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Thomas H.Cook(トマス・H.クック) 1947年9月19日、アラバマ州に生まれる。"The Chatham School Affair"で MWA賞受賞。「記憶シリーズ」が有名。

  1. Evidence of Blood「闇をつかむ男」 P370 1991アマゾンへ(中古)
  2. Mortal Memory「死の記憶」 P310 1993 アマゾンへ(中古)
  3. Breakheart Hill「夏草の記憶」 By P293 1995アマゾンへ
  4. The Chatham School Affair「緋色の記憶」 P303 1996 アマゾンへ
  5. Instruments of Night「夜の記憶」 P320 1998 アマゾンへ
  6. Places in the Dark「心の砕ける音」 2000 P281 アマゾンへ


・Thomas H.Cook "Evidence of Blood"(Bantam Books 1991 P370)
ISBN:0-553-57836-7 アマゾンへ(中古)
true-crime writerであるJackは過去の連続殺人事件に興味をもち調査も
している。そんな彼のところに親友の死がその娘から告げられる。もとも
と心臓が悪くしかも発見場所からすると心臓発作を起こすのも無理はない
ところであった。だから誰しも発作が原因の事故死だと思っていた。ただ
一人娘を除いては。娘SerenaはJackに、父親の死は本当は事故死ではない
かもしれない、調査して欲しい、あなたならきっと調べてくれるというの
だ。

不思議な作家である。過去の事件を調査しているからか、それともこれが
本来この作家の文体なのか、いずれにせよ重厚な心に残る語り口で、おま
けに事件の詳細が徐々に目に見えてくるように書かれている。
お薦めの作品ですね

登場人物
Jackson Kinley: writer
Granny Dollar: Kinley's grandma, dead
Ray Tindall: sheriff, dead
Lois Renshaw: Ray's ex-wife
Serena: Ray's daughter(20)
Sarah Dora Overton: Ray's woman
Charles Herman Overton: Sarah's father, electrocuted
Ellie Dinker: murdered
Martha Dinker: Ellie's mother

難易度 ★★★

2001.7.15〜2001.7.29: 1回目

・Thomas H.Cook "Mortal Memory"(Bantam Books 1993 P310)
ISBN:0-553-56532-X アマゾンへ(中古)
記憶シリーズ第2作。
妻と息子、娘を殺した男。殺害後2時間経って彼は現場である自宅
を離れた。その2時間、彼は何をしていたのか?
結婚し子供もいるStevenは35年前のこの事件を回想し、家族を殺害
した父親、母、兄、特に姉のことを考える。

現在結婚し当時の自分と丁度同じぐらいの息子もいるSteven。なぜ
回想するのでしょう。過去を精算したいのでしょうか。父親の心境
と現在の自分とをダブらせているような感じすら持ちます。家族を
殺した父親とのなぜか似た気持ちになっていく自分。不気味です。

回想しているだけなのに不気味なんですね。真実は何かと考えると
きの不安といいましょうか、記憶のもつ意味とは何かまで考えさせ
られる作品でした。

登場人物
Steven Farris: architecture	
Marrie Olivia Farris: wife(39)	
Peter: son
	
William Patrick Farris: father(44), Billy Farris	
Dorothy Coleman Farris: mother	
Laura: daughter(16)	
Jamie Edward Farris: brother(17)	
Teddy: Laure's boy friend	
Edna: aunt, mother's sister	
Quentin: uncle	
Rebecca Soltero: reporter

難易度 ★★★
お薦め度★★★★

2001.9.11〜2001.9.18: 1回目

・Thomas H.Cook "Breakheart Hill"(Bantam Books 1995 P293)
ISBN:0-553-57192-3 Breakheart Hill(アマゾン)
記憶シリーズ第3作。
今回も30年前と現在とを行き来しながら話が進んでいく。
30年前の田舎町に北の都会からKelli Troyが転校してきた。話手の
私Benは今この町で医者をしているが、当時はこんな田舎町を早く
逃げ出したいと思っていた。そんな彼の目にKelliはまぶしく映っ
たのだろうか?最初に会ったときから惹かれていたのにそれを恋と
は思わなかったし思いたくなかった。彼はこの町を出ていくのだか
ら。
それが恋に変わったとき、こんな言葉が語られる
I felt the exquisite agony both of her nearness and her distance,
…I was most fully alive.

ジャンルはミステリー。しかしながらこれはロマンスと見たほうが
いいかもしれない。確かに遺体は存在する、主人公Benが恋した
Kelliのことだ。Kelliとの出会いから始まり、Benの心が揺れ動き、
恋というよりも激しいKelliへの思いが深く、さらに深くなるにつれ、
これが30年前の出来事であり既にKelliは死んでいることを読者は
意識せずにはいられない。一体何が起きたのかと。
What was Kelli doing on Breakheart Hill that day?
What was she looking for in those deep woods alone?
この2つの文章が物語るように、本全体を通じて読者はこのことを意
識することとなる。
本編の主題は"Love"であるが、最後の最後に語られる"Love"はある意
味で衝撃的でありかつ「やはり」と思わざるを得ない。

心理描写は抜群!

