キンケイドシリーズ第1巻 スコットランドヤードの警視Duncan Kincaidはのどかな休暇を楽しんでいた。 たまたま従兄弟が都合が悪く、予約していたホテルをキャンセルするのも もったいないということで、キンケイドが代わりに休暇を享受することに なったわけだ。イギリスのホテルとか場所はよくわからんからそれはおいと くとして、設備も景色も素晴らしいところらしい。 そこのassitant managerが感電死する。明らかに殺人だが、ここはヨーク シャー、管轄外である。地元の担当刑事の横柄さと鈍さに苛立つキンケイド。 またもや殺人が起こってしまう。 殺人といえば最近は残虐なシーンが多いのだが、これは本格的なミステリー ですね。かなりのお薦め品です。 2000.9.4〜2000.910.: 1回目・Devorah Crombie "All Shall be Well"(Berkley Prime Crime, New York 1995 P259)
キンケイドシリーズ第2巻。 事件も解決したKincaidは久し振りに不治の病に冒されている Jasmineを尋ねようとする。そこで待っていたのはドアをノッ クしている通いの看護婦。Kincaidがヘアピンで鍵を開け、部 屋に入ってみると、Jasmineがひっそりと亡くなっていた。 一見自殺と思われるのだが、Jasmineは常にドアには鍵とチェ ーンなどもしっかりかけていたのに、今日に限って鍵だけしか かけていない。遺書もなく、几帳面な彼女が死に際しておかし いと思うKincaidだった。 さすがにイギリスを舞台にしたミステリーです。暴力もレイプ もありません。警察の尋問も静かにためらいがちに行なわれま す。関係者の過去がひとつずつ明らかになり、最後は意外な展 開に終わります。 ミステリーとしての謎解きは今ひとつですが、人生を描いたと いう点では評価されるでしょう。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergent Jasmine Dent: Major: Harley Keith Margaret Bellamy: Meg Roger: Leveson-Gower, Meg's boyfriend Felicity Howarth: home-help nurse Theo Dent: Jasmine's brother 難易度 ★★★ お勧め度★★★☆ 2002.6.25〜2002.28: 1回目・Devorah Crombie "Leave The Grave Green"(Berkley Prime Crime, New York 1995 P291)
キンケイドシリーズ第3巻。 テームズ川の閘門に水死体が見つかる。川の上流に住む Connorだと身元はすぐにわかったものの、首には締めら れたあとが見られた。 義理の父であるGeraldはDuncanに捜査を依頼する。犠牲 者Connorは誰にでも好かれると聞かされるが、妻のJulia とは別居中。彼女は夫を最低の男だと言う。 実はこの作品は20年前、Juliaの弟が川で溺れて亡くなる シーンから始まります。そしてこの事件が起こる。読者は 否応なく、20年前の事件と今回の事件との関係を考えさせ られますが、意外な展開を示します。 警視ダンカンと刑事ゲンマの関係が、事件の進展と共に変 化していくところも読みどころでしょう。次回、2人の関 係はどうなっているのでしょう。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergent Connor Swann: murdered, son-in-law of Sir Gerald Julia Swann: Connor's wife Sir Gerald Asherton: conductor Dame Caroline Stowe: singer Trevor Simons: gallery owner Tommy Godwin: Wardrobe Manager Sharon Doyle: Connor's girl friend Hicks Kenneth: Matthew: younger brother 難易度 ★★★ お勧め度★★★☆ 2002.10.21〜2002.10.24: 1回目・Devorah Crombie "Mourn Not Your Dead"(Berkley Prime Crime, New York 1996 P289)
