パトリシア・コーンウエルの検屍官シリーズ第1作目。
着任して間もない検屍官スターペック、共に犯人を追いつめる刑事マリノ。検屍官が 女性であることが、このシリーズ独自の雰囲気を醸し出しているのでしょう。男性 社会である殺人の捜査現場に女性が関与することへの偏見。知能がすぐれているが 情緒がやや不安定な姪との関係。一旦連続殺人が起きるとこれらの問題が一気に あふれてきます。スターペッタには、これでもか、というぐらいにストレスが 押し寄せてきて、それがこのシリーズの作風にもなっているように思われます。 98.8.9〜98.8.18 : 1回目
Body of Evidence。日本では「証拠死体」の名前で出版されています。パトリシア・ コーンウェル、検屍官シリーズの第2弾です。・All That Remains By Patricia Cornwell P382 アマゾンへ
何者かに脅迫されたため、しばらく居場所を替えさえしていた被害者が、ある理由で 自宅に帰ってきました。帰宅後数時間もしないうちに殺害されたのです。しかも、 被害者である彼女は、どうやら犯人を家に入れたらしいのです。なぜ、家に入れたのか? 顔見知りとしか思えないのだが、それは脅迫の方法とは合わない、とFBIの性格分析官 ウェズリーは言っています。
被害者の過去を調べるうちに、なぜか検屍官スカーペッタの元恋人、マークがからんで きます。彼の行動も不審なのですよね。
98.8.28〜98.9.7 : 1回目
パトリシア・コーンウエル、検屍官シリーズ第3作。日本名は「遺留品」 だったかな?遺留品から受ける印象とAll that remainsから受ける印象、 それに実際に意味するものとは大分違うようです。これは文字どおり残って いるもの。今回の事件は、カップル殺人事件なのですが、事件が起きてから つまりカップルが消えてから死体が見つかるまでの時間が長いのですね。 そのため遺体は骨だけに近い状況にあるわけです。皮膚はおろか筋肉、脂肪 などは全く残っていない。骨さえ完全に回収できるわけではないのです。・Cruel & Unusual By Patricia Cornwell P407 アマゾンへ
これまでの2作と違って、殺人の様子がスカーペッタにより生々しく再現され るわけではありません。少なくとも最初のうちは無理なわけです。それが 徐々に明らかになっていく。今回の作品の特徴とも言えるかもしれません。
あっと、それからこの3作目で、マリノ刑事の家庭が少し垣間見ることがで きます。
98.9.30〜98.10.12: 1回目
パトリシア・コーンウエル、検屍官シリーズ第4作。日本名は「真犯人」・The Body Farm By Patricia Cornwell P338 アマゾンへ
これもまた、タイトルが英語と日本語とはだいぶ違います。出だしは、これ また今までの3部作とは全く違った出だしで、初めはちょっと戸惑いました。 おまけにマークが死んじゃうのですね〜。なんの前兆もなく、突然に死亡。
なんだかスカーペッタの周辺にいる人達は次々と死んでいくのではないかと 不気味な思いがしました。
死刑囚の死刑執行、それと平行して奇怪な事件。この2つが絡まりあって 話が進んでいきます。既に死刑を執行された殺人犯とほぼ同じ頃に殺された 子供。様々な人間が怪しい動きをし、少しずつ関連が明らかにされていきます。 オカルト系にもみえるがスカーペッタはこれをどう解決するのでしょう。
98.10.13〜98.10.19 : 1回目
パトリシア・コーンウエル、検屍官シリーズ第5作。日本名は「死体農場」・From Potter's Field By Patricia Cornwell P352 アマゾンへ
これを読むのに意外に時間がかかってしまった。読み始めた途端に風邪を引いて しまって(^^;風邪が治ってから改めて読み直し。
タイトル名、The Body Farmの意味は途中で説明されます(^o^;
姪のルーシーが本格的に登場してくるのですね。それもCAINという名のプログラム の開発者として。まだ大学生なのですが、早くもFBIに注目されています。
話は、「真犯人」からの続きでしょうか。Gaultが犯人と考えられる殺人が 起こり、次に刑事の不可解な死。その間、ケイとウェスリー、マリノとの関係が 変化してきます。今回のマリノはいいとこなしです
98.10.20〜98.11.4 : 1回目
パトリシア・コーンウエル、検屍官シリーズ第6作。日本名は「私刑」・Patricia Cornwell "Cause of Death"(Berkley 1996 P332)ISBN:0-425-15861-6 アマゾンへ
クリスマスイブに偶然に殺人現場に居合わすスカーペッタとマリノ刑事。 その遺体の検証をしている最中にGault現れるの報がマリノに届きます。
内腿と左肩の噛み傷はまさにGaultのなせるもの。だがなぜ被害者は裸にされ るままになっていたのか?現場は当時氷点下というのに。これは無論、スカ ーペッタ達の疑問なのですが、私の疑問は、なぜGaultは捕まらないのか? スカーペッタは一度Gaultを見ているし、前作でも目撃しているのです。 しかも彼は刑務所にいたことがあるのですから。最初の犯行は大勢の人間に 目撃されていたようです。通常殺人犯というのはある場所に定住しているか らこそ、様々な証拠を固めて突き止めていくのですが、このGaultのような犯 人は住所不定、州にまたがって移動するとすると、どうやって捕まえるので しょうか?単に手配書を回すだけでは無理なのでしょうね。
それにしてもスカーペッタの行動、あるいは言動には驚かされます。確かに Gaultのターゲットになってはいるものの、日本人ならとっても考えられない ですね。彼女のような行動は米国では普通なのかな?
