1998年11月29日のはまり音楽


ブルックナー交響曲第6番、チェリビダッケとティントナー

今日は勉強のバックグラウンドミュージックがブルックナーづいていました。まずクナの5番改訂版から

延々とブルックナー。クナの5番はスケルツォが凄く躍動感あって面白かったです。

で、最終的に落ち着いたのが6番だったので。今日は6番で行きます。

この曲、Naxosの紹介にも「地味な名曲を人生の伴侶に・・・」と言ったトーンで書かれてしまう、

ブルックナーの作品の中ではとてもとても影が薄く、「クラシック名盤&裏名盤ガイド」や「クラシックの名曲・

名盤」等の本でも見事に無視されています(涙)専門のホームページもおそらくないです。

(と言っても作るほどは筆者は時間も財力もないのですが(^^;))

が、しかし、けれども、この曲、僕はブルックナーの中でも1,2を争う名曲ではないかと思うのです。

他の曲(3番以降)をわざと悪く書くならば(本当は好きなのですが)

3,4番:前時代のヴァーグナーなどの影響が大きすぎて、饒舌すぎる。

5番:ぎしぎしやかましい。音楽が堅すぎ。

7番:終楽章が尻軽すぎ。またはそれにあわせるなら第1,2楽章がくどすぎ。

8番:でかすぎ。

9番:魂籠もりすぎて息が詰まる。終楽章ないし。

となります。(ぅぅうぅ、他の交響曲のみなさんごめんなさい。)

その点6番はすでに磨き上げられた無駄のない手法で、無神経な弟子の意見も入っておらず

ブルックナー本人の着想が十全に生かされており、(本人ももっとも赤裸々な音楽と呼んでおります。)

さらに作曲中機嫌良かったので主題そのものが楽しいです。第1楽章なぞまるでアラビアのロレンスです。

更にブルックナーならでは心にしみいるアダージョもあります。

また全体に短めなので、ブルックナーが長すぎると思う人にも気楽に楽しめます。(っていいつつ1時間近いですが)

ですからブルックナーファンのみなさん、6番をもっと聞きましょう。

今日聞いていたのはセルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル(EMI)とゲオルグ・ティントナー指揮

ニュージーランド交響楽団(Naxos)です。チェリの方は(本来チェリ嫌いと思われる。)有名評論家宇野氏が

なんと誉めてしまった、と言う演奏です。チェリとしては早めのテンポで、粘りまくるフレージングも

時間が凍り付いたようなところもあまりなく、「チェリでなければ」感は薄い演奏ですが、逆に言うと

構えないでも聞き易く、「ブルックナーの交響曲は重厚でなければならない。」と思っている方には

6番の導入にぴったりと言えましょう。その意味では6番がまるで5番にでも化けたかのような演奏です。

蝋人形がトロトロ溶けていくようなここだけはチェリ節のちょっと効いたアダージョは好きです。

が、今日の僕にはちょっとくどく感じたのでここまでといたしまして、口直しに聞き直したティントナー行きます。

ティントナーは(8番が手に入らない(涙))通常の演奏よりはかなりゆったりしたテンポでやってます。

(チェリよりは速いです(笑))がこのゆったり感&びしびしと攻め込まない感じが特に第1楽章で浮遊感を

生んでおり、僕はこの演奏聞くと果てしない砂漠を馬に乗って疾走している光景を思い浮かべてしまうのです。

(ミスはありますが、まぁそこは全体の流れ優先と言うことで。そういう気分になるのも6番のいい点です。)

アダージョの切ない音楽も5番ではムードミュージックのようだ、と書かれてましたが、6番では優しい歌に

なっており、月の浮かぶ庭園で白いドレスを着た乙女と何も言わずに静かに座っているような感じです。

スケルツォは炸裂するところまで行きません。が、これは妙に軽くて可愛い感じさえ受けてしまうトリオの

第5交響曲のメインテーマとのバランスを考えると、悪くない選択です。

フィナーレは再び疾走感が帰ってきます。この演奏だと走り続けるうちにどんどん突っ走ってついに

姿が見えなくなってしまう、と言った風情で、西部劇のヒーローもののラストみたいです。

他のブルックナーの交響曲のように「終わるぞ、終わるんだ、勝利したんだ、勝ったんだ、エンディングだ。」

と言う風情ではやらないのが(7番は「終わるよーん、よーん、よーん。」という感じですが。)物足りなく感じるかも

しれませんが、これは逆にバルトークやアイヴスやライヒのような新しさをブルックナーがすでに

やっていた、と言うことで良いんじゃないでしょうか。慣れてくると一体化して疾走する終楽章全体のマスは

緩急の繰り返しの明瞭な他の交響曲のフィナーレとは違ってまた味があります。

元々疾走派のヴァントも欲しいです。

最後にもう一言、みなさん、ブルックナーの6番ももっと推しましょう。良い曲ですよ。

 

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