ベッショ・ベッソと表音する地名の展開

此処までほんの付録のつもりで石神・石塚と言う地名の分布を書きました。
然し此の侭終えてしまうのも中途半端な為,石神・石塚を結ぶ地名としてベッショ・ベッソと言う地名の分布を考える事にいたします。
往古尾張国と言ってもさして広い版図を持つて居た訳ではありません。石塚と言う地名所在地の版図と重なっていたのではないのでしょうか。即ち木曽川右岸より庄内川左岸における地域であります。他方三河国も又矢作川右岸に始まる極めて狭い地域で有ったものとおもわれます。
そうしてこの二つの地域に挟まれるように空白域が存在しています。
その領域は、庄内川右岸より矢作川左岸に至る地域と知多半島をも含む区域であります。
それを拡大したのが次ぎのマップであります。

凡例 ● 石塚    ● 石神   
20m等高線
使用ソフト カシミール

ではこの地域をどのように理解したら宜しいのでしょうか。両者の始原が同時代とは考え難いものであり、石塚の方が後代で有ったものと考えます。そして順次、先文化の遺産である石神を駆逐石塚にかわります。この石塚と言う地名を持った集団はある時期矢作川左岸にまで達した事でしょう。然し彼我の攻防ただならない為二、三の例外を除き庄内川左岸に迄後退この地域を防衛線とし温存しました。その証拠は!! 遥か古代縄文末期と弥生初期の攻防期にまで遡ります。

愛知県に於ける縄文・弥生各期における遺跡分布地名表

縄文遺跡

弥生遺跡

縄文遺跡

弥生遺跡

設楽町

130

豊橋市

45

東区

2

昭和区

4

足助町

83

一宮市

29

千種区

2

熱田区

4

稲武町

81

大口町

28

三好町

2

清洲町

4

豊橋市

58

新城市

28

富山村

2

扶桑町

4

安城市

54

岡崎市

25

渥美町

1

小牧市

3

東栄町

51

安城市

24

稲沢市

1

守山区

3

豊田市

43

西尾市

24

犬山市

1

平和町

3

旭町

39

豊川市

23

御津町

1

甚目寺町

3

鳳来町

35

岩倉市

20

一色町

1

碧南市

3

豊根村

33

一宮町

19

熱田区

1

春日村

2

新城市

27

南区

16

清洲町

1

尾張旭市

2

作手村

25

渥美町

16

春日村

1

祖父江町

2

刈谷市

24

瑞穂区

13

赤羽根町

1

佐屋町

2

津具村

23

師勝町

13

名東区

1

足助町

2

岡崎市

18

美和町

13

新川町

1

作手村

2

瀬戸市

15

豊田市

13

幸田町

1

赤羽根町

2

下山村

15

田原町

12

額田町

1

東区

1

小原村

13

緑区

11

美和町

0

豊明市

1

西尾市

12

稲沢市

11

北区

0

木曽川町

1

緑区

12

犬山市

9

西春町

0

下山村

1

豊川市

11

北区

9

津島市

0

稲武町

1

一宮町

10

刈谷市

9

吉良町

0

千種区

0

岩倉市

8

小坂井町

9

西区

0

名東区

0

南区

8

中区

8

扶桑町

0

新川町

0

藤岡町

7

江南市

8

平和町

0

東郷町

0

大口町

6

御津町

7

甚目寺町

0

日進市

0

瑞穂区

6

尾西市

6

碧南市

0

天白区

0

蒲郡市

6

西春町

6

尾張旭市

0

長久手町

0

田原町

5

津島市

6

祖父江町

0

西枇杷島町

0

小坂井町

5

知立市

6

佐屋町

0

豊山町

0

中区

5

吉良町

6

豊明市

0

蟹江町

0

一宮市

4

東栄町

6

木曽川町

0

弥富町

0

江南市

4

鳳来町

6

東郷町

0

立田村

0

知立市

4

蒲郡市

6

日進市

0

八開村

0

昭和区

4

春日井市

5

天白区

0

旭町

0

小牧市

4

西区

5

長久手町

0

小原村

0

守山区

4

佐織町

5

西枇杷島町

0

藤岡町

0

師勝町

3

一色町

5

豊山町

0

三好町

0

尾西市

3

設楽町

5

蟹江町

0

幸田町

0

音羽町

3

音羽町

5

弥富町

0

額田町

0

春日井市

2

瀬戸市

4

立田村

0

豊根村

0

八開村

0

津具村

0

佐織町

0

富山村

0

平均

11

 

