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「リアリティと小説のための武器知識」
第1回 刀剣類
※用法に関する注意
アクションや銃撃戦が好きで、小説にそういうシーンを持ち込みたい。
でも、ままならない方々へ捧げる『正しさ』と『面白さ』、これを主な目的として書きました。
尚、本当の人殺しの方法と映画で見るようなアクションでは全く動きは違います。
たとえるなら、プロレスと柔術、又は打撃技と関節技の差というのでしょうか。
決してこれが絶対正しいとか思わないでください。
殺陣、剣舞、チャンバラと呼ばれる場面。
ここで必ず必要になる刀剣類の知識。
なかなか普通に生活していてはこれが手に入らないことが多いので、進呈して進ぜよう。
(参考物件:オーム社「武器」)
■ 刀
次郎衛門が使っている無銘の刀。
…多分それぐらいしかないのでこれは適当に…(^^ゞ
日本刀の使用方法は様々であるが、今一般的に伝えられる知識で十分だろう。
ただし、剣道の知識よりは居合道の知識の方が殺陣には役立つ。
日本刀は重さで切るものではなく、刃付けをきちんと行った刃物である。
たまはがねと呼ばれる純度の高い鉄から作られ、焼き入れ、炭素の添加により鍛え上げられた『刃』である。
刃を肉に当てて引くと、まるで抵抗がないかのようにすっぱり切れる。
何度も何度も粘土で研ぎをするために結晶方向が揃った、いわば『単分子剣』だ。
結晶欠陥が無く(方向が揃っているとも言う)恐ろしく丈夫な事がKATANA(海外の外来語)とまで呼ばれる所以である。
通常は1.5mもの長物ははっきり言って振れない。
一対一での殺陣では斬り合いはお互いに一撃必殺の場合が多い。
これは剣道でも同じようなものを見ることができる(剣道漫画をよむよろし)。
…が、はっきり言って『そういう話』にしたくない場合。
刀を振るのが『鬼』だとか、それなりにでっち上げよう。
切られても死ににくいとか。
後『真剣白刃取り』は無刀取りでも有名なものだが、知られている方法ではまず止められない。
試しにだるま落としを上から思いっきり押さえつけてやってみよう。
上下に力を加えても、その力に対して90度方向の違う力には弱いのだ。
だから、恐らく刀を真横からはたき込むように受け取るのだろう。
西洋の『剣』との大きな違いはその素材と『刃』である。
非常によい鋼があったので、日本ではあのような刀ができたのである。
剣には刃がついているが、基本的に叩き切るものである。
■ ナイフ
良く知られているのがサバイバルナイフとバタフライナイフ。
これについては非常に勘違いされている面も多く、覚えておいて損はない。
まず大きく大別してシースナイフ(鞘入り)とフォールディングナイフ(折り畳み)がある。
前者がサバイバルナイフ、後者がバタフライナイフである。無論それだけではないのだが。
通常ナイフファイティングにはシースナイフを使う。丈夫だからだ。
バタフライナイフ程人殺しに使えないナイフはない。
本物のバリソン(現在のベンチメイド、蝶のマークの会社である)でも、ほとんどなまくらでせいぜい怪我する程度だ。
今売られているフォールディングナイフは、切れ味ならスパイダルコ(蜘蛛のマーク)、丈夫さや取り回しならBuck(スレッジハンマーのマーク)が良い。
ただ、流行は薄いもので、ベンチメイドの出したライナーロック付きのもの(エクリプス)と同等のものが出回っている。格好良いので著者も欲しい。
(蛇足だが、これらは『振り出し』もしくは『弾きだし』が簡単にできるようになっており、折り畳んだ状態でもロックがかかるものもある)
そして、あまり知られていないのが投げナイフ、スローイングナイフである。
ナイフスローイングの技法はせいぜい一部の特殊部隊で用いられる程難しい。
何故ならまっすぐ飛んでいくのではなく、あれは1回転もしくは1回転半して切っ先が突き刺さるからだ。
また通常ナイフは投げることはできない。バランスが悪く、巧く回転させられないからだ。だから専用のナイフが存在する。
良く軍隊で用いられるのが5インチ(米軍はそれ以上のサイズらしい)、フォールディングで若干大きいなと思うものでも3インチ。
刃渡りは15cm程の大型ナイフと6cm程の中型ナイフである。
趣味なので詳しく書きたいが、このぐらいにする。
ナイフファイティングは利き手にナイフ、逆手は力を抜いて大きく構える。
場合によっては刃を上向きにしてナイフは鳩尾よりも低く構える。
が、素人は必ず刃を下向きにして両手で握る。
尚、この逆手の使い方次第で『よりプロらしく』見せることが可能である。
ナイフを逆さまに(刃を小指側に)持つのはあまりないと言える。
上記の写真の、上がフォールディングナイフ、丸い穴が特徴のスパイダルコ社のもの。下がバリソンナイフという、『本物の』バタフライナイフ。
余談であるが刃物はより切れるものの方が安全なので、刃物は良く研いでおこう。
切れにくいナイフで無理な力を加えたりするのは、刃が折れたり、変な方向に刃が向くので危ないのである。
刀剣類が登場する場合、その描写に気をつけなければちゃちく感じるものになる場合がある。
たとえば、プロなのにフォールダーを振り出してたり、バタフライナイフを使ってたりするのはさすがに変なのだ。
あとは特殊なナイフを紹介しよう。
■ ダガー
諸刃のナイフで、完全に戦闘用。危険なのであまり一般に使えない。
切るよりも刺す用途で使用される。投げナイフなどもこの形状のものが多い。
プッシュダガーというT字のものは完全に刺し用で、握りこんで使用する。
手の中で回転させて、中指と薬指の間から刃を出して、メリケンサックのように刺す。
他、インドなどでは某ナムコの変な奴が持ってるようなナイフもある。
スリーブダガーと呼ばれる懐剣は、コンシールド用で過去にハスラーが自衛のために袖に隠し持っていたものだ。
■ 剣鉈
鉈に切っ先をつけたようなもので、和製ボウイナイフである。通常鉄製、錆びる。
これでも多分狒狒(ひひ)を倒せるでしょう(?)
藪こぎに使用されるため丈夫である。
ちなみに、ボウイナイフとはインディアンが決闘に使用したため使われる名称で、大型ナイフの総称として使われることがある(一般的なサバイバルナイフはこれにあたる)。
■ 手裏剣
投げナイフの代表格。
十字、八方等あるが、前述したように刺さりやすく改良を加えたのである(スローイングナイフには3方手裏剣のようなものもある)。
だからもちろん棒状のものもある。代表は甲賀の『飛び苦無』など。
■ スペツナヅナイフ
強力なスプリングで刀身を発射できる『飛びナイフ』。
ロシアの特殊部隊スペツナヅが使ったと言われている。実は著者も良く知らない。
最後のは本当に蛇足で、正しい知識かどうかも怪しいが存在するらしい。
これで刀剣類は終わる。著者のように実際に鉈代わりに使ったりするのでない限り、実際に買う必要はない。
アウトドアショップで眺めるだけで十分である。
次回は拳銃・小銃について語る。
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