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荒野の中に、ぽつん、と大きな魔法陣があった。
何のためのものかは、おそらくその中で念じ続ける者たちでなくとも、召喚術について何らかの知識を持つ者であれば、すぐに見当が付くものであった。

そう、『召喚術』である。

しかし、何者を召喚するための物なのかは、それこそ、その中で念じ続ける者たちしか、知り得ないことであった。

その中心に、少年が一人………





……………彼は、ただ一心に念じ続けていた。

魔王の降臨。

ただ、それだけを祈って。
それは、彼の父親の悲願であり、彼の生きる意味であった。

そして彼は、確かな手応えを得ていた。
もうじき、彼の意識は魔王に喰われ、そして魔王が彼の内に降臨するだろう。
自らの消滅の危機。それに瀕しているというのに、彼の内には、恐怖など存在しないかのように見えた。





……………彼は、ただ一心に念じ続けていた。

魔王の降臨。

ただ、それだけを心に置いて、他の全てを排除して。
そうでないといけないから。死への恐怖を思い出してしまうから。
それは、確かに彼の内にあるものであった。しかし、彼の為さねばならぬことには、ただ邪魔にしかならない感情であった。
だから………思い出さないためにも、ただ一心に念じ続けた。




……………彼は、ただ一心に念じ続けていた。

魔王の降臨。

ただ、その一事だけを念じていたはずなのに、
何だろう?頭の中で、誰かの声がする。
     頭の中に、誰かがいる。
        その誰かは、なぜだかひどい恐怖を感じていた。



……!!
      ………てくれ!!!
      ……………助けてくれ!!!!


(何なんだ!?これは……………)
彼は、混乱していた。
     頭の中で、誰かの声がする。
     頭の中に、誰かがいる。
        その誰かは、なぜだかひどい恐怖を感じていてた。

そして、その誰かの恐怖は、まるでそれが伝染したかのように、彼に死の恐怖を、思い出させていた。
それは、ほんの一瞬のことではあったのだけれど……









まばゆい光、そして轟音。




それが収まって、しばらくの間をおいて、
自分の意識には何の変化もおきていないことを確認して、ようやく彼は目を開いた。

周りには、つい先程まで、彼と共に魔王召喚の儀式を執り行っていた派閥の人間たちが倒れていた。
そして目の前。先程までサプレスのエルゴがあった場所には、

一人の少女が倒れていた。




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