禁じられた恋でも・・いい
第7話

「申し訳ありませんでした!」

俺は正座をすると羅門先生に向かい、両手を床に着け頭を下げた。

「あ、兄者!!」

「一甲、お前は申し訳ない事と思っているのかね」

静かに言う羅門先生。

言葉は静かだが、かなり怒っているんだろうな。

顔を上げずに俺はきっぱりと言う。

「はい」

「確かに人の家でする行為では無いな・・・」

ああ、ああ、やはり怒っている。

俺たちの行為に凄く腹を立てているんだ。

「一鍬、お前はどうなんだ?」

突然、側に立っている一鍬に話が振られ、俺は慌てて顔を上げ二人を見た。

少しうなだれ困った顔をして一鍬は、小さな声で答える。

「お、俺もいけない事をしたと思う・・」

ああ、やはり一鍬も俺との関係をいけないと思っているのだな。

うなだれた一鍬はちらりと視線を上げて先生を見る。

上目使いの一鍬・・・くーっ、可愛いぞ。そしてなんて色っぽいんだ。

いかん!そんな事に萌え萌えしてどうするんだ!俺!

今、怒られている最中というのに・・・。

一鍬はそんな俺に気が付かず羅門先生に答え続ける。

「片づけも終わってないのに・・いけないと思う」

そこかーっ!

俺はそのまま、前につんのめって倒れてしまった。

「あ、兄者!?」

お前の心配は・・いけない事とはソコなのか。

俺は床に頭を付けながら、我が弟の天然ぶりに呆れる。

まあ、そこが可愛いのだが・・・。

羅門先生はじっと、そんな一鍬を睨むように見ている。

「終わったら、しても良いのか?一鍬」

そんなハズは無い。

ここは羅門先生宅。そして俺たちは兄弟・・・。

いい訳ない。許されるはずもない・・・。

だが、一鍬の答は・・。

どう答えるか俺はドキドキしながらその答を待つ。

一鍬は少し首をかしげると、ぼそっと答えた。

「いいと・・思う」

流石の俺も驚いた。

俺は立ち上がると一鍬を怒鳴り、こつんと頭をこづいた。

「いい訳ないだろう!」

俺に怒鳴られ、こづかれて一鍬は涙目になる。

「あにじゃ〜っ」

甘い声を出してもダメだ。

「お前は何で怒られているか解らんのか!

俺たちは先生宅でしていたのだぞ。しかも兄弟で・・・」

兄弟・・・

俺はこの言葉に胸が潰れる思いがした。

血の繋がった兄と弟で関係を結んでいるのだ。

俺たち兄弟は・・・獣以下の関係を。

「俺たちは恩師の家でふしだらな行為をしたのだぞ。

解っているのか!兄と弟で・・・だ!」

その関係を求めたのは俺じゃないか。

そもそも一鍬に劣情し、身体を欲したのは俺じゃないか。

何かから言い逃れるように一鍬に怒鳴り散らす・・最低だな一甲。

俺は・・俺は最低の兄者だ。

「ご、ごめんなさい・・兄者」

俺の異変に一鍬が気が付く。

「泣かないで・・兄者」

胸が強く押しつぶされる。切なさと情けなさで・・・。

押しつぶされると涙が溢れてくる。

「大好きだから・・・泣かないで」

優しい一鍬・・・。

こんな俺でも好きだと言ってくれるのか。

ありがとう。

「愛しているから・・・」

愛しているから、それが問題なのだ。

涙を止めるすべも知らず、俺は拳を握りしめ突っ立ったままだ。

「一甲、お前は一鍬の事をどう思っている」

俺は、羅門先生を見た。視界が涙で揺らぐ。

「俺も・・愛してます」

「その関係を後悔してるのか?」

俺は返答に詰まる。

「していない!俺はしてなんかいない!兄者に愛される事を

後悔なんかしてない!」

一鍬が激しく羅門先生に食いつくように答えた。

「一鍬、お前に聞いているのでは無い」

ぴしゃりと言われ一鍬は黙る。

「一甲、お前はどうなんだ」

再び、先生は俺に問いただす。不安そうに一鍬は俺を見つめる。

その瞳に俺は答えねばならぬ。

両の目の涙を拳でぬぐい、大きく息を吸いこんだ。

「俺はこの関係を後悔をしていない。するわけが無い」

俺は一鍬を再び見る。

「一鍬を心から愛しているのだから・・・」

優しく一鍬に微笑むと、愛しい恋人を強く胸に抱きしめた。


第8話に続く


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