キンケイドシリーズ第4巻。 郡の警察署長が何者かに殺害される。捜査を依頼されたKincaid だが、調べるうちに署長は村人たちには好かれていないことを知 る。 Kincaidの捜査手法は相変わらず単純といえば単純、現実的といえ ば現実的。実際の警察はこういう風にひたすら聞き込みと会見に 終始するのだろうね。クリスティとかにある謎解きの部分はほと んどない。 この作品ではKincaidとGemmaの関係がおかしくなります。深い関 係になったらしい二人ですが、しょっぱなからGemmaは二人の関係 を否定してしまいます。びっくりしたのはKincaid。一歩も二歩も 関係が深まったと思っていたのですからこれにはショックを隠し きれません。さてどうなるのか、というのが今回のミステリーと 絡まってくるのですね。被害者と犯人、それを取り巻く環境と KincaidとGemmaの関係が重なりつつGemmaに生きていくべき方向を 示す、という筋立てになっております。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergent Nick Deveney: Chief Inspector David Ogilvie: Alastair Gilbert: division commander, killed Claire Gilbert: wife Lucy Penmaric: daughter Malcolm Reid: Valerie: Malcolm's wife Brian Genovase: Geoff Genovase: 難易度 ★★★ お勧め度★★★☆ 2003.04.19〜2003.04.24: 1回目・Devorah Crombie "Dreaming of The Bones"(Berkley Prime Crime, New York 1997 P389)
キンケイドシリーズ第5巻。 Duncanの元妻Vicから電話がかかってくる。彼女は詩人Lydiaの自伝 を書こうとしているのだが、そのLydiaの死に不信を抱き、彼に相談 をしたのだった。管轄違いではあるが、無碍に断れもせずLydiaの ファイルを調べてみる。確かに自殺とは言いがたい点がある。 中途半端な状態のまま何日かが過ぎ、新たな事件が起きる。今度は 管轄違いと言ってはおられない。 これまでとは打って変わった構成で話が進んでいきます。ミステリ ーそのものというよりは、文学的要素を相当取り入れている感じで しょうか。最初の方は事件も起こらずどうなる事かと思いましたが、 この手法はかなり成功していると思います。 それにしてもKitが今後どうなるのか気になるところです。また、 彼を巡ってKincaidとGemmaの関係はどうなるのでしょう。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergent Lydia Brooke: Morgan Ashby: Daphne Morris: Victoria McClellan: ex-wife of Kincaid Ian McClellan: husband Kit: son Darcy Eliot: faculty member Dame Margery Lester: mother of Darcy Iris Winslow: head of Department Nathan Winter: Brooke's literary executor Adam Lamb: vicar 難易度 ★★★ お勧め度★★★☆ 2003.04.26〜2003.05.01: 1回目・Devorah Crombie "Kissed A Sad Goodbye"(Bantam Books 1999 P369)
キンケイドシリーズ第6巻。 前作からKincaidの本当の子供と判明したKitの関係が出てき ます。父親とし彼はどう対処すればよいのか。そんなとき殺 人事件がおきます。現場に急行しなくてはならないKincaidは 息子との約束を破ってしまいます。 殺人はというと、過去とのつながりが強いのでしょう、しば しば過去が語られる形で話は進んでいきます。被害者の生活 が明らかになるにつれ、なるほど殺人が起きても仕方がない と思わせる人物なんですね。もっとも最後には被害者の生き 方とGemmaの生き方が重なってきます。 このシリーズ、段々よくなってきているような気がします。 事件の解明は重要なのですが、それよりも事件に絡んだ人々 の生き方考え方がうまく書かれてます。そして主人公である DucanとGemma、彼の子供Kitとの難しい関係もいいですね。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergeant Kit: Duncan's son Jo Lowell: Annabelle's sister Martin Lowell: William Hammond: father Annabelle Hammond: Teresa Robbins: chief financial officer Reginald Mortimer: fiancee of Annabelle Lewis Finch: Gordon Finch: busker DI Janice Coppin: senior officer 難易度 ★★★ お勧め度★★★★ 2003.08.29〜2003.09.7: 1回目・Devorah Crombie "A Finer End"(Bantam Books 2001 P336)
