Winged-White 【インド連発】 その6〜10 インドX連発
◆インドとほほな旅話。 byA.Matsu!
  カジュラホ〜バラナシ
  (データは20世紀のものです。)
ガンガーの朝
連発index
その1〜5←
その6.【アーミーVS蛇使い】
その7.【バラナシ着、深夜】
その8.【捨てゼリフ】
その9.【神様はどこにいるのか?】
その10.【ナイスなアイテム】
→その11〜15

その6.【アーミーVS蛇使い】 1996/08・列車内

 マラリア君とオレは、バラナシ(ベナレス)を目指し、カジュラホを後にした。
 7〜8人乗りの白タク(普通のセダン車なのに……)などに乗ってサトナー駅に行き、そこで各駅停車っぽい列車に乗り込んだ。

 アーミーが一人同じ席に座ってきた。
 彼は我々の持ち物を興味深げに質問していたが、やがてモノねだりが始まった。
 人によっては自分の当然の権利のように主張するので、困る。しかも彼はアーミーだ。彼が不満を募らせないよう、穏便に断りつづけた。

 とそこへ、妖しげなメロディが聞こえてきた。
 蛇使いが車内の各席を巡り、商売をしながら近づいている。
 
 我々の席に来た。物珍しいので、まずまず喜んで小銭を手渡した。「もっとくれ」と言ってきたが、それ以上は、
「ナヒ〜ン」 だって蛇見せてくれてないもん。

 ところがアーミーの彼は、金を渡そうとしない。
 怒った蛇使いはコブラの入ったカゴを、
「けしかけるぞ!」とばかり彼の方へ遣るフリをしだした。

 アーミーの彼は、その度にビビるビビる。完全に腰が引けていた。

「ワー! ヒー! ひー!」

 金を出すまで蛇使いは攻撃をやめなかった――強い!
(しかし、アーミーからカツアゲするか、フツー?)

その7.【バラナシ着、深夜】 1996/08・バラナシ

 バラナシに着いた。午後10時か11時ごろだった。
 駅のコンコースには、人が溢れていた
 構内だけではなく駅舎前の広場にも、そこで夜を過ごす群集が横たわったり、うずくまったりしている。

「ここで寝るのは、絶対マズイよな」 夜のリクシャー
 マラリア君とオレは、二人ともそう思った。とにかく、ダサシュワメードに行こう。

 二人は『久美子ハウス』を目指していた。
 これまでの経過から言って、この宿が疲れた日本人旅行者に最適だろうことは、今考えても間違いない。が、そんなことより……。

 マラリア君は長渕ファンだった。

 長淵剛は『久美子ハウス』に宿泊し、『ガンジス』という曲を作った(らしい)。その曲に描かれた風景を、一目見てみたい……それが彼の旅の、メインだったのだ。
 (作り手冥利に尽きる話だ。オレはその話を聞いて、長淵剛がすごくうらやましくなっていた。ファンにそこまでさせる曲を、作るとは。)


 もう一人、駅で出会った旅行者と3人でオートリクシャーに乗る。しかし……
「ナイスホテルを知ってやすゼ、行きやせんか?」
 ホラ来た。

「エニウェイ、ダサシュワメード=ガートまで行ってくれ!」
「私の知ってるホテルの方が、格段に……」
 延々、関係ないホテルの話しかしない。

「ストップ、もう止めろ!」しかし、全然聞かない。

 とうとう、
「……止まれって言ってるだろ、コラぁ(日本語)!!」

 駅で会った彼が突然キれ、後ろの席から運転手の首を締め始めた。
 止まった。3人とも降りた。途中までの金も払わず、すたすた歩く。

 アレ?

 ――運転手が追って来ない。

 なんだか不思議だった。推測するに、ヤツはホテルのコミッションしか頭に無かったのか。
 それとも――首を締める旅行者に、ビビッてしまったのか???
 ……オレもビックリしたけど。

その8.【捨てゼリフ】 1996/08・バラナシ

 ダサシュワメードは、ひっそりと静まり返っていた。
 先ほどキレまくった彼は、違う宿に行くと言って去っていった。  ガンガー(ガンジス川)のガート(沐浴ができる階段状の川岸)際を通れば、一直線で久美子ハウスだ。しかし、雨季の増水でガート沿いには歩けない。
 とにかく内側の道から探そう。と思う間もなく一人のインド人が寄って来た。

「ジャパニ、ホテ〜ル?」

「(……相手にするな)」
「(……ああ)」

 彼はべらべら喋りつつ、ついてくる。これが限りなく二人を苛立たせた。
 一たび路地に入れば、もう真っ暗だ。おまけに野犬か飼い犬か、たくさんの犬が辺りで吠え立てまくっている。『地球の歩き方』の地図(※)を懐中電灯で確認しつつ、後ろのインド人は完全無視、で、歩く。

