第1回「妻の実家は木綿の里」愛知県知多市岡田地区
ホームページでも紀行モノってかっこいいじゃないですか。最新N.Y.事情とか、誰も知らないロンドン・パリとか北海道ツーリングとか。オイラもあんなページを作りたいんだけど、いかんせん根が出不精でもので。まあせっかくデジカメ買ったんだから、近場でも紹介しようかなという思いつきです。第一回は妻の実家のある愛知県知多市岡田地区です。ご近所以外の人が見てくれれば、それはそれで興味深いかもしれないという期待感でいっぱいです。

テレビの旅番組でも紹介されてる。
知多市岡田地区。江戸・明治から昭和30年代にかけ知多木綿として全国に知られた木綿の産地である。高度経済成長期に知多半島沿岸が埋め立てられ、重化学工業地域となるのと入れ替わるようにその役目を終え、今では小さな織り布工場が細々と操業を続ける静かな町だ。しかし、近年は地元有志がまちづくりに力を入れ、知多木綿の里として様々なイベントや情報を発信している。行楽シーズンには、古い街並みを歩く観光客の姿も多い。ちなみに、この日も名鉄電車主催のハイキングに参加したお客さんで賑わっていた。

立派なお寺が町の中心にあるのだ。
地元の厚い信仰を集める白華山慈雲寺。室町時代、夢窓国師の開山と伝えられる。足利尊氏が帰依し、天竜寺を創建した夢窓疎石? おいおい本当か? とも思うが、夢窓は三重県生まれ、この辺りは足利一族の一色氏の領地だったから本当かもしれない。知多は古来、海上交通の要衝で伊勢方面から京都・奈良へ。三河を経て東国への主要ルートに位置していた。現代の陸上交通だと少し外れているけどね。ちなみに、このお寺の住職さんは、2年ほど前に盗みに入った泥棒を「喝ッー!」と退治したことでワイドショーを賑わせた。確か、お名前も虎渓和尚という勇ましい方だ。
手織り体験してみない?
最盛期には全国に流通する知多木綿の約70%が、岡田地区で織られていた。昭和30年代までは各地から働きに来る女工さんで町は活気づき、劇場や映画館までもあった。この町で結婚し、住むようになった元女工さんも多く、近所のおばちゃんたちの出身地は広範囲に及んでいる。鉄道が走り始めた明治時代。人力車業者が「商売あがったりじゃねえか」と、駅を遠くに造らせた。おかげで、今では名鉄常滑線の最寄り駅「古見」からかなり遠く、不便である。この建物は、昔の木綿蔵を改装したもので、ボランティアのおばちゃんたちの手ほどきを受け、手織り体験ができる。
戦争の爪痕もありました。
戦前には町の賑わいもピークに達し、住民の数も多く、この町から出征していった人も多かった。妻の祖父も赤紙で招集され、終戦ちょっと前に南太平洋で乗っていた船が撃沈され戦死した。上で紹介した慈雲寺にも、戦死者の墓地があり、お墓が整然と並ぶ。とにかく小さな歴史が町のあちこちに残っている感じだ。これは防空壕の跡。この地区の住民が逃げ込みやすいようになのか、町の中心地のわかりやすいところにある。
知多木綿は産業スパイからはじまった。
江戸時代、東隣の三河の国は綿花栽培の先進地だった。西隣の伊勢の国は、綿花を加工し「伊勢晒し(さらし)」として船荷で江戸に送り富を得ていた。知多半島はその中間にあり、両国の繁栄をうらやましく思っていたのか、岡田にある中島家の人が、門外不出だった「伊勢晒し」の製法を産業スパイのように盗んできた。それ以来、知多で晒し木綿が製造され、明治以降になると本家「伊勢晒し」を凌駕するまでになった。木綿の里などと言っているが、盗人猛々しいのではないのか? これは、なんともレトロモダンな用水桶である。でも、ちょっとベタなセンスだ。
明治の郵便局が営業しています。
全国からやってきた女工さんたちが、国の家族に手紙を送った郵便局。明治32年の開業。和洋折衷の建築で、知多の木綿産業の繁栄が偲ばれる。ここだけ明治村といっても通用するかもしれない。昭和41年に廃局となったが、平成に入り、地元の人々の熱意で往時の姿のまま甦った。ちゃんと郵便局として業務も行われている。岡田地区の町おこしのシンボル的存在だ。明治時代の建築物がご近所にある町なんて、そうそうないよね。地元の人たちの努力に頭が下がります。
ハイキングは無理のない予定で。
この日は名鉄電車主宰のハイキングが行われていたと言ったけど、参加者には年輩の方が多く、さらに前日までは秋風を感じる気候だったのに、一転快晴。気温は急上昇。長袖で参加している方も多かった。するとどうなるのか。気分が悪くなるお年寄りもいて、郵便局の前でへばって、名鉄の職員さんに「救急車を呼びましょうか」と聞かれていた。
オイラが、妻の実家でお昼をいただこうと帰路に就くと、救急車がサイレンを鳴らして走ってきた。あのおじいちゃんが運ばれたのだろうか?
しげちゃんは、全国区。
どっしりとしたナマコ壁の土蔵。往時のままの長屋門。この辺りは旧岡田地区のメインストリートで、木綿長者たちの邸宅があった。以前、NHK「ひるどき日本列島」で中継があり、石川ひとみさんもやって来た。その時、町の案内人に選ばれたのが義母の親友の竹内しげ子さん(通称:しげちゃん)。放送では15分程度の出演だったが、何週間も前からNHKのスタッフが打ち合わせにほぼ日算。念入りな段取りの確認。放送後はお疲れ様とハンカチを1枚くれただけだそうだ。さすがNHK、しわい。妻と義母と娘もテレビに映ろうと、当日見学に行ったが、まったく映らなかった。

〈ご案内〉
名古屋駅から名鉄常滑線で約25分、「古見」駅下車。
知多バス「東岡田」行きで「大門前」停下車 ※1時間に2本程度の運行、ご注意。
Visited 01.9.8 (C)YAJIKITA NET

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