98.11.7〜98.11.12 : 1回目
検屍官シリーズ、第7作目。・Patricia Cornwell "Unnatural Exposure"(Berkley 1998 P367)ISBN:0-425-16340-7 アマゾンへ
検屍局タイドウォーター支局担当のマントの家にいるスカーペッタ。そこに元海軍 造船所で死体が発見されたという連絡が入る。死体は水中にあり、冬の最中、ケイ はダイビングするはめになります。場所は海軍が絡んでおり、管轄の問題からか、 はたまたケイが女性でしかもこの土地に馴染みがないからか、露骨な嫌がらせを されますが、読者をプンプンさせるほどの悪どさです。作者が上手だってことで すね。無論のこと、私も腹を立てました(立ててもしようがないのですが)。
事件が始まったばかりでさしたる進展もないなか、彼女のもとで働いていた 青年が殺害されます。このシリーズで、彼女の下で働いていた人が亡くなった のは2人目でしたか?検屍官というのは予想外に危険な仕事ですね。今回殺された 青年は彼女のメルセデスを届ける途中ということで、ケイは自責の念にかられます。 しかも事件はさらに広がっていきます。
99.1.25〜99.2.8 : 1回目
検屍官シリーズ、第8作目。・Patricia Cornwell "Point Of Origin"(Berkley 1999 P397)ISBN:0-425-16986-3 アマゾンへ
アイルランドにいるケイ。これまでリッチモンドに起きている連続殺人事 件との関連性を調べるため。この事件の特徴は、遺体が胴体のみという点 だ。頭と手足は切り離され、どこにあるか分からない。そのため身元確認 すら難しいのである。リッチモンドに帰ってきたケイは再びこの事件と向 き合うこととなる。巨大なゴミ処理埋立地に遺体が放置されており、それ はこれまでのものと同じ手口。頭と手足が切り離されて胴体だけの死体だ。 そこに殺人犯からのメールがケイのところに届く。画像が添付されている。 今までとは何かしら手口が違うと感じるケイ。果して同一犯人か、それと も模倣犯か? ウェスリーは離婚し、ケイとの間に何の障害もなくなったと思いきや、ど うもうまくいかないのですね。問題はケイの方みたい。自分の生活に他人 が入ってくるのに我慢ができない性質のようで、困ったもんです。職業的 な優秀さと、こういった個人的な弱さとのギャップが凄いです(^^; 2000.01.31〜2000.02.6 : 1回目
検屍官シリーズ、第9作目、業火。 ウェスリーとの休暇にでかける直前、電話がかかってくる。メディア界の 大物の家が焼けたのだが、放火、殺人の疑いがありケイ達にも要請があった のだ。発見された遺体はひとつ。性別も判別しがたいもの。また火のまわり が異常に速かったことも問題となる。このタイトル、Point Of Originに もあるように、出火点からいかにして急激に火がまわったかということが 問題なのである。また、この事件とCarrieとはどう関わってくるのか、そこ もまた、興味のあるところである。 状況は前作から一変してます。Carrieとの関係から、ルーシーはFBIを辞めて いるし、ウエスリーも退職しているのかな?ケイとウエスリーとの関係は 深まったようだし。変わらないのはマリノだけ。 2000.02.16〜2000.02.28 : 1回目・Patricia Cornwell "Black Notice"(Berkley 1999 P441)
検屍官シリーズ、第10作目、警告。 外国船のコンテナで見つかった死体。腐乱はかなり進んで いた。当然事件の担当と思っていたMarinoは格下げされ、 おかしな女性刑事が担当していた。 一方、Scarpettaの名前でAOLに誰かがあれこれ書き込み、 彼女のメールアドレスを使って、勝手にメールのやりとり が行なわれていた。 またしてもコンピュータ侵入です。これは前にもありました ね。相変わらず管理がずさんって気がします。気づいて当然 のことがなぜだか放置されている。 で、今回のミステリーはというと、どこにミステリーがある の?といいたい状態です。全体の9割ほどがミステリーには 無関係なのではないでしょうか?あるのは権力闘争といった ところかな?しかもその権力闘争があっけない幕切れとなる のはちょっとね、いただけません。 登場人物 Kate Scarpetta: medical examiner Lucy Farinelli: niece Pete Marino: Richmond police captain 難易度 ★★★ お勧め度★★☆ 2002.06.20〜2002.06.24 : 1回目・Patricia Cornwell "Hornet's Nest"(Berkely 1997 P369)ISBN:0-425-16098-X アマゾンへ
検屍官シリーズ第8作目かと思ったら(^^;「hornet's nest :大変な面倒,厄介こと」 邦訳でのタイトルは「スズメバチの巣」でしたか。こういうのは訳すのが大変 でしょうね。
さて、これはミステリーとは言えません。女性副署長Verginia Westと、新米でも やるき満々の記者Andy Brazilを中心とした人間模様とでもいいましょうか。おっと 署長も女性でした。
それにしても暗いです。アメリカってこれほど危険なの?これほど家庭が崩壊 しているの?いくら警察を舞台にしているといってもこれはちと凄まじいよ うな気がします。まあ誇張して書いてはいるのでしょうけどね。
それと、相手に対する思いのすれ違いもここまでいくとたいしたもんです。 アメリカでは意思の疎通は果たして可能なのか?なんて考えちゃいますね。
99.2.9〜99.2.28 : 1回目