愛している・・・でも二人は同じ血が流れる兄と弟
第2話
現場が終わると休む暇も無く、
兄者は俺を人気のいない野原へと連れ出す。
こんな所に釣れてきて、なんだろう?
ちょっとドキドキして淡い期待の俺。
「さあ、一鍬!剣を受け取れ、そして抜け!」
そう言うと、ぽんと俺の前に剣を投げる。
ああー、やっぱり・・・修行かぁ。
「どうした一鍬!ぼーっとして」
ぼーともするよ・・・だって期待が破られたんだもん。
解っていたけれど・・・解っていたけれどぉ。
ただ剣を見つめている俺の前に兄者が近寄る。
「どうした?現場の時といい、今日は変だぞ。
一鍬、体の具合でも悪いのか?」
俺を心配そうに眺める兄者。
至近距離で見て、まじまじ思う。
兄者は格好いいって。
胸のドキドキがまた強くなっていく。顔が熱い。
きっと赤くなっているんだろーな。
「熱でもあるのか?顔が赤いぞ」
やっぱり赤いんだー、・・恥ずかしいよぉ。
兄者は俺の体を包むように優しく抱いてきた。
兄者の匂いが暖かい体温と共に伝わってくる。
俺の鼓動はますます激しくなっていく。
ど、どうしよう。
「修行は中止だ」
優しく俺を抱きしめながら兄者は言う。
「体の具合が悪いならそう言えばいい・・・無理するな」
具合は悪くないんでけれど・・・正直に言うべきか、言わないべきか。
でも、兄者を見てドキドキしているだけなんて告白出来ないよ。
絶対、変に思われちゃうもん。
嫌われたくない・・兄者に。
そう思うとなんだか涙が出てきた。
それを隠す為、顔を伏せて兄者の胸にぎゅっと押しつける。
それが今の俺の精一杯の表現。
兄者への・・・・・。
大丈夫か?と俺を優しく心配しながら
兄者は俺を隠れ家へと連れて行ってくれた。
第3話に続く
戻る