コバン生活事情



初めてコバンに足を踏み入れたときの印象は、なんだか暗い町だというものであった。それは単に雨が降り続いていたせいだけでもないように思える。人口の9割がインディヘナであるためか、町の人々の性格も落ち着いたもので、生い茂った木々もその印象を強めこそすれ、あまり明るい印象はなかった。けれども、教育事務所のある古い建物から町の南に広がる緑豊かな美しい風景を見たときに、ここも悪くないなと思ったことを覚えている。今では中央公園の近くのカフェで、雨に濡れた町を眺めることや丘の上にあるカルバリオ教会からの眺めなど、お気に入りの景色が増えるに従って、この町に対する愛着も増してきている。
この町に来てすぐに、用意されているはずの家が、書類上の面だけ記載されているに過ぎないことがわかった。家主の承諾があったわけではなく、また家賃や環境の面で隊員に許されている範囲を超えている家が提示されていたのである。したがって最初の仕事はまず、家探しであった。家が見つかるまではホテル住まい。知り合いがいるわけでもない町に、ただぽんと放り込まれたような気持ちを抱いた。
幸いホテル暮らしは4日間で住み、職場のごく近所の家庭にお世話になることになった。部屋は小さく、また薄暗く、気が滅入るような印象を抱いたが、下宿のお母さんの第一印象がよかったのと、これ以上のホテル住まいは耐えられなかったのとで、お世話になることにした。住めば都とはよく言ったもので、今のところ、これといって不満はない。職場まで歩いて5分という地の利と、家族との関係が良好であることがなによりである。


生活事情(コバン)
【食生活】
任地であるコバンでは下宿しているため、食生活に関しては下宿先に大きく依存している。朝食は基本的にフリホーレス(黒豆の塩煮)とトルティーヤ(トウモロコシの粉を練って焼いたもの)という典型的なグァテマラ・スタイルのもので、日によってこれにプラタノス・フリート(揚げバナナ)やスクランブル・エッグがつく。
昼食は日によって大きくメニューが異なる。たいてい牛肉か鶏肉を味付けして焼いたものが多い。この国では豚肉はあまり食べず、豚肉が好物である私には少し物足りなく思う。ただときおり付け合わせに炒めた米がつくのはうれしい。
夜は昼に比べてあっさりとすませる。朝食と似たようなメニューであることも多い。野菜をあまり食べないとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。特に黄緑色野菜がほとんどなく、今後自炊する必要がでてくるかもしれない。
思った以上にコバンは物資の豊富な都市であり、食料品や日用品は二軒あるスーパーマーケット(スーペル・メルカド)でだいたい入手できる。日本のものとは多少味が違うが醤油などもふつうに売られている。市場(メルカド)もあり、食料品などはこちらで購入する方が安い。
 外食事情に関しては非常に恵まれているといっていい。観光客が多いこともあるが、ティピコ(グァテマラ料理)はもちろん中華料理、イタリア料理、ドイツ料理などもおいしい店が多くある。

【その他】
TVやオーディオ製品などの家電製品もほとんどのものは入手可能である。さすがにパソコンの部品等は首都に行かなければならないが、フロッピーディスケットなどはここでも入手できる。
ちなみに当地では近年パソコンの普及が著しいが、電源が不安定なため、しばしば故障する。そのため電源の安定化装置が必須である。これは首都のパソコンショップで購入できる。電圧自体は110Vで日本とさして変わらないため、変圧器はいらない場合が多い。
インターネットを利用した通信は電話回線の状態に依るが、接続可能である。首都には有料プロバイダーがいくつか存在しているし、無料プロバイダーもある。
また、私は趣味でギターを弾くが、スティール弦のアコースティック・ギターをコバンの楽器店で購入することができた。値切って600Q(8,000円弱)である。首都でも大部分がナイロン弦のクラシック・ギターなので、入手は容易ではなく、めずらしく感じた。ちなみにクラシック・ギターは、首都で500Q程度である。
逆に入手の難しいものは書籍である。コバンには本屋はなく、首都に行かなければならない。