愛している・・・でも二人は同じ血が流れる兄と弟
第1話

俺は働く手を休めて兄者を見る。

工事現場で働く兄者はカッコイイと思う。

行く先々のバイトでもそう思う。

造園の手伝いでも、インストラクターでも、剣道の指導でも、

与えられた服をびしっと着こなしてカッコイイ。

俺なんかいつも服が、だぶついているというのに。

逞しい体には何を着ても似合うのだなと、俺は心底思う。

そんな兄者を見つめている俺のヘルメットを、こつんと兄者が軽く叩いた。

「何をぼーっとしているんだ?一鍬。ほら休憩はまだだぞ、頑張れ」

俺は兄者に怒られて、慌てて仕事に戻ろうとした。

その拍子に近くにあった資材に躓き転ぶ。

忍者の癖にドジった・・・・俺。格好悪いなぁ。

そんな俺に兄者は大丈夫か?と優しく抱き起こしてくれる。

兄者の逞しい腕に捕まれ、俺は嬉しくなる。

同時に胸がどくんどくんと高鳴る。

「気を付けて仕事しろよ。一鍬。」

いけない、兄者に余計な心配させてしまう。

俺は強くうんと返事をしてみせた。

兄者はまた、軽く俺のヘルメットを叩くと

頑張れよと言い残し自分の仕事に戻っていった。

やっぱり兄者はカッコイイ。

俺の胸はまだドキドキと鼓動が止まらず

また資材に躓いたりしていた。


第2話に続く

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