episode 5「さらば大分、さらばW杯」黒川温泉〜竹田〜大分 
極上の癒しを感じるホテル。
怒りのロープウェイを降りた我々は、阿蘇の外輪山を越え、黒川温泉へ向かう。車中のラジオで日本代表戦を聞く。森島の先制点。ラジオで聞くW杯はどこか遠い国の出来事のようだ。約1時間半後、今夜の宿「湯峡の響き・優彩」到着。旅行雑誌「じゃらん」の読者投票で1998年から3年連続1位の黒川温泉。山間の静かな温泉である。「湯峡の響き・優彩」は、極上の癒しがテーマのリゾートホテル。お風呂も多種多彩で、いい雰囲気。子供連れでなければ、もっと素敵なのに。部屋に入りテレビをつける。中田の2点目で2-0のリード、後半残り15分。仲居さんが「試合が終わる前の方がお風呂は空いていますよ、きっと」と勧めてくれる。車中で寝てしまった娘をベッドに寝かせ、我々は交代で早速温泉へ。黒川の流れを見ながらの露天風呂。極楽じゃ、極楽じゃ。良い宿だなあとしみじみ妻に言うと、「それなりの料金だからね」としっかり。
息子は若いお姉さん好き。
昨日の夕食、我々は慌ただしく。義母は、むずかる息子に悪戦苦闘。それぞれ、旅行だというのに落ち着きのないこと。今夜はゆっくり温泉旅情、と思ったが、やはり娘と息子が騒がしい。まあ、それも楽しいのだが…。夕食を挟んで、またもや温泉タイム。館内の風呂をハシゴ。夜、温泉街に出かける。鄙びすぎて見るものナシ。共同温泉や他の宿のお風呂に入りに行くのが、ここの正しい過ごし方。小さな浴衣を着た娘はご満悦。すれ違う観光客に「かわいい」と言われる。まあ、夜で暗いし、すれ違うだけだから可愛く見えるわな。この日は、疲れてみんな早々に寝る。翌朝、朝食(右の写真下)もおいしくいただく。ただし、味付けが濃い。最後の一日、怪我も事故もなく過ごせますように。息子は例によって、宿のお姉さんたち(ホントに若いお姉さんたち)に愛想を振りまき、いつのまにか抱っこまでされている。うーん、流石だ。朝、10時。黒川温泉を出発。また、来たくなる宿であった。
アルプスの少女と一緒に。
最終日は、まず大分県竹田市へ向かう。途中、九重連山と阿蘇五岳を望む高原の展望所「スカイパークあざみ台」で休憩。阿蘇五岳は「あそ・ごがく」と呼び(左の写真上)、根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳の5つの山の総称。その風景が、お釈迦様の寝姿に似ていることから「阿蘇の涅磐像」と言われる。芝生広場で、娘とたわむれる(左の写真下)。阿蘇の草千里のリベンジ。朝食が塩辛かったので、地元の特産品売店でヨーグルトを購入。芝生、高原、青空、爽やかな風。まさにアルプスの少女ハイジ。わが家のハイジは、口のまわりを真っ白にしながら、一心不乱にヨーグルトを食べている。 1時間近く、のんびりと遊び、出発。クルマは高原道路を駆け下りながら竹田市へ。
滝廉太郎ゆかりの町。
大分県竹田市。作曲家、滝廉太郎ゆかりの町で、市内の岡城(址)こそ、「荒城の月」のイメージと言われている。武家屋敷や由緒ある神社仏閣が残る静かな町。とパンフレットにはあったが、駅前再開発や温泉ができたり、小さいながらもワシャワシャした町だ。クルマをパーキングに停め、滝廉太郎記念館に向かう。
廉太郎の父が、この地方の県知事として赴任し住んだ家で、廉太郎は12歳から15歳まで暮らした。オフシーズンに訪れる人も少なく、受付のおばちゃんとしばし歓談。我々が愛知から来たことを知ると、ご主人がドラゴンズファン(正確には星野ファン=今は阪神ファン)であることを披露。ぐずりはじめた息子を、廉太郎も寝ころんだ(であろう)部屋の中に、解き放つことを勧めてくれる。(廉太郎にあやかれ、息子)。廉太郎の生涯や足跡について詳しく説明してくれ、筑紫哲也氏が廉太郎の妹の孫で、名誉館長であることや、1993年上映の映画「わが愛の譜 滝廉太郎物語」の撮影で訪れた加藤剛さん(廉太郎の父役)が素敵だったことなどを話してくれる。ちなみに、主演の廉太郎役は風間トオル(笑)。楽しいおばちゃんであったが、オイラにはその口調といい方言といい容姿といい、「博多淡海」または「バッテン荒川」に思えてしかたなかった。廉太郎は23歳の若さで亡くなったが、「荒城の月」をはじめ「花」「箱根八里」「鳩ぽっぽ」「お正月」など、ほとんどの日本人が口ずさめる歌を作曲した。
ホストシティ、大分市。
竹田を後にした我々は、この旅で初めて大分市へと足を踏み入れた。W杯のホストシティを見たかったのだ。大分若草公園では「Host City Park」と銘打ちW杯を盛り上げる「KONNICHIWA! FESTA」が開催されていた。大分名物の屋台やW杯情報コーナーが設置され、ゲストや大道芸人が登場するステージもあった。商店街の大型ビジョンでは、試合の日に市民が集まり、みんなで観戦するとか。開催地は、それなりに盛り上がっているんだなあ。うらやましい。商店街にある大分サティで、買い足りないお土産を購入。入口付近では、W杯キャラクターグッズが叩き売られていた。大分でのW杯は、明日の決勝トーナメント1回戦が最終戦。祭りの終わる寂しさが漂い始めている。そろそろ、飛行機の時間が気になり、大分市内見物もそこそこに、我々は大分空港へと向かう。
青い空に飛行機が飛ぶ。
レンタカーを返却し、大分空港に到着。ここに着いたのが、遠い昔のような気がする。夕方から夜にかけて出発ラッシュで、空港内は賑わう。レストランで早めの夕食。大分名物「とり天」を食べる。鶏の唐揚げならぬ、鶏の天麩羅。衣がパリッとしながら柔らかく美味しい。窓の外には飛び立つ飛行機。生ビールも飲んで、もうオイラは営業終了。旅をやり遂げた達成感と満足感にひたる。みんなで、のんびり食事してると、いつしか搭乗手続締切間近。あわてて搭乗待合室へ駆け込む。すぐに、機内へと案内される。娘はオイラの膝の上。息子を抱いた妻&義母と通路を挟んで座る。飛行機が滑走路へと移動する。エンジンを全開し離陸。楽しい思い出を乗せて飛び立つ。さらば大分。さらば我々のW杯。娘と息子は、この旅行を憶えていてくれるだろうか。と、感傷にひたる間もなく、娘はお菓子をよこせ、ジュースを飲ませろ、本を読め…。いつもの毎日へと飛行機は向かう。
the end
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