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「リアリティと小説のための武器知識」

  第2回 拳銃・小銃その1

 ※用法に関する注意

 アクションや銃撃戦が好きで、小説にそういうシーンを持ち込みたい。
 でも、ままならない方々へ捧げる『正しさ』と『面白さ』、これを主な目的として書きました。
 尚、本当の人殺しの方法と映画で見るようなアクションでは全く動きは違います。
 たとえるなら、プロレスと柔術、又は打撃技と関節技の差というのでしょうか。
 決してこれが絶対正しいとか思わないでください。
 

 アクションの華、銃撃戦。
 映画でよく見かけるシーンは、実際とは違う事が多い。
 絵として美しいシーンを創造するには、しかし実際を知っておく必要がある。
 なかなか普通に生活していてはこれが手に入らないことが多いので、進呈して進ぜよう。
                         (参考物件:オーム社「武器」)

 まず、いくつか用語を説明する。
☆マズル
 銃口のこと。マズルファイア(muzzle fire)と言えば銃口から吹く火のことで、マズルフラッシュ(muzzle flash)ともいう。
☆ジャム
 弾詰まりのこと。俗に作動不良全般のこと。日本語では『ジャムる』とも使う。
ちなみに原因が銃にある場合を指して言う。

☆リボルバー revolver

「輪胴式」とか「回転式」と日本語訳される。レンコン状の弾倉(薬室兼用)に銃弾を入れる事で、連発ができるようになった銃のこと。これができる前の銃器はほとんどが単発銃だった。現在でこそ拳銃ばかりだが、西部劇の時代にはライフルもあった。

☆オートマチック automatic

「自動拳銃」と訳されることが多い。本来は撃ち手が余分な動作をしなくても自動的(automatic)に弾丸を射撃可能状態にしてくれる銃のこと。引き金をいったん離さないと次の弾丸が撃てないのをセミオート(semi-automatic) 、引き金を引き続けている限り弾丸が撃てるのをフルオート(full-automatic)と言う。
 なお、アメリカで「オート(autofire)」と言えばフルオートを指す。
 余談だが、ごく一部の例外を除き、リボルバーとオートマチックの弾丸は同じ口径でも互換性が無い。


☆シングルアクション、ダブルアクション
 ダブルアクションは引き金を引くと『撃鉄起こし→撃発』の二つのアクションを起こす撃ち方で、シングルアクションは引き金を引くと『撃発』する(もちろんその前に撃鉄を起こしておかなければならないのだが)だけの一つのアクションしか行わない撃ち方。
 良く逆に勘違いされることがある。ギミックによりダブルアクション専用銃もある。
☆ストッピング・パワー stopping power

 マンストッピング・パワー(man-stopping power)とも言う。弾丸が当たった事で銃弾が体内に残る際の破壊力を指すのだが、当たった目標の動きを止められるパワーと読み替えても、用法上そんなに間違いではないだろう。
 良く誤解されるが、口径の大きさとストッピングパワーに直接の関係はない。むしろ、銃弾の形のほうがより深く関係する。
 代表的にはダムダム弾(十字の切り込みを弾丸に入れたもの)、ホローポイント(中央がへこんでいるもの)などは命中した際に弾丸が潰れやすくなっていて、肉体の損傷が激しくなる。
 逆に徹甲弾のように質量で貫通させるものは(相当口径が大きければ無論言うまでもないが)抜けてしまうのでストッピングパワーに欠けると言えよう。

 他、パウダー→火薬、カート(ケース)→薬夾、ハンマー→撃鉄、トリガー→引き金、ピン→撃針、アモ→弾薬、ブレット→弾丸と言い換えられるよう覚えておこう。

■ 拳銃
 ピストルとも言う、通常1〜2kgの鉄の塊である。
 オートとレボルバの2種類があり、『人を殺傷する能力を持っている』ものであれば銃刀法に抵触する。
 代表的なもの、有名なものを以下にあげる。

◇ 38口径(9mm)

 名前の由来は、口径が0.38インチ(約9.65mm)であることから。なお「xx口径」と言うのはアメリカの慣習である。実はこれはインチの何分の一、という計算であるためこのような値を示す。(12.7mm→50口径、7.62mm→30口径、5.56mm→22口径)つまり1インチの100分の幾つ、である。
 ニューナンブ、チーフなどのスナブノーズ(短銃身)のレボルバはこの口径であることが多い。
 現在の主流は.38スペシャル(.38Spl)や.38スペシャル+パワー(.38Spl+P)だ。
 弾丸にもよるが、普通の車ならば車体に穴を開け、数メートルの距離なら人間二人を貫通するだけのパワーを持つ。特に日本の警察が使う銃弾は貫通力に優れているらしい。

◇ 9mmパラベラム弾
 口径が9mmの、別称ルガー弾を使う銃。
 軍用銃は最近はこれが主流。ベレッタM92とか映画で出る銃はこれがほとんど。
 というのも、軍が使うだけに流通しやすい(量が多い)らしいのだ。
 まぁ、拳銃が出たらこれと思って間違いない。
 代表はM92F、シグマ40、グロック、USP、SIG、SIG-SAUER等。
 パウダーが多いためガスによる火傷を防ぐ構造を持つ。
 ショートリコイルがほとんど。変わったものにはあのコナミの某ゾンビゲーで初期に装備されているあれ(ステアーGB)である。
 ショートリコイルではなくガス圧式の作動方式を持つ。

