マラリア君とオレは、バラナシ(ベナレス)を目指し、カジュラホを後にした。
7〜8人乗りの白タク(普通のセダン車なのに……)などに乗ってサトナー駅に行き、そこで各駅停車っぽい列車に乗り込んだ。
アーミーが一人同じ席に座ってきた。
彼は我々の持ち物を興味深げに質問していたが、やがてモノねだりが始まった。
人によっては自分の当然の権利のように主張するので、困る。しかも彼はアーミーだ。彼が不満を募らせないよう、穏便に断りつづけた。
とそこへ、妖しげなメロディが聞こえてきた。
蛇使いが車内の各席を巡り、商売をしながら近づいている。
我々の席に来た。物珍しいので、まずまず喜んで小銭を手渡した。「もっとくれ」と言ってきたが、それ以上は、
「ナヒ〜ン」 だって蛇見せてくれてないもん。
ところがアーミーの彼は、金を渡そうとしない。
怒った蛇使いはコブラの入ったカゴを、
「けしかけるぞ!」とばかり彼の方へ遣るフリをしだした。
アーミーの彼は、その度にビビるビビる。完全に腰が引けていた。
「ワー! ヒー! ひー!」
金を出すまで蛇使いは攻撃をやめなかった――強い!
(しかし、アーミーからカツアゲするか、フツー?)
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