キンケイドシリーズ第7巻。 超常現象か、Jcakは無意識のうちにラテン語で昔起きたことを 書いている自分に気がつく。昔といってもはるか昔、12世紀の ことなので、それがなにか知る由もない。 その事件を中心として、様々な職業の人が絡んでくる。ミステ リーなので殺人事件は起こるのだろうが、この作品では超常現 象を取り巻く人々の人間関係がまず語られていく。女性の牧師、 画家とその夫の画商、陶工、さらには妊娠して家出をしてきた 少女。 一体誰が殺されるのか?何のために殺されるのか?読者は被害 者となるものは誰か、と推測しながら読むこととなる。 超常現象を軸に話が進んでいく。何しろ小説だからそういった ものが存在してもおかしくはないので、どこまで本当と考えて いいのだろうかと思いつつ読んでいく。結局は一部が実際に起 きたことで、残りはというと超常現象とはあまり関係無いといっ てもよさそう。落ちつくところに落ちついたというべきか。や や不満が残るところです。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Kit: Duncan's son Andrew Catesby: Winifred: sister, Anglican priest Jack Montfort: architect, friend with Winifred Fiona Finn Allen: painter,friend of Winifred Bram: husband fo Fiona Simon Fitzstephen: Nick Carlisle: work in bookshop Garnet Todd: ceramist Faith Wills: 難易度 ★★★ お勧め度★★★☆ 2003.09.13〜2003.09.24: 1回目・Devorah Crombie "And Justice There is None"(Bantam Books 2002 P397)
キンケイドシリーズ第8巻。 GemmaがDuncanとは別に事件を担当する最初の作品か、と思いき や、Duncanが介入してきました。 Karlという富豪の若い妻がのどを切り裂かれて自宅の前で殺され るという事件が起こる。Karlというのはあくどいことをして金を 儲けてきた成り上がりもの、敵も多いだろうし、妻は骨董品の露 天商といい仲になっていた。とすれば当然犯人はKarl本人か、彼 の周辺にいるものだろうとGemmaは思ったのだが、Duncanはこの 事件が過去の迷宮入りした事件に似ているとして捜査に絡んでく る。結局二人は一緒なんだね。 今回の作品も、過去と現在が行き来しつつ語られていきます。事 件に絡んだ人々の人間性が巧みに語られつつ、GemmaとDuncanとの 関係も変化していく様子が書かれています。彼らはついにひとつ 屋根の下で生活することになります。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergeant Kit: Duncan's son Karl Arrowood: collector Dawn Arrowood: wife of Karl Alex Dunn: porcelain dealer Fern Adams: Alex's ex-girlfriend Gavin Farley: vet Bryony Poole: assistant of Gavin Mark Mitchell: boyfriend of Bryony 難易度 ★★★ お勧め度★★★☆ 2003.09.25〜2003.10.04: 1回目・Devorah Crombie "Now You May Weep"(Avon Books 2003 P385)
キンケイドシリーズ第9巻。 Gemmaの友人でありセラピストのHazelが、常にGemmaを支えて くれた彼女が浮気?そして夫Timは妻の浮気に気づきなにやら しでかしそうな気配。これはまた意外な出だしです。して、 冒頭の1898年の話はどうつながっていくのか。 憎しみというよりは、報われない愛の物語か。愛する人には 愛されず、興味のない人からは愛されるという関係がいくつ も絡みあっている作品。キンケイドシリーズ絶好調かな。 登場人物 Duncan Kincaid: Detective Superintendent Gemma James: Sergeant Kit: Duncan's son Toby: son of Gemma Livvy Urquhart: Charles: husband of Livvy Will: son Hazel Cavendish: friend of Gemma Tim Cavendish: husband of Hazel Louise Innes: John Innes: Martin Gilmore: Jone's younger brother Heather Urquhart: cousin of Hazel Pascal Benoit: French connected with the whisky business Donald Brodie: Alison Grant: Donald's girlfriend Collum MacGillivray: Alun Ross: detective chief inspector 難易度 ★★★ お勧め度★★★★ 2005.01.09〜2005.01.17: 1回目