◇ マグナム
 俗称であるが、.375、.44、424カスール等口径の大きいものを指して言う。レボルバではS&W・M29であろう。
 オートマグと言う銃がオートでは有名。
 色々曰くのある銃で、『オートジャム』とまで言われた初期のマグナムオートである。
 パウダーが多くストッピングパワーが大きい。
 この口径では、生半可な防弾チョッキは貫通してしまうし、よしんば止めてもショックで気絶/死亡してしまうかもしれない。
 代表格はオートマグ、パイソン、デザートイーグル44(レボルバの弾を使うことができる)、クーガー(ベレッタM9シリーズ)。
 ちなみにこのクラスで使いものになる最大の口径は50AE、デザートイーグルである。
 ファイアボールと呼ばれるマズルファイア、爆音のような銃声、『ハンドキャノン』の呼び名は伊達ではない。
 ちなみに2kg以上あり、とても日本人に撃てる代物ではない。
(ガス圧式の閉鎖機構を備えたデザートイーグルは反動もマイルドで、撃てるらしい…)

 拳銃ではこれだけの知識があれば十分である。
 少し特殊なものを次にあげる。

◇ FiveSeven
 FN社の出した『小口径弾』を吐き出す銃。5.7mmという専用弾を使用する。
 こう聞くとストッピングパワーがないように思われるが、実際その通りである。
 本来の構想が『防弾チョッキを貫く』という考えの基に作られたもので、パウダー量も多い。
 口径が大きくなればなるほど破壊力が上がるが、貫通しにくくなる。
 縫い針と5寸釘ではどっちが刺しやすいか言うまでもないだろう。
 そしていったん体内に入ると、今度は弾丸の小ささから抵抗力に負けて貫通しない。
 つまり、後ろに関係ない人がいても被害が及びにくいのだ。対テロ用にFN社が売り込み攻勢をかけているのもむべなるかな。

 公称データであるが、スペクトラ製のボディアーマーでも抜けると言われている。

◇ ベクター
 丸みのあるフォルムはSFの銃を思わせる、『ガス利用』ハンドガンである。
 珍しいだけであまり性能は良くないので、これだけ。
 ガスが詰まってしまうのですぐジャムるらしい。

■ 小銃(ライフル)
 3〜4Kgの1m程のサイズの銃。通常軍用で、コルトのM16、M4やHKのG-3等が存在する。
 アメリカのガンショップではライセンスによってフルオートで撃てる銃の販売が制限されている。無論、ガンショップでも『不法所持』になる場合がある。
 日本でも猟銃に限り、免許があれば購入できる。
 弾種による区別はないが、西側諸国では7.62mm、5.56mm(NATO弾)が通常である。
 余談だが、スプリガンの優は64式小銃、吉乃がFA-MASを持っていて『豆鉄砲』扱いしていた。
 それだけ差があると理解して頂いて結構。
 代表格はM16、M4、ステアー、FA-MAS。

■ マシンガン
 マシンガン(機関銃)はライフル弾を使うフルオートのみの銃器であるのに対し、サブマシンガンは拳銃弾を使用するフルオートのみの銃である、という区別は最近されていない。
 サブマシンガンでも最近はライフル弾を利用するものも存在する。サブ(補助)の言葉通り、サイズの小さい機関銃である。
 ライフル(小銃)でもフルオートもしくはバーストがあるものもあるが、これはマシンガンとは言わない。

◇ 拳銃弾を使用するもの(通常サブマシンガン)
 イングラム、UZY、マシンピストル(ベレッタM93R、グロック18等)類。

◇ ライフル弾を使用するもの
 所謂機関銃。M60等。
 ベルト(ランボーのような)により給弾する。
 自衛隊の機関銃はコストダウンのためか、小銃の弾と同様のものを使用しているらしい…
 (MINIMIを選んだのも同様の理由からか?)
 サブマシンガンでは代表例なし。小銃のシリーズで幾らか存在する。
 (見た目が小銃のストックと銃身を切り取ったものがほとんど。ただし、著者の知るのはカスタムガンだが…)

◇ 特殊な弾種を使用するもの
 P-90。
 前述したFN社の銃で、口径5.7mmの丁度ライフル弾と拳銃弾の中間程の小さなサイズの弾薬を使用する。上で述べたFiveseveNと同型同型の5.7×28mm弾である。
 ただし、FiveseveNは5.7×28FN Subsonicと呼ばれる弾丸は使用できないようである。
 特殊なギミックが施されたマガジン、独特のフォルムが知られているものの、通常市場には出回ることはない。
 これは士郎正宗(漫画家)先生の大のお気に入りで、ツァスタバの“ナインウェポン”(映画『攻殻機動隊』)、MN-23(『ドミニオン』)等のモデルになった銃である。
 小口径高速徹甲弾を使い、ボディアーマーも抜ける(MN-23は10mmの『ノンリーサルウェポン』として開発された)のが、彼の世界では当然のようなのである(セブロ社に代表される)。

 以上で各種銃器についての基礎的な知識を終了する。
 次回は砲についてすこしだけ話してみようかとも思う。


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