夜道 「アレ?」

 どうしたことか、ダサシュワメードに戻って来てしまった。

「だから言っただろ、俺がガイドしてやるからって……」
「断る。アンタの助けは要らない。チャロ

 遂にその夜最後のコミッショナーは逆ギレ、捨てゼリフを残して去っていった。

「ファッキン・ジャパニーズ・ツアリィースト!!
 ウォーク・イン・バラナシ、オール・スルー・ザ・ナァ――イッッ!!!」


※ 当時の『地球の歩き方』のダサシュワメード=ガート周辺の地図は、手描きだった。とってもイイ味出してたんだけど、決して夜のバラナシの路地に通用するモノではなかった。
 最近のものは綺麗に製図されているから、こんなことにはならないだろう。(でも、ちょっぴり味気ないかなァ??)

その9.【神様はどこにいるのか?】 1996/08・バラナシ

 敵は去った。辺りは水を打ったように静かになった。
 と思いきや、ガートの方から叫び声のようなものが聞こえる。見ると、老婆がガンガーに向かって、何ごとか叫び続けている。

 マラリア君が、何を血迷ったか、その老婆にずかずかと近づいていった。そして何か話しかけて、戻ってきた。
「ど、どしたん? な、な、何してたん?」
 オレが唖然として聞くと、

"神様はどこにいるのか?"って、聞いてみた」

「?? …………で?」
「全然相手にしてくれなかった」

 次いでその場所に、一人のサドゥー(修行者)が現れた。長い白髯に色褪せたサフラン色の衣、右手には杖を携えている。
「こんな夜中にウロウロしてはダメだ。バラナシの夜はデンジャラスじゃ」
 みたいな忠告をされた。

 ダメ元で久美子ハウスへの道を聞いてみると、
「うむ。あっちじゃ」
 漠然とした方向に杖を手向けた。サドゥーの衣が街灯の光に透ける。

「……カッコイ〜!!(しかし、分かんね〜!!)」とか二人で感動していると、また寄ってきて、

「あの老婆相手にしちゃダメ。"く◆◆るぱー"ネ

 この言葉で、彼の株価が一気に大暴落したことを彼は知らない。誰だ、こんな日本語教えたヤツは。

夜の野良牛  暗闇犬の咆哮。突然姿を現す野良牛。肩に食込むバックパックの重み。さらにはまで降り出した――。
 その後、この牛糞散らばる錯綜した迷路を何時間も彷徨ったが、一向に久美子ハウスは見つからなかった。

 『あの捨てゼリフにだけは降るものか――』
 二人とも完全に意地になっていた。

その10.【ナイスなアイテム】 (コラム)

 僕の独断ですが、持っているとオトクな(?)アイテムを挙げます。
  • 自転車のゴムひも。 洗濯物の室内干しに超便利。
  • 蚊取り線香の台。現地の蚊取り線香には、ほとんど入ってなかったと思う。さらに効き目が弱めなので、2〜3本一気に焚けると効果的。
  • リンス。 田舎ではなかなか売ってない。補充は早めに。
  • 必要な文具。 残念ながら現地製品は粗悪なものが多く、イライラする。(レイノルズのボールペンは使い心地が良かったです。)
  • メモ帖。 初めからパンチ穴が開いているものがイイ。ヒモを通しておきましょう。

 保守関係アイテム
  • 連番の南京錠。 一つのカギで全部開く何個かの錠前。開口部の多いバックパック保守などに便利。
  • 手芸のパンチャーで穴を作って、鎖をつけておく。 これは工夫ですが、財布などの安全度がアップします。
  • シークレット=ポケット付きのスニーカー。 『カンガルー』などがあります。 (特にオススメはしませんが、とにかく安心したい人に。現金丸ボーズ時の最後の頼みには、なります。 ただし、靴を脱ぐ寺院などでは役に立ちません。)

 ここからは、持っていくとたのし〜アイテム。
  • 地図帳。 旅行者同士や現地人と話が弾みマス。
  • 折り紙。 子どもと遊べマス。
  • 星座早見盤。 たまにはロマンチックに〜。(現地ではほぼ入手不能。)
  • 日本のお菓子(ビスコとか)。 長期旅行者に分けると、感謝されることウケアイ……??
  • キーホルダー。 不要物(?)も、インド人には珍重なおみやげに大化け。

 あまり重くなりませんように……。

その1〜5← 連発index →その11〜15
© A.Matsu! 2001 Winged-Whiteのトップへ