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魔術基礎概論

第3回 上位、下位


 魔術というものの概念を、これまで述べてきた。
 何故魔術が生まれたのか。
 何故、魔術がこれまで社会的に排除されていたのか。
 それには、もちろん社会的背景を含んで考えなければならない。
 しかし、我々が魔術というものを捉えた際に、きっと気づくことがあるだろう。
 それは「何故魔術の目的を見失ってしまったのか」という点である。
 最初にお話ししたとおり、現世利益を手に入れることに傾倒した魔導師は数多くいる。
 が、それは決して魔術の真の目的ではない、と。
 今回お話しする『上位(High)』『下位(low)』は、これに全く大きく関わってくる話である。

 そもそも下位という呼び方を始めたのは、魔術を極めようとした人間が、現世利益を得るための魔術を指して侮蔑をこめて呼んだのが始まりなのだ。
 決してそれが卑俗な、低俗なという魔術のランクを指すわけではない。
 ただ、確かに魔術の目的である『世界の全てを知る=神に近づく(神との合一)』を考えれば不思議ではないのかも知れない。
 彼らにとって現世の利益など取るに足らない物なのだから。
 だが、どの魔術も同じ。
 その質に大差はない。術を使うことは術の目的よりも重要な事があるのだ。
 下位と呼ばれる術ですら、実際には『その法則と理由』を確かめるには最高の素材である。
 何故なら、見てすぐに判る結果が手渡されるのだから。
 術に生け贄を求めたりするのも、実は間違いである。
 術に長ければ、ただ生卵を割るだけでもそのエネルギーを使用できる、という。
 形から入るのは確かに結果を求めるには良いかも知れない。
 特に大勢で儀式を行う時、制服のような決まり切った格好をするのは、精神統一に役立つからだ。
 決まり切った格好などはない。
 精神的な物だと思って貰いたい。
 本来は呪文というのもないのである。意志が伝わればいいのだが、それもやはり精神的な問題なのだ。
 通常人間は言葉で意志をかわす。だから、決まり切った言葉にしてやることで精神の方向性を作り出すことが可能なのだ。
 少し話が脱線した。
 このように、魔法には上位下位という区別がなされてしまっている。
 だが、下手に高度な魔法を使おうとするのは止めた方が良い。
 魔術というのは車の運転と同じで非常に安全なのだ。
 だが、交通事故が起こるように、それが危険をはらんでいることも間違いない。
 特に『生け贄』を使うような事をしたら(本来必要ないのに)、いらぬ悪魔達を引き寄せるかも知れない。
 だからといって慎重になりすぎるのは、かえって術を阻害する。
 正しい知識、正しい感情をもって魔術を見据えれば、それがいかなる術なのか、どうすればいいのかが判るだろう。

 さて、下位と呼ばれる判りやすい術の中でも、降霊術はご存じだと思う。
 こっくりさん、ブランシェット等各国で様々な姿を持って存在する。
 この『降霊』という儀式は、あまり魔術を行う人間としては好ましくないとされる。
 ただこれは迷信である。
 好ましくない理由としては、心霊的現象というのは『要因』を突き止めにくいところがあるからだろう。
 少し儀式を覚えた人間なら、力の流れでも僅かに意識を持った存在『エレメンタル』と交渉できるようになる。
 ただ、人間でいう本能に近いものしか持たないため、深く付き合うべきではない。
 が、これら『エレメンタル』は実は儀式で製造できる物なのだ。
 だから下手な降霊術を行っても、実際にそれが『過去に存在した人物の霊』であるとは言い切れないのだ。
 実際、この『嘘の』降霊術によりエレメンタルを製造した例もある。
 一概には言えないが、魔術師たるもの、理論的に考えられないものに触れたくないという思いもあって、こういった一連の心霊現象を否定していたのだろう。

 今回はここまで。次回はフレイザー卿が世に生み出した魔術大系を元にして、物語世界で発展を遂げた『RPG世界の魔術』について語ろうと思う。


 上位魔法というのは、本来の目的に沿った魔術です。宗教的、哲学的な面が含まれるので多くは語りません。
 そう言うのもあるんだなぁと思ってください。
 本来ならカバラで語られるセフィロトやアストラルというものの説明も必要になるんですが…
 実際、これらは各国もしくは各人の宗教、知識で大きく変わる物なのです。
 呼び名も、姿も違います。
 たまたま西洋のカバラ魔術を例にあげただけですので…
 次回のRPGにおける魔術の立場、ゲーム世界の魔術についてです。