禁じられた恋でも・・いい
第8話
「どういう事か解っておるのか」
羅門先生は静かに俺たちに聞いてきた。
俺は一鍬を抱きしめたまま、こくりと頷く。
「覚悟をして生きるつもりだ。
俺は全ての罰と罪を背負って生きて行こうとも
一鍬への気持ちは揺るぎない、変わらない」
俺の胸が熱くなる。そして瞳から涙が止めどなく流れる。
胸がこんなにも苦しい。
恋とはこんなにも苦しいものなのだろうか。
人を愛するというのは、
こんなにも切ないものなのだろうか。
「兄者・・泣かないで」
優しい一鍬は俺の涙を指でそっと拭く。
「兄者に泣かれると俺まで悲しい」
眉ねを寄せ瞳を潤ませ切ない顔で俺を見る。
愛しさが胸から溢れ涙を枯れることなく流れ落ちる。
「兄者・・・俺も一緒に生きるから。
兄者だけ背負わせはしない。俺も一緒にいや、
兄者の分まで背負うから・・・」
一鍬の大きな瞳から俺と同じように涙がこぼれる。
俺たちはどちらともなく互いの身体を抱きしめた。
抱きしめた身体が微かに震える。
互いの魂までも震え共鳴しあう。
俺と一鍬は二人で一人だ。
いつも、今でも、これからも同じ魂を分けた
互いの片割れを合わせ、一つにし生きて行くのだ。
生きていこう・・・一鍬。
俺と共に・・・。
抱き合ったままの俺たちに羅門先生が
深く溜息を吐く。
「まったく・・私が気が付かなかったとでも思っていたのか?お前達の事を」
え?ばれていたのか??
俺と一鍬は泣くのを止めて、驚き互いの顔を見合わせる。
「まったく・・・」
俺は腕の力を緩めた。
抱きついていた一鍬も腕を緩まし解く。
「怒っていますか?先生」
恐る恐る一鍬が振り向きながら先生に聞いた。
怒っているだろう。
こんな事になってしまったのだから。
「ああ、怒っているぞ」
やはり・・・。
「部屋の片づけもロクにせず、戯れて遊んでいるのだからな」
そういうと渋々と部屋の片づけをし始めた。
「何をぼーっと立っているんだ。お前達も片づけろ」
俺と一鍬は意表を突かれぼーっと立ちつくす。
「先生・・俺たちの関係を怒らないのですか?」
俺の答に羅門先生は片づける手を休める事なく言った。
「なぜ、怒るのだ。お前達は本気で愛し合っているのだろう」
そう言うと、羅門先生は屈めた腰を伸ばして笑顔で言う。
「愛しい弟子達がこうやって互いを慈しみ
愛し合っている事は私の幸せでもあるからな」
「先生・・・」
俺は先生の暖かい気持ちに揺れる。
泣きそうな瞳をぐっと堪えると先生の元に駆け寄る。
「俺も片づけます!」
散らかった書物やらを俺はせっせと片し始める。
「お、俺も!」
一鍬も慌てて俺の後に続いて、乱雑してしまった部屋を片づける。
羅門先生は俺たちの頭をコツンと叩いた。
いきなり叩かれて俺たちは驚く。
「いいか、二人の戯れは用事が終わってから、私の家以外でする事。
まったく、私が目のやり場に困るじゃないか」
羅門先生の言葉に俺たちの顔が赤くなる。
「は、はい。気を付けます」
羅門先生は俺たちの方をぽんと叩くと優しく言った。
「幸せになれよ、二人とも」
祝福の言葉を受け、俺たちははいと返事をした。
そう、俺は誓う。
一鍬と生きる。
そして一鍬を幸せにして見せる。
俺の命を賭けても守り通す。
この大切な宝物を・・・。
俺たちは一つの魂なのだから。
愛している、一鍬・・お前だけを。
終わり