昔に消えてしまったと概ね考えら れていた。長期間記憶を蓄える必要が大いにあるために、こうした生物は、 入り込んでくる新しい細胞によってエングラムが決して混乱させられないよ うにする必要があったのだろう。 mammal : 哺乳動物 primate : 霊長類 subset : 下位集合,部分集合 Homo sapiens :人類、 wholesale : 大規模な manufacture : 製造 phase out : 次第に消す evolution : 進化 long haul : 長時間 engram : エングラム,記憶痕跡 disrupt : 混乱させる,乱す interlope : 出しゃばる
11 この考えが説得力があると誰もが思っているわけではない。(鳥もまた記憶 すべき重要なものを確かにもっている)神経発生が人間に起こることが発見 されたとき、その理由づけは手前勝手な論調を帯び始めた:新しい脳細胞が 記憶と何らかの関係をもつとか多少なりとも関係をもつという証拠はないで はないか。 convincing : 説得力のある neurogenesis :神経発生 rationalization : 合理化,理由づけ special pleading : 手前勝手な議論 brain cell : 脳(神経)細胞
12 プリンストン研究所で発見されたニューロンにはこれが当てはまるかもしれ ない。グールドたちがアカゲザルに発見した仕組みは、進化的には役に立た ない残存物、一種の神経学的付属物にすぎないかもしれない。しかし多くの 人が推測するように、この新しいニューロンが記憶の書き込みに積極的に関 わっていることが分かれば、昔からの考えは少なくとも多少は変更を余儀な くされる──恐らくは全面的な見直しを迫られる。 mechanism :機構,仕組み colleague : 同僚 macaque : マカーク(ザル)《アジア・北アフリカ産の短尾のサル: アカゲザル・ クロザル・ニホンザルなど》 nothing more than : 〜にすぎない evolutionary : 進化的な leftover : 残り物 neurological : 神経学的 appendix : 付録,付属物 inscribe : 刻み込む paradigm :パラダイム《特定領域・時代の支配的な科学的対象把握の方法》 be in for :を避けられそうもない,〜をせざるを得ない overhaul : 見直し
13 ニューロンの発生場所は、記憶には間違いなく重要な場所である海馬だとい うのは明らかだ。海馬に損傷のある患者は、損傷を受ける前の年月に関して は、記憶した印象を今でも蘇らすことができるのに、新しい事実を記憶する 能力は失っている。グールドが推測するには、恐らく、海馬で発生した新し いニューロンは、極めて活発に互いに連結を形成する。カナリアの場合と同 じように、この新しい細胞はすぐに連結して新しい記憶を記号化する。そし て、必要がなくなればそこから外に追い出され、エングラムは安全に保管す るためどこか他に移送される。 spawn :生じる hippocampus : 海馬 indisputably : 議論の余地なく speculate : 推測する agile : 機敏な,身の軽い forming : 《名》形造ること,成形(作業),くせとり connection : 連絡 encode : 符号化する,記号化する flush : ザッと流す transferred : 転用の for safekeeping : 安全に保管するために
14 この解釈は古い理論とよく適合する。もっともさらに困惑するのはもう一つ の研究結果だ:新しいニューロンが絶えず海馬から大脳皮質に移動している こと。これらニューロンは何らかの形で情報を永久保存場所──短期記憶を 長期用に保存──に運ぶことに関与しているのだろうか? explanation : 説明,解釈 fit : 適合する migration : 移動 cerebral cortex : 大脳皮質 ferry : 輸送する
15 グールドたちは最近の論文で思いきった推測をしている。恐らく、移送機構 と言われているこの機構は、記憶に日付を与える手段を提供しており、これ によって、私たちはいつ何を学んだかを遡ることができるのだというのだ。 古い記憶は何らかの形で古いニューロンと関連しているのだろう。これがど ういう風に作用しているかは誰も想像すらできない。しかし、もし実際に記 憶が新しいニューロンという細い川で脳内を流れているのだとすると、古い 考えはすべて再考する必要がある。 venture : 思い切って〜する purported :〜という主旨の、 transport mechanism : 移送機構,輸送機構 keep track of : 〜の経過を追う rivulet : 小川
16 脳は極めて複雑だし、神経科学的実験は解釈が非常に難しいので、こうした 全体像は1年もしないうちに変わるかもしれない。神経発生に何が起ころうと も、エングラムはニューロンを紡ぐことによって作られるという基本的考え ──新しいものであろうと古いものであろうと、またその2つが組み合わさっ たものであろうと──は、何らかの形で残るであろう。 complex : 複雑な interpret : を解釈する whatever happens : どんなことがあろうと neurogenesis : 神経発生 fundamental notion : 根本的な観念 string together : つなぎ合わせて
17 他の研究所は当面、ニューロンがどのようにしてこうした結合を形成するか という理解を深めていこうとしている。ここでもまた、これまで長く確立し ていた多くの仮定が、もはや思ったほど確かなものではないように思われる。 refine : 磨きをかける forge : を形作る established : 確立した
18 過去20年間、神経科学者はひとつのストーリーを組み合わせてきた。つまり ニューロンをつなぐ役割は、NMDAレセプターと呼ばれる一種の分子スイッチ が担っているというもの。(この言葉は、実験でこの分子を同定するときに 用いられる化学薬品の名前の音節から取っている)その仕組みは次のように 働くものと考えられている:あるニューロンが繰り返し第二のニューロンに 信号を送ると、NMDAレセプターが反応しカスケード化学反応を引き起こす。 そして2つ細胞間のつながりが強化される。これがどのようにして起きるか は、ほとんど宗教論争のようなものだ。しかし何らかの形で、結合の「力」 は強まる。ある場合には、完全に新しい結合が生じるかもしれない。 neuroscientist : 神経科学者 piece together : 細切れの情報をつなぎ合わせる molecular : 分子の NMDA receptor : NMDA受容体 stand for : を意味する polysyllabic : 多音節の chemical : 化学薬品 repeatedly : 繰り返して send signals : シグナルを送る unleash : 発散する,放つ cascade :(生化学)カスケード:前段の反応産物によって順次活性化されてい く酵素群により触媒される一連の反応;最初の刺激応答を増幅する作用を持つ chemical reaction : 化学反応 turn up : 上向く
