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大意
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語彙
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BY ROGER ROSENBLATT
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誰もが忠義を激賞し賛美するが、それを行う者はいない
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extol : 褒め称える、
loyalty : 忠義,忠誠
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| 1 |
落ち目のクリントン治世の民衆を喜ばせるテーマの一つは忠節の問題だ。ヒラ
リーはクリントンに忠節だろうか?(今のところは。)ジョージ・ステファノプ
ーロスはどうか(ノーだ。)リンダ・トリップが裏切らなかったならモニカはク
リントンに忠節なままだっただろうか?(恐らく。)クリントン自身は誰かに忠節
だろうか?(時々は。)この頃ではこの問題は予備選にまで広がってきている。
ゴアは、ブラッドリーを民主党を裏切って離れようとしているとせめ、ブラッド
リーは、ゴアをクリントンに盲従していると避難している。
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clin- : 傾斜した,斜面の、
loyal to : 〜に忠実な、
disloyal to : (人)に対して不忠な、
spill over : 波及する、
desert :放棄する、
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| 2 |
数いる政治屋の中、策士ジェームズ・カービルはいつも忠節が確かな者の一人
だった。彼は余りに忠節すぎ国民の頭痛の種となるほどだった。その彼が最近、
忠節に関する本、'Stickin': The Case for Loyalty'を発行した。この本は思想
というよりも個人的至便からなりたっているといった方が良いが、読めば忠節が
いかに魅力的であると同時にまた不可能であるかが分かる。
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strategist : ブレイン,戦略家、
just published : 最新刊,最新号、
attractive : 魅力のある
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| 3 |
遅かれ早かれ、大きなことであれ小さなことであれ、誰もが誰もを裏切る。必
ずしも悪意からということではなく、そもそも誠実さは人が笑いながら正常な人
間行動と呼ぶところのものと相反するからなのである。「カッシウスよ、私をど
んな危険の中へ連れていくつもりなのか?」とブルトゥスは尋ねた。ブルトゥス
は実際高潔な男だったが、いとも簡単にそねみを持つ男にだまされ反逆へと向か
った。1972年の大統領選の最中、ジョージ・マクガバンの副大統領候補トー
マス・イーグルトンが電気ショック療法を受けていたことが暴露されたことがあ
った。そして私は今でもまざまざと思い出せるのだが、ジョージ・マクガバンは、
忠実を誓って「私は1000パーセント、彼の味方だと公言した。だがその後間
もなく、彼をすてた。
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betray : 裏切る、
out of malice : 悪意で、
loyalty : 忠義,忠誠、
run counter to : 〜に反する、
laughingly : 笑いながら、
human behavior : 人間行動、
honorable man : 高潔な人物、
seduce : たぶらかす、
treason : 反逆、
avowal : 言明、
fealty : 忠義、
running mate : 副大統領候補、
presidential campaign : 大統領選挙戦、
dump : 厄介払いする,排除する
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| 4 |
私は行名に "Fidelity(忠節) "を付けているような銀行は私のお金を失って
しまうのではないかと常々怪しんでいる。忠節を根拠もなく単に主張するという
のは、それだけでもう十分裏切りの臭いがある。忠節であるというためには、友
情とは異なり、いくらかはそれを行動ないしは言葉で外部に示さなければならな
い。それ故に言行不一致を招いてしまう。これは忠節のもつ弱点の一つだ。また
忠節には絶対服従の含意があり、忠節を誓った人や組織には、賛成できない時で
も従わなければならないことになる。実際ここには裏切りの萌芽がすでに含まれ
ている。
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assertion : 断言,表明、
demonstration : 実演,実証、
declaration : 宣言、
insincerity : 言行不一致(な言動)、
by implication : 暗に、
unconditional : 無条件の
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| 5 |
不実をはたらきそうな者の見分け方。1)正当に評価されていないと感じ、その
ことを騒ぎ立てる者。時々カッシアスのきげんをとっていれば、シーザーは今
日まで生きていただろうに。2)分不相応に高いまたは低い地位にいると感じ、
正体がばれるのを恐れている者。 3)新聞のコラムを書く者。4) 書きたいと思っ
ている者。5) 旅行のパンフレットを読んだり、メルセデス・ベンツのショウル
ームでたむろして時を過ごしている者。6)名前に母音の入っている者。7)その他
の者全て。
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disloyal : 不実の、
underappreciated : 正当に評価されない、
flatter : 褒めそやす,おだてる、
inadequate : 不適当な、
good deal of : かなりたくさんの,多量の、
travel brochure : 旅行案内パンフレット、
hang out : うろつく,頻繁に訪れる、
vowel : 母音
