「はい、哉太」
昼休みが始まってすぐ、授業中から寝ていた哉太の目の前に、どさりと音がする包みが置かれた。
「…ぁ?なんだこりゃ。」
「何って、クッキー。昨日あげたのは食べられなかっただろう?」
見られていたのかと、少し驚きながら顔を上げて、そこにあった錫也の表情を見て、少し泣きたい気分になる。
「悪ぃ。…もうしねえよ」
謝ると、すぐに変わった普段の顔から、にこりと笑って一言
「だからこれは、全部哉太にやるよ。ちゃんと残さずに食べるんだぞ」
「お前クッキーに何したんだよ…。わかった、全部食うよ」
あーあ、と言いながら受け取った。
「あ、錫也のクッキー。哉太だけずるい!」
「はい、月子にはこっち。」
受け渡しを目撃したらしい月子と、クッキーの包みを渡す錫也を横目に、
自分が受け取った包みを開けて、ぎっちり詰まったクッキーから一枚出すと口に放り込んだ。
あれ、うまい。
もう一枚。うまい。ゴマ入りだ。
「何してるの、哉太。今からお昼ご飯だよ」
「いや、なんでこれ、こんなにうまいんだ?って思ってさ」
そういってもう一枚。
「うわ!何だこれ!しょっぱいぞ!」
「チーズクッキー。甘くないクッキーも悪くないかなと思ってさ」
しれっという
「クッキーの匂いなのに、しょっぱいって、凶悪だぞ…」
「あと、ゴマ塩クッキーと、カレークッキーがあるぞ」
「カレー!?…うわマジだ。カレーの匂いするぞ!どれからだ!それにゴマ塩って、普通のゴマクッキーと見分け付かないじゃねえか!」
「チーズクッキーも、見分けつかなかっただろう?…全部食べるんだぞ」
大騒ぎする哉太に、またにっこりとして錫也。
「え。これにも入ってるの?」
「いや、お前のは甘いやつだけだ」
「そうなの?ちょっとだけ美味しそうだなーって思ったんだけど」
「それなら、まだ少し余ってるから後で分けてやるよ」
「本当?ありがとう、錫也。…あ!哉太どこに行くの?お昼ご飯は?」
「俺は、クッキー食っとく事にするわ。こんだけしょっぱきゃ、メシには丁度いいだろ」
手をヒラヒラと振って教室を出る。
クッキーの包みをごそごそと開けて、さっきの錫也の顔を思い出して、少し泣きたいような気分になったが、
ぶんぶんと頭を振って、クッキーを掴むと、ぼりぼりと食べ始めた。
甘いのとしょっぱいのと、見分けがつかないのがタチが悪い。
しょっぱいのを口に入れては涙目になりつつも、責任持って、ぱくぱくごくりと全部食った。
<<3:もう少し考えて欲しい。
SS