登場人物
Ben Wade: Doctor
Kelli Troy: 
Amy: daughter
Noreen Donovan: newcomer, wife
Luke Duchamp: friend
Thelma Troy: Kelli's grandmother
Bailey: lawyer?
Stone: Sheriff
Lyle Gates: violent
Edith Sparks: witness


難易度 ★★★
お薦め度★★★★★

2002.1.3〜2002.1.9: 1回目

・Thomas H.Cook "The Chatham School Affair"(Bantam Books 1996 P303)
ISBN:0-553-57193-1The Chatham School Affair(アマゾン)
1926年8月、Chatham Schoolに新任の女教師Channingがやってきた。
彼女と妻子のある男教師Reedとの不倫の関係が徐々に形成されてい
く。Chatham School校長の息子であり、2人の生徒でもあるHenryが、
そうした2人の関係を第三者の立場から語る形で話は進んでいく。

父親の影響から逃れたい、自由になりたいと願うHenryにとり、Channing
とReedの関係は自分に代わって満たされない願いをかなえるもの、
既存の概念を打ち破るものとして映る。
しかし、Henryという第三者の目を通して不倫を描くことによって、
当事者の苦しい胸のうちはすべて憶測にしか過ぎなくなってしまう。
もっとも作者が描きたかったのはこの不倫ではなかったのだから、
それはやむを得ないと言えばやむを得ないのだが、それでは物語の
半ばまでは一体なんだったのかということになってしまう。最後の
展開に至るまでの前振りだとすれば、ちょっと長すぎるね。

結局"Breakheart Hill"がミステリーを超えた文学になったのに比べ
ると、この作品は文学にならなかったミステリーってところでしょう
か。

登場人物
Henry Griswald: 
Arthur H.Griswald: father, headmaster of Chatham School
Mildred: mother 
Elizabeth Rockbridge Channing: new teacher from Africa
Leland Reed: teacher
Abigail Reed: wife
Mary: daughter
Sarah Doyle: teenage servant girl

難易度 ★★★
お薦め度★★★

2002.2.17〜2002.2.25: 1回目

・Thomas H.Cook "Instruments of Night"(Bantam Books 1998 P320)
ISBN:0-553-57820-0 Instruments of Night(アマゾン)
1962, June 14, 両親は車の事故で亡くなり、Paulと姉二人だけ
の生活が始まる。そしてその姉も何者かに殺害され彼ははただ
一人。
一方、Daviesもまた昔親友を殺害された身の上。その彼女が犯人
の調査をGravesに依頼する。Paulは調査をしつつ、自分に起きた
状況を思いだし、その類似性に苦しむ。

過去の事件の調査でもあり、頼りは当時の資料と自分の想像力だ
け。しかしながら事件の起きた静かな場所であるRiverwoodには
予想もしない謎が隠されていた。
平然と悪を行なうものと、悪を余儀なくされながらもそれに対し
て一生苦しみ続けるもの。

相変わらず読者を惹きつける文章です。読んでいて息が詰まるか
のような語り口ですが、途中若干それが弱くなります。ちょっと
それが残念です。最後は再びそれが蘇り、読み終えた後はホーっ
と息をつきます。

登場人物
Paul Graves: 
Gwen: 4 years older sister
Alison Davies: 
Faye Harrison: 
Eleanor Stern: 

難易度 ★★★
お薦め度★★★★☆

2002.6.11〜2002.6.16: 1回目

・Thomas H.Cook "Places in the Dark"(Bantam Books 2000 P281)
ISBN:0-553-58067-1 Places in the Dark(アマゾン)
時は1937年。Port Almaに謎の女性が現れる。"Death followoing her"
とCalが感じた女性である。彼女はある老人の世話をする泊まり込み
の家政婦となるが、その老人は死亡。その後Calの弟Billyの新聞社に
勤めることとなる。
兄のCalと弟のBillyは正反対といっていい性格をしている。Calは父
親の性格を、Billyは母親の性格をそのまま受け継いでいる。現実的
なCalとロマンを追いかけるBilly。そのBillyが出会ったのが謎の女
性Doraであり、その謎ゆえにBillyは惹かれていく。

前半、この話は何がテーマかよく分からないままに読んでいきました。
やがては家族の問題、愛の問題を、父と息子、母と息子の関係で鋭く
描いたものと思えるようになってきます。心のままに行動するBilly、
そしてそれを奨励し賛美する母。一方現実的で愛などとは縁のないよ
うなCal。だが現実的であれば、売春宿などに行くはずもないのですが、
果してCalには母親にも見抜くことのできないほどの愛情があったの
でしょうか?
情熱と愛情、燃え立つような感情と沈潜し抑え込まれた愛。
それにしても最後の最後まで予想外の展開でした。

登場人物
Calvin Chase:
Billy: William, younger brother
Walter: father
Mary: mother
Dora March: 
Catherine Shay: 
Irene Dement:

難易度 ★★★
お薦め度★★★★☆

2002.2.3〜2002.2.7: 1回目