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魔王の世界征服日記
ランキング用プロモーションそにょ1 ユーカ&ミチノリ


「前回(第1回)は惨憺たるものだった」
 ユーカは一票も入らなかった成績を見て真面目に頷いている。
 なお人気投票の結果は新聞『まおう新聞』『サッポロ=アドバタイザー』とテレビで堂々発表される。
 テレビでは何故か回転する的を弓矢で射るという不思議な演出が成されるのだが、もしかして人気投票そのものは嘘なのか?
「いや、嘘ではなかろう。もし50音が書き込まれた円盤を弓で射るなら、それは訳の分からない文字列がでてきたって不思議ではない」
 むう。
 ユーカはサッポロ=アドバタイザーを投げ捨てると、ため息をついて振り向いた。
 そこにはミチノリが居る。
 なお今回二人とも未得票。
「なぁにぃ」
「こらこら。我々がもっと得票、いわば今回勝つためにはどうすればいいかだ」
 相変わらずのんびり、にこにこしているミチノリにため息を混ぜて言う。
「えー。ゆぅちゃぁん、それは判ってることぉだよぉ」
 こくり、と小首を傾げる。
「何を言う。第1部ではメインに焦点を当てられたフユ将軍を見てみろ。何故第2部の真の主人公たる我々になぜ一票も入らない」
 魔術師の主張。
 彼女は胸を張って、自分の正当性を主張する。
「まあぁぁ仕方ぁなぁいよねぇ。それ以前に誰も気づいていないよ」
「最初に登場しているのにか!」
 ふう、とあからさまにため息を付いたミチノリは、相変わらず邪気のない微笑みを浮かべたまま言う。
「そもぉそもぉ、『関わりますよぉ』ってぇ、表だぁって登場ねぇ、してぇおいてぇ大仰に宣伝してもねぇ」
 原因は何だ。
「原因は――やっぱり可愛くないんだミチノリ!」
「なんでそぉなるのぉ」
 いや、確かにミチノリに問題があるかも知れない。
 しかしそれはミチノリの問題ではなくて、ユーカ自身にも言える事。
 元々この二人は夫婦である。
 これ以上進展したら破局するかしかない。大抵、ここで落ち着くものだ。
「むぅ――しかし」
 確かにメンバー中最も年増(まお達人間ではないものを除いて、その外観)である。
「しかしこれ以上幼かったら犯罪ではないか!」
「もぉお、ゆぅちゃんむちゃくちゃだよぉ。もしかしてそんなにショックだったぁ?」
 ぐ。
 鼻と息を同時につままれたような声で応えて鼻白む。
「じゃあどうしろと」
「簡単だよぉ。ボクらにしか出来ない何かをやればぁ、それだけでもう得票率アップあっぷぅ」
 溺れてるみたいに声を出して、ころころ笑いながら言う。
「ふむ。具体的には」
「ふふん」
 少しだけ自慢げに、胸を小さく張って猫みたいに口を歪める。
 これは結構可愛いかもしれない。
「いちゃつけばどうかなぁ」
「それはお前がやりたいだけだろう」
 むす、と眉を寄せて彼を睨み付ける。
 ちっちっち、と顔の前で人差し指を立てて揺らすミチノリ。何となく、ディフォルメしてるみたいに見えるのがおかしい。
 気が付いた。
 そう言えば彼、今日はあの大きな手袋をしていない。
「ゆぅちゃぁんだって。それにぃ、他のメンバーだったら出来ないとこまでできるよぉ」
 にたぁ。
 にやにやという笑いなのだが、どうしてもそれが嫌味に見えないのは彼の性格所以か。
「……言っておくが、ここの鯖はのんあだると・おんりぃ☆だぞ」
 がーん。
「がーんがーんがーんがーん
「しかしその公約は大きいな。多分新しい読者層をゲットできるんじゃないか」
 ふむ、と腕を組んで頭を傾けるユーカの頬が少し赤い。
「でぇもぉ」
「大丈夫だ。鯖を借りる事もできるし、別に配る方法は幾らだってある」
 そう言って、どこからか取り出したのか、旅行のパンフや観光ガイドをぱらぱらとめくり始めるユーカ。
「……なぁにしてぇんのぉ〜」
「そうと決まったら色々考える事はあるだろう」
 まだ決まっても居ないのに、俄然やる気である。
 というかヤル気と書いた方がより精確かも知れないが。
「なぁんだか最近ゆぅぅちゃぁんがおかしぃよぉ」
 確かに。
 やっぱり欲求不満が原因ではないかと私は考えるがどうか。
「んー。みっちゃんには判らないけどぉ。面白いなら良ぃよぉねぇ」
 くりん、と画面に向き直ってにっこりわらうと、両手の人差し指を立ててくりん、と同じ方向に回す。
「もしー、どっちかがトップになったらぁ、そぉいぅことでいいよねぇ〜」
 良いんだろうか。
 何だか激しく後悔しそうな気がするが。
「勿論だミチノリ。今度こそ人気トップを目指すぞ」
「はぁい」
 何がどう目指すのか。
 邪な票を狙って二人は暗躍を始めるのだった。
「ハコネなんてどうだハコネ」
「んー、みっちゃんはあんまりー、寒いところぉいやだなぁ」


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