第2回 小説の書き方 1
もし興味があれば小学校の頃の国語の教科書やら引っ張り出してみると良い。
自分が述べていることは既に学んでいるはずなのだ。
さて。
何よりもまず考えなければならないことは、『目的』である。
自分はこの小説で何を書きたいのかという目的だ。
これがなければ小説足り得ないのだ。
主人公がこんな活躍をするんだ。いや、それだけでは小説にはなりにくい。
もちろん娯楽小説(キャラクターの動きや魅力のみ引き出すように考えた小説)もあるが、初心者は止めた方がよい。
簡単なようで、一番難しいのだ。
その点『一本筋が通る』文章を作れる基本ならば、誰にでも書けるはずだ。
『誰に』『何を』言いたいのかを良く考えるのだ。
別に自己満足だから良いや、でもこうなる。
『未来の自分に(忘れているかも知れない自分に)』『こんな良い作品があったんだ、でもこれだけのところが足りなかったんだ』
すなわち、言語の持つ『本当の力』を使わないと面白い小説にならないのだ。
では、既に小説を書きたいという『動機』を持っている読者諸君。
以上で『目的』及び『目標』が手に入ったと思う。
言語で表現する限り、この二つは必ず必要だ。
今から語りたいこと(目的)は、語るべき相手(目標)の知らないことだ。
だから、自分が思っていること、感じていることを自分の言葉を尽くして語ってやるのだ。
こつとしてはこの時『くさい言葉』を初めから使おうとしないことだ。
素直に表現した方がよい。その方がいい作品になる。
表現の方法については次回。
次は『素材』だ。オリジナルを書こうという強者は次回以降なので、今回はここで同人誌に絞る。
すなわち、『素材』=『好きな作品』だ。
何でも良い。ゲームでも漫画でもアニメでも小説でも、同人誌でも。
同人が二次創作なら俗に三次創作と言われるものもあるから、同人誌でもよい。
…さあ、書きたい素材は手に入っただろうか?
キャラクタの性格、その場面設定、その他諸々だ。
恐らく『動機』の時点で手に入っている場合が多い
(SS書きなら素材を見て書きたくなるはずだから)ので、既に準備できているだろう。
次の手順は『具体化』だ。
正確な言葉を使うと、『プロットづくり』という。要するにSSの設計図に当たるものだ。
まず表現したい物に対して良く考える事だ。
たとえばまずそれを一つの文にしてみる。
そして、どうやってそれを説得するか。そう、それこそが小説の『起承転結』なのだ。
ジャンルを決定するより先にこれを固めてやる。内容によって自ずとジャンルが決まってくるのだ。
もちろん、先にジャンルを設定することで『表現の幅を狭めて書きやすくする』事も可能である。
そちらの書き方については『全く書けない人間』にとっては酷だが、ある程度書ける場合には逆に書きやすいのだ。
小説とは説得力である。
いかにして説得力を持たせるか。
これが恐らく初心者には難しいのではないだろうか?
しかし、小学生から高校生になるまでのあいだにきちんと学んでいるはずなのである。
キャラクターの意志、話の筋、背景設定、著者が本当に表現したい物。
それを訥々と説明するには、相手に有無を言わせない説得力を与えればいい。
三段論法、逆説的な表現、繰り返しによる強調。
そしてそれらを収める『箱』こそが起承転結他ならない。
まず箱を用意してやる。これが何より大事なのだ。
では、その箱について説明しよう。
起、すなわち書き出し。SSであればここで『これからの話の流れ』を説明してやることになる。
説明の方法には様々なものがあるが、これは例で示す。
<例:マルチのSS>
やっと授業が終わり、昼休憩に入った時の事。
浩之が渡り廊下でパックのカフェオレを飲んでいると、聞き覚えのある声が聞こえた。
これだけで次の情景が頭に浮かぶのではないだろうか。
こつはないが、同人の場合は『キャラクタ』と『背景』が既に読む人間の下地にある。
だから、それを刺激してやればいい。
ゲームのシーンを利用したり、既にあるキャラ設定を際だたせるのも同人の有利な点である。
逆にこれを深く表現すると「そんなこと知ってるよ」とか「これ、キャラ違うじゃねーか」と言うことになる。
承は難しくない。
言いたいこと、もしくは書き出しに沿った内容を書けばいい。
もちろん次に来る『転』に備えて逆説的な流れにするのも良い。
一つギャグのプロットで例を示そう。
<例>
ロリコンな耕一(起:書き出し)。
「楓ちゃん好きだ〜!」「初音ちゃん好きだ〜」とか言わせておいて(承)。
「梓の胸も捨てがたい」(転:流れの変化)、その後全員(もしくは千鶴さん)から手痛い一撃を受ける(結:ギャグならオチ)。
三段論法と同じで、起承転結は基本的な『説得力』であることが判ると思う。
この場合、無理のない展開というべきだろうか。
転。ここでは前述したとおり今までとは違う流れを組み込んでやる。
たとえばアクション物。
敵の基地に潜入する(承)静かな場面から、敵のボスとの対決(転)の激しい動きのあるシーンへ。
純愛物なら出会い(起)、戸惑い(承)、告白(転)、その後(結)と言う風に「ここで変化します」という場所。
クライマックスをここにもってくるのだ。
実は起と承がきちんと作り込まれていればここには困ることはない。
何を書けばいいかは決まっているからだ。
自分の言いたいことに対する『決め』だと思えばよい。
最後に、結。
これは自分の言いたいことが言えているなら繰り返しても良し。
言えていないならここで決める。
どっちにしても落とさなければならない。
まとめるのもよし。
これで大体説明を終わる。
解説したとおり、実際には『承』に当たる部分がいかに書き込めるかでほとんど決まる。
書き出しは無理なくこれにつながるように。
転に至っては丁度裏側(逆、でも可)。
結は充分語ったところで締める。
流れとしてはこのようなものだ。
気をつけなければならないのは、これだけでは『小説足り得ない』ということである。
小説と論文の差。
次回は小説の文章のための『表現』について語ろうと思う。