Winged-White 【インド連発】 その21〜25 インドX連発
◆ネパールとほほな旅話。 byA.Matsu!
  ポカラ〜ビールガンジ
  (データは20世紀のものです。)
ポカラの虹(分かります?)
連発index
その16〜20←
その21.【ティベタンの女性達】
その22.【身の上相談】
その23.【プリンが熱いぜ!】
その24.【ぐっジョブ……】
その25.【夜明けのボーダー】
→その26〜30

その21.【ティベタンの女性達】 1996/09・ポカラ

 続いて風光明媚な地、ポカラに行った。
 ホテルの子どものスタッフ、ラジェースくんと仲良くなり、二人で自転車に乗って、ポカラを観光した。

 国王の別荘近くで、五、六人のティベタンのネエちゃん達が、前から歩いて来た。今日の仕事(みやげ物を旅行者に売る)を終え、難民キャンプに帰るのだろう。
 なぜかオレを指差している。やがて口々に叫びだした。

「アラ〜、私たちの首飾り、買ってくれたのね〜!」

 観光に出る前、ティベタンのあやしいオッサンがホテルに訪れていた。オレは彼から、色々なストーンを繋げた首飾りを買い、嬉しがって着けていたのだ。
 ――しかしなんでこの人達、何十mも先から、自分たちの商品だと分かるんだ?

「サンキュー!」
カーペット工場のティベタン女性達と  すれ違いざま、オレは首飾りに少し手をやり、ニコッと笑い返す。

 その時には、彼女等の言葉は違うものになっていた。

「私のも、買ってェ〜!!」

 振り向くと、みんな走り出している。ままま、マズイぞぉぅ!

「……ノ、ノォ――さんきゅう!!」

 急いでペダルをこぐ。後ろから女性達の屈託ない笑い声が、聞こえて来た。

その22.【身の上相談】 1996/09・ポカラ

 なぜかここポカラでは、当地の人々が、オレに相談事を持ちかけてくる。

 一人目は土地の金持ちの息子。バイクでレストランに乗り付け、オレの方へ来て、話し掛ける。

 日本人のナオコという女性と恋仲になり、将来を約束した。が、彼女は帰国してから手紙もくれない。彼が日本に会いに行くと、彼女の家族に『もう来るな!』と追い出され、一目会うことも叶わず帰って来たらしい。

「どうすりゃいい?」
 と聞かれたが、要するにリゾラバねぇちゃんに遊ばれただけじゃないか? そんなヤツやめとけよ……。しかし彼の呪縛は簡単には消えないようだ。

 傍で聞いてたネパリも「こいつの家はムチャクチャ金持ちだ」と言う。ふむ。 金で国際恋愛の溝を埋めるのは、ムリか。

 ならば、
「学校でも作って、名誉を手に入れろ」
 周囲から尊敬される人間と分かれば、あるいは振り向いてくれるかもしれない。最悪、ナオコとやらを、見返してやれる。

 それか……チョコレート工場。現在ネパールには自国製造のチョコレートが無く、全部輸入品だ。
 しかし、ヒマラヤという天与のイメージ、そしてネパリの誠実さは、多分にここで生産されるチョコレートを、一流のブランドにすることだろう――。
 いや、オレがチョコレート好きなだけなんだが。


 ホテルスタッフのラジェースくんも、夜になって自分の悩み事を訴えた。父親は仕事もせず、ガンジャを吸っては、母親や自分に暴力を振るう、と。

「オヤジは尊敬できないよ。こんな家、いてられないよ」

 ――深刻な話だが、門外漢のオレがのこのこ出て行って、解決できるような問題ではない。民生委員がいればいいのだが……。家庭内暴力が酷ければ、信頼できるご近所に助けを求めろ、という以外は、具体的なソリューションもない。
 ごく一般的なことしか、忠告できなかった。

「――しかし、本当は、君がお父さんを尊敬したいと思っているのは、間違いないだろう? 君のおじいさんやそのまたおじいさん……たくさんの御先祖様も、尊敬したいだろう?
 実際、君が尊敬できる素敵な人は、その御先祖様の中に、たくさんいるはずなんだ。

 もし父親が尊敬できないとしても、少なくとも、君がこの世界に生を受けたことだけは、感謝した方がいい。

 一方、君は背中に、その人達の――たくさんのご先祖様の――期待を背負っているんだ。くじけない限り、きっと守ってくれる。だから、頑張るんだ。

 君のお父さんも、同じ事を思ってくれれば――。
 ラジェース。一度君の本当の気持ちを、お父さんにちゃんと言ってみると、いいかもしれないよ」

 ――気がつけば、自分の背中が痒くなるようなことを、熱心に言っていた。
ラジェースくんと  さらに不思議なのは、これを英語で、言っていたことだ。子どもの彼にも分かりやすく。

 できれば日本で働きたい、とも言っていたが、日本よりはアメリカへ行け、と言っておいた。日本にもぐりこむのは、なかなかに大変だろうから……。


 しかし、なんで会った途端の人間に、身の上相談するん?(マレビト信仰ってやつ?) しかも、オレみたいな、自分一人で精一杯なヤツに……。
 一応、一生懸命答えようとはしてたんだが、うーむ、どーだろ??
(『ラジェース』くんは、仮名です。
 なお、今考えると彼への言葉は、仏跡巡りのせいか、かなり抹香臭い。しかも、和風……。彼が理解できたかどうかは、あまり自信が無い。お恥ずかしい限り。)

その23.【プリンが熱いぜ!】 1996/09・カトマンズ

 さて、お次はカトマンズ。
 久々に日本人宿っぽいところに泊る。バラナシで出会った仲間とも、再会できた。

 ここで出会ったリュウさんと、フリーク・ストリートにある、メニューの多いレストランに入った。  ……おおおおっ!!
 メニューにプリンがあるではないかっ!!

