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「リアリティと小説のための武器知識」

「リアリティと小説のための武器知識」

 第3回 火砲

 ※用法に関する注意

 アクションや銃撃戦が好きで、小説にそういうシーンを持ち込みたい。
 でも、ままならない方々へ捧げる『正しさ』と『面白さ』、これを主な目的として書きました。
 尚、本当の人殺しの方法と映画で見るようなアクションでは全く動きは違います。
 たとえるなら、プロレスと柔術、又は打撃技と関節技の差というのでしょうか。
 決してこれが絶対正しいとか思わないでください。

 アクションの華、銃撃戦。
 映画でよく見かけるシーンは、実際とは違う事が多い。
 絵として美しいシーンを創造するには、しかし実際を知っておく必要がある。
 なかなか普通に生活していてはこれが手に入らないことが多いので、進呈して進ぜよう。
                         (参考物件:オーム社「武器」)

 まず持って必要ないと思うが、口径の大きな砲について語ろうと思う。
 現在ある定義では、『口径20mmを越えるもの』となっている。
 そのため、20mm機関『砲』と呼ばれる。
 構造が単純で、砲弾が大きくなるために取り扱いの面から銃とは若干異なるのが特徴である。
 そこで、代表的な区分から、これを説明しようと思う。

■ 迫撃砲
  俗に『迫』と呼ばれる最も単純な構造をした砲のこと。
  筒と脚、衝撃を吸収する台から構成される。
  前回に語った撃針が筒の底にあり、それが弾の後ろにある雷管を叩くことで発射される。
  砲口から弾を装填する。砲によるが、装填後すぐに発射される。
  弾道は目に見えて放物線を描く。射程距離は短い。
  良く極左あたりが首相官邸にぶち込むのに使われる。

■ 野戦砲
  射程が長く、射撃する角度が迫程も高くない砲である。世界では取り回しのよさから155mmが最も多い。
  203mm、155mm、120mm等口径はかなり大きい。
  通常は弾幕を形成し、対人もしくは軽装甲目標を攻撃する。
  弾丸(炸薬が中に入っている)、装薬と別々に装填する。
  射程距離は30km以上。
  代表的なものに『ガサラギ』で出たFH-70がある。

■ 加農砲
  キャノン(cannon)とはこれを指して言う。俗に言う大砲。
  対人・対装甲目標に対して射撃する。戦車砲もこれに含む。
  現在では120mm、125mm戦車砲が最もポピュラーである。

■ 機関砲
  20mm、30mm、35mm等、今まで述べた砲弾より小さな口径のものである。
  文字通り秒間数百という弾幕を形成し、対空兵器として使用される。
  対地兵器としても薄い装甲を持つ目標には使用される。

■ 無反動砲
  反動を逃がすために羽や煙を吐き出す砲のこと。
  バックファイアが大きく、かなり使用に制限を受ける。

■ ロケット砲
  弾を打ち出す反動が以外に少なく、弾が火を噴いて飛んでいくものをいう。
  余談になるが、発射直後は砲との摩擦のために反動よりも『前に引きずる』力の方がが大きくかかる。
  ミサイルとの違いは誘導しないことである。
  また、米国のMLRSは湾岸戦争当時に『鉄の雨を降らせる』といって畏れられたという。

 次にこれらの弾薬について。
◇化学エネルギー系列

■ HE弾
  High Explosive(高性能爆薬)を冠するこれは、要するに爆弾。
  爆弾ほど多くの炸薬を詰め込めないので爆弾程の威力はない。
  が、充分人間を殺傷できる。
  155mmでおよそ60kg、203mmで90kgの重さを持つ。

■ HEP(HESH)弾
  p=プラスチック(米国)、SH=スカッシュヘッド(英国)
  これは可塑性(粘土状)爆薬を使用した弾頭であり、対硬目標用の加農砲弾。
  ホプキンソン効果(空手の『透し』とほぼ同じ)により装甲の裏側を剥離させる。
  現在のMBTには効果がない。
  主流の装甲であるラミネート(多重装甲:使徒並の一万二千枚の、ではないが)アーマーやスペースド(中空)アーマーが原因だ。
  衝撃波はそれぞれの物質中を進む音波の合成面(干渉面)である。
  だから波の性質上密度の違う界面で衝撃波は屈折、反射をする。
  このため本来の効果は『単一の』装甲でなければ発揮できない。

■ HEAT弾
  AT=アンチタンク
  成形炸薬による『熱せられた金属ジェット』による貫徹力を持つ。
  炸薬にもよるが直径の3〜5倍までの鉄板を貫く。


◇質量エネルギー弾系列
■ AP弾
  Armor piercing=装甲を貫く、の意味。
  徹甲弾であり、弾芯と呼ばれる密度の高い金属を持つ弾丸。
  曲面装甲の登場により効果が薄れたが、未だに最も基本的なもの。
■ APDS弾
  DS=ディスカーディングサボット、帽子を脱ぐ、の意味。
  サボットと呼ばれる『筒』に包まれた弾丸。
  弾心『だけが』飛んでいく。
  発射圧力を効果的に受けるためにサボットにより『表面積』を増やしている。
  だが命中時の面積が小さい方が良いため、発射直後風圧を受け分解飛散する。
■ APDSFS(FSDS)弾
  FS=フィンスタビライズド
  最近の弾丸はこれが主流。アメリカのM1A1辺りの劣化ウラン弾が有名。
  弾芯には劣化ウラン等密度の高いものを使用。
  日本ではタングステンを使っている。だが劣化ウランには劣る。
  というのも、劣化ウラン弾は粉塵による燃焼効果も期待できるからである。
  物はAPDSに近い。違いは断面積×長さの比が長く貫徹量はこちらの方が大きいと言うこと。
  そのために矢と同じで羽根(フィン)がついている。
  アメリカではミサイルより効果的だとして、この弾丸を撃つ『銛撃ち』ランチャーを開発したとかしないとか。

 大凡大型兵器の弾頭はこんなもの。まぁ他にも曳光弾系列で結構複雑にあるが、これは考えなくて良し。
 これだけ覚えていれば充分である。
 ちなみにロケットや無反動砲の弾頭には化学エネルギー弾を使用するのが普通。
 DSは危険だからね。まぁ他にも理由はあるんだけど…

 余談として、HEATに使われる薬剤にRDXやComp.3というものがあるが。
 古い奴(TOW-MISSILE)に使われる薬剤が「HMX」というらしい。

 以上で各種銃器についての基礎的な知識を終了する。
 協力協賛:水方サマ(^^ゞ ありがとうございました。


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