19 NMDAレセプターが化学的に阻止されたマウスは迷路を学習するのが困難だと いうことは長年知られている。この考えの有効性をもっとも劇的に示したの は、もう一人のプリンストンの研究者ジョセフ・チエン、NMDAレセプターの 効力を遺伝子組換えでアップした「スマートマウス」を育て、この齧歯動物 の記憶力が向上することを示したのである。 NMDA receptor : NMDA受容体 have trouble : 困難である maze : 迷路 dramatic : 劇的な genetically engineered : 遺伝子組み換えの,遺伝子操作された breed :種類,血統,系統 smart : 利口な souped-up : 馬力を上げた,高出力化した rodent : 齧歯動物 enhanced : 機能強化された
20 しかし、このストーリーの断片が一致しそうになったまさにそのとき、チエ ンの研究室は別の実験を行い、事態は複雑になった。記憶にもっとも重要な 海馬領域にNMDAレセプターを持たないマウスが作られたのだ。予想通り、こ のマウスは著しく記憶力が劣っていた。しかし、おもちゃとかトレッドミル といった刺激に満ちた環境に置かれると、マウスの記憶が戻ったのである。 科学者たちが電子顕微鏡でマウスの海馬組織を調べてみると、非常に重要と 思われていたNMDA記憶スイッチの助けなくても、新しい神経結合が形成され ていることが判明した。「これは非常に驚きでした」とチエンは話す。 fall together : 同一のものになる,一致する lab : 実験室 as expected : 案の定,予想どおり diminish : 減少させる expose : さらす stimulate : 〜を刺激する tissue : (細胞の)組織 electron microscope : 電子顕微鏡
21 なるほどと思える解釈が2つ。海馬のニューロンは、研究者の目を逃れたまっ たく異なる手段で新しい関係を形成しているのかもしれない。あるいは、通 常海馬で形成される結合は、代わりとして大脳皮質で形成されたのだという 説。そこでは、マウスのNMDAレセプターは損なわれていない。脳の回復力は 脅威的なので、ある場所で損なわれた機能が他の場所で代行されるというの はよくあることだ。いずれにせよ、昔の図式の繊細な線が、再びぼやけてき た。 plausible : もっともらしく思われる forge : を形作る NMDA receptor : NMDA受容体 remain intact : 元の状態のままになる resilient : 回復力に富む in any case : いずれにせよ neat line :図郭(ずかく)線 fuzz :ぼやけさせる
22 エングラムの刻み込みの仕組みとそれに神経発生が関与しているかどうかに 焦点を絞るのが、記憶の仕組みを理解する上での長い道のりの第一歩であろ う。もしも、結合した細胞の配置状態として記憶が保存されるのであれば、 そのパターンとはどのようなものであろうか?ペットのイメージを記憶する のにどれほどの数のニューロンが必要なのであろうか、また、そのパターン は、猫、ペット、哺乳類、生き物といった抽象的な分類を記憶するパターン とどのように関連しあっているのだろう。 zero in on :に焦点を絞る imprinting : 刷り込み,刻印づけ neurogenesis : 神経発生 progression : 行程,経過 configuration : 構成,配置 abstract : 抽象的な mammal : 哺乳動物 living thing : 生物
23 また、本を読むとき、大事な文章を覚えるのにニューロンはどう結びつくの だろう?どのように整理されれば、その記憶は本によるものであり、自分の 経験からのものではないと分かるのだろう?さらに、本をパラパラめくると き、言葉の定義とか、音とか、また文章から意味を汲み取る規則を表すパタ ーンをどうやって呼び起こすのだろう? stitch together : 縫合する memorable : 記憶すべき passage :一節 scanning : 拾い読み definition : 定義 rules for : 〜の規則
24 半世紀前に、神経科学者であるカール・ラシュリーは「エングラムを求めて」 と呼ばれる論文を書いた。そこには、ラットが迷路の記憶を蓄えている一群 のニューロンを見つけようとした際の失望が書かれていた。迷路を通りぬけ られるようラットを訓練し、そのあと少しずつ脳を切り取っていく。ラット はますます反応が遅くなり混乱してくるけれど、記憶が書き込まれている場 所をランシュリーは1箇所も見つけることができなかった。がっかりしたラン シュリーはこう書いている、「そもそも新しいことなどなにも分からないの ではないかと結論せざるを得ない、と時々感じるのです」 neuroscientist : 神経科学者 frustrate :挫折する cluster : 塊,群れ negotiate : 乗り越える labyrinth : 迷宮,迷路 snip :をチョキンと切り取る、 sluggish : 怠惰な,反応が遅い ruefully : 残念そうに,しょげて necessary conclusion : 必然的な結論
25 50年経って、記憶を研究する人たちは同じような困惑と畏れの入り混じった 気持ちを抱いている。しかしこうした当惑にもかかわらず、実験を重ねるに つれ、記憶がどのように働くのかについての知識が深まっていく──そして、 記憶が怪しくなればそれを補修できる日が近くなる──という希望を持って いる。 awe : 畏敬(の念),畏怖,《他動》畏れさせる for all : 〜にもかかわらず puzzlement : 当惑 repair : 修復する falter : よろめく,つまずく


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