7

この地名表中赤・黄各色で塗り分けてある市町村は夫々時代の平均値以上遺跡が存在している市町村であります。
これを地図上に表現しますと下記マップの様になります。

此処に表示されたゼロ市町村域こそ縄文・弥生の攻防が有った時期、最大の緊張地域だったのであります。
「(縄文)晩期の中部地方西方一帯は、そうした新文化(弥生)と対面する最前線に当たっていたのである。つまり新しい原理思想の東日本文化圏への進出を阻止する防波堤でもあったと言う訳である」角川書店刊・古代の日本・中部F・p66
東方の縄文文化は一挙に消滅し、弥生化したと言われています。然しそれ(弥生の波及)の波及は基本的には海抜20Mを境としてそこより低地に起きた事だと考えています。その攻防の歴史的遺跡として環濠集落の存在があります
この環濠集落の成立要因は大別すると二に分ける事ができます。1・弥生文化対縄文文化による土地・収穫物争奪に関わる係争 2・弥生同士による土地、収穫物争奪による係争であります。
愛知県に於ける環濠集落を20m等高線地形図にプロットしますと下図の様になります。

(注)白地図描画の地域は全て海抜20m以下の地域です。
この特徴は次の点を指摘する事ができます。
●愛知県内に於ける初期環濠集落である二地域を除いて他は殆んど20m等高線上に存在しています。
之は土地の争奪と言うより、弥生人が一旦標高の高い所へ駆逐した先住民(即ち縄文人)がさいど侵攻した土地に入るのを防禦する為築造したものとかんがえます。そしてゼロ地域はその地域が防衛線として存在した為環濠集落は築造されませんでした。

このゼロ地域が愛知県の民俗形成上大きなポイントになります

此処に愛知県全域に渉ッて愛知県教育委員会が行った民俗に関わる調査の地名表があります。この調査は広範な民俗行事にわたっていますが、その内山ノ神講の残っている地名表と対比してみます。

愛知民俗地図山の講地名表

 

 

 

 

愛知郡長久手町大草

89

豊田市上郷町

 2

日進市赤池

 94

西加茂郡小原村北

 3

愛知郡東郷町傍示本

 95

西加茂郡小原村大洞

 4

豊明市沓掛町下高根

100

東加茂郡足助町大字葛沢

 5

瀬戸市三沢町中水野

102

東加茂郡下山村大字東大沼

 6

瀬戸市赤津町

103

東加茂郡下山村大字大林

 7

瀬戸市上半田川町

112

北設楽郡東栄町大字振草小林

 8

尾張旭市稲葉町稲葉

113

北設楽郡東栄町大字月字東大平

13

春日井市西尾町

114

北設楽郡東栄町大字中設楽字柿野

16

小牧市大字大山

115

北設楽郡富山村大字下栃

21

丹羽郡大口町大字小口

116

北設楽郡津具村字能知

22

江南市安良町

117

北設楽郡津具村字行人原

23

犬山市大字今井

118

北設楽郡豊根村大字坂宇場

24

犬山市大字池野

119

北設楽郡豊根村大字上黒川字兎鹿島

25

丹羽郡扶桑町大字南山名

120

北設楽郡稲武町大字夏焼

38

海部郡甚目寺町大字上萱津

121

北設楽郡稲武町大字川手

39

海部郡大治町大字馬島

122

北設楽郡稲武町大字野入

47

半田市岩滑中町岩滑

123

新城市大字市川

48

半田市板山町板山

124

新城市大字豊島定池

50

大府市横根町

125

新城市中宇利

51

知多郡東浦町大字生路

126

南設楽郡鳳来町大字愛郷

52

常滑市金山

127

南設楽郡鳳来町大字門谷

56

知多市佐市里字西谷

128

南設楽郡鳳来町大字能登瀬

59

知多郡美浜町大字豊丘

129

南設楽郡宝来町大字竹の輪

61

知多郡南知多町大字内海字内福寺

131

南設楽郡作手村大字保永

74

刈谷市泉田町

140

宝飯郡音羽町大字萩

75

知立市谷田町

146

渥美郡赤羽根町大字越戸

山の講分布地図

 

別所地名表

北設楽郡東栄町本郷

豊田市猿投町

豊田市加納町

西加茂郡藤岡町西中山

安城市東別所・西別所

豊橋市石巻本町

岡崎市本宿町

西尾市室町

東海市大田町

名古屋市緑区大高町

大府市共和町

知多郡武豊町

知多郡南知多町内海

犬山市犬山

犬山市富岡

この地名表は愛知県内に於けるベッショ・ベッソと言う小字名を持つ地名表であります。これだけでも大凡の推察が出来ますがマップにプロットしてみます。



凡例 ● ベッショ・ベッソ
ベッショ・ベッソと言う地名が知多半島を含む空白域に多く存在しているのがわかります。

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