 プリン〜♪ プリン〜♪  プリン〜♪

王宮広場のバザール  すぐに注文した。
 やがて出てきたプリンは、どんぶり鉢のようなものに入っていた。

「うわ、ボリュームあるなぁ〜」


 早速スプーンで掬い、口に入れて思わずうめいた。




 (―――――― 熱い――――――!!!!)


 この湯気は、冷気ゆえの湯気じゃなくて、普通に(?)熱かったのネ。
 水を飲んでなんとか一息ついたが、

「これ、どうしよう……」

 アツアツの湯豆腐のごときプリンが、目の前にデ〜ンとある。大量。
 プリン好きの一旅行者を絶望に陥れるに、十分なほど、大量。
 ううう。何考えとんねん、このレストランは。

 結局、フーフー言って食べた。舌をやけどした。

その24.【ぐっジョブ……】 1996/09・カトマンズ

雨のカトマンズ  時間が無い。
 バスの発車時刻は、もうすぐだ。
 ……確かに急いでいた。

「ラ〜スト・プラ〜イス! イフ・ユー・ウォント、ユー・セル!」

 Tシャツ屋でも、自分から(少し高メの)額を言って、値切る時間を惜しんだ。

 宿から車のよく通る道まで、バックパックを担いで、ダッシュもした。

 確かに、捕まえたTAXIの運ちゃんに、「急げ」と言った。


 ――――しかし!


 対抗車線を走ってくれなんて、言ってな〜い!!

 ボディ、こすッてるって!!


  信号無視をするな〜ぁ!!


 ……間に合わなくてもいいよ〜ぅ……。


 カトマンズ郊外のバス・ステーションに到着した時、完全に顔が固まっていた。
「どうだ? オレは速かっただろ?

「あぁ……最高に。二度とゴメンだが
 映画じゃあるまいし。
 チップも料金の半分ほどはずんだと思う。命拾いの感謝を込めて。

 ――しかし残念ながら、オレはバス代にも、割増の料金を払わなければならなかった。
 バスはもう出ていた。
 オレが『19』時だと思っていた発車時刻は、『15』時だった。チケットの数字は、全部ネパール数字で書いてあったのだ。

「せめてガイジンには、アラビア数字じゃないの……?」

 憤怒と落胆とともに、次のバスのチケットを買い求め、カトマンズを後にした。

その25.【夜明けのボーダー】 1996/09・国境

 ビールガンジに着いたのは夜明け前。  国境までは遠い。
 プレイアデスが天頂に大きく輝いていた。
 金星が、地平線近くの朝焼けを誘い出そうとしている。

明けの明星
 歩くか。
 バスが到着した所ではリクシャーの客寄せもあったが、今は独り、ボーダーまでの静かな道を歩いていく。
 東の空は祈りを捧げるように、永遠のロングトーンを奏でている――。







ぐにゃら。



 踏んでしまった。東の空に気を取られすぎた。
 牛や馬のソレではない。肉食動物のでもない。
 人間のやつだ。ガーン。
 にしても、デカイ。

 自分の最大パワーのやつでも、敵わないほどの作品。バケモンか?
 辺りがほんのり明るくなるにつけ、そこかしこに見つかるブツは、みな一様にバカデカイ。
 色もなんだか青っぽい。みな踏んだやつと同じく、柔らかそうで、湯気の立つ新鮮なブツもある。
 推測だが、これはほぼ草食であるがゆえ、かような大きさになるのではなかろうか。食物繊維とか、メチャメチャ摂ってそう。もしかして、ヘルシー?(あるいは、フザケてる場合じゃない状態か。)
 民家が近づくにつれ、子どもが実際にひり出すシーンにも出くわした。
 目を凝らせば地平の道路わきに、何人かのうずくまる姿が見える。
 ……オレは彼らが作業に集中できるよう、道のど真ん中を歩いていった。(てゆーか、ふんづけたくないだけだけど。)
 ウンコロードを越えた辺りで、疲れてきた。折りよく来たリクシャーにのり、ボーダーへ。

 ネパール側のイミグレは優しい。とても優しい。
 それはいいんだけど、
「ネパールは、いかがでした〜?」と、お役人様がモミ手するのは、いかがなもんだろーか??

 確かに、ネパールはいいところだった。ただ、役人のモミ手に日本と同じ意味があるのか無いのか、オレはこの国の資金援助の第一位が日本だと聞いたことを思い出して……、ちょっと興ざめしてしまった。

 まあともかく、ここでネパールは終り。
 またインドか、とほほ……。

装飾されたドア(国境付近)

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