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これは、相手かまわず不実で美徳に向けて努力しないのが当たり前といってい
るのではない。実際、徳のある人の定義として、高潔な行いと卑劣な行いを心え、
卑劣に屈しながらも高潔に向けて努力する者といっても良いだろう。
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promiscuously :無差別に,めちゃくちゃに、
virtue : 美徳、
reasonable definition : 妥当な定義、
virtuous person : 徳性の高い人、
ignoble : 下劣な、
strive for : 〜のために懸命に努力する、
succumb to : に屈する
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忠節は高い水準を求めるが、弱い存在である人間にはそれを満たすことはでき
ない。人間の本性にあまりに多くの恐怖、自己不信、日和見、野心があるからだ。
有名な野球のFA選手で同じチームにずっと忠節を尽くすものは一体何人いるだろ
うか?名の売れている出版関係のCEOは?売れっ子作家は? 「私はよそへはいき
ませんよ」などという忠義の約束が守られるのは、フィン航空の最初のスチュワ
ーデスが通路をやってくる時までの話しという程度のものだ。カービルの本によ
ると、大統領を支持する人より攻撃する人の方が多いという。その両方という場
合もある。その一例として、保健社会福祉省のピーター・エデルマンのことをあ
げている。エデルマンは政府高官としてクリントン大統領の福祉法案の通過を待
ったが、その後、耐え切れなくなり辞職した。彼は節操のある行動をとったのだ。
だがどんな理由をもってしても、常に全く理想的であるということは非現実的で
ある。数少ない善人は忠犬ハチ公のように、余りに忠実なゆえに非人間的かもし
れなかった。我々は犬は変わることなく忠実なものと思っているが、その犬でさ
え、いや犬だからこそ、餌を与える者の手を噛む。(常に忠実。)忠節は達成で
きないもので、人生を面白いものにしているのは裏切りなのだ。(ジョン・ディ
ーンとニクソン、デービッド・ストックマンとリーガン、ユダとイエスをみよ)。
確かに忠実なことで有名な人々もいる。だが彼らの忠節は度をこしてしまうこと
がよくある。本来は美徳であるはずなのに、哀れな馬鹿げたものになり、時とし
て犯罪的でさえある。ローズ・マリー・ウッズは、彼女の男のテープレコーダー
の側にたった時歴史の中に入った。ヒューバート・ハンフリーは、恐らく、リン
ドン・ジョンソンと彼のベトナム政策に忠実だったから大統領選に負けたのだ。
そしていつの世も(帰らぬ夫をじっと待つ)オデュッセウス夫人はいるものだ。
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self-doubt : 信念喪失、
opportunism : 日和見主義,便宜主義、
frail : か弱い,意志薄弱な、
adhere to : 〜に忠実である、
free-agent :自由契約選手、
ball player : 野球選手、
Finnair :フィン(ランド)航空《本社 Helsinki; 国際略称 AY》、
aisle : 通路、
turn on :〜を攻撃する、
bill : 法案、
stomach : に我慢する,許す、
principled :節操のある、
semper fi :=semper fidelis,常に忠実な、
Fido :ファイドー《米国で飼い犬によく用いられる名》、
betrayal : 裏切り、
loyal to : 〜に忠実な,〜派の,〜に対して信義を守る、
pathetic : 哀れな,無価値な
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横井庄一さんのことを思い出してみれば、忠義というものがいかに馬鹿げたも
のになり得るかがよく分かる。彼は米軍に降伏すまいと27年間グアム島のジャ
ングルで隠れていた日本兵だ。彼は昭和天皇に忠節を近い、まさにそれを守った
のである。
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surrender : 降伏する、
fidelity : 忠実
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もちろん最悪の形をとるのは、諸機関や政府が'国益'というような美辞麗句や
忠誠宣誓で、忠誠を命じる場合だ。(ケネディは'国益'という言葉でマスコミを
黙らせた。)恥ずべきマッカーシズムの時代には、大学院生が政府補助金を申請
する際には忠誠宣誓書に書名することが求められた。ハーバード大学の学生部長
は、この慣行を単なる形式的なことにすぎないと擁護した。申請書の封筒に貼る
ために切手をなめる程度のことでしかないといったのだ。それに対し教授会で偉
大なイタリア人の学者、レナト・ポッジョーリ教授はすくと立ち上がり述べた、
「学生部長殿、私はファシストイタリアから参りましたが、申し上げたいことが
ございます。最初に切手をなめれば、次には別のものをなめなければならなくな
るものなのです。」
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manifestation : 発現、
mandate : 命令する、
national interest : 国益、
loyalty oath : 忠誠宣誓、
shame : 不名誉、
graduate student : 大学院生、
government grant : 政府機関の奨学金、
dean : 学部長,学生部長、
pro forma :形式上の、
faculty meeting : 教授会
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ハムレットの中で、ポローニアスは、忠義の中でも最高の忠義は自分自身に対
するものだと語った。だがこの言葉はポローニアスが大ばか者だったということ
を思い出させる役にしかたたないのだ。我々はありのままの自分に忠実であるこ
とすらできず、多くの者は他人になれたらもっと幸せなのにと思っている。詩人
オーデンはそれを 'ララバイ'という詩でうたった、「我が愛しの人間よ、 そな
たの眠れる頭を我が不実なる腕の上におくがよい。」あー、人間よ。
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idiot : 大ばか者、
someone else : 誰か他の人、
lullaby : 子守歌、
faithless : 不実な
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