記憶に残る旅 バンクーバー・アイランド
*** 2003年8月19日〜2003年8月30日 ***
  

苦難の旅立ち どこに行こうか ヴィクトリア
ナナイモの衝撃 キャンベルリバーを目指して
キャンベルリバーというところ サーモンの都のシーフード
ゴルファー魂は死なず ボート遊びの人々
マウント・ワシントン ちょっとだけカナダっぽいこと
B&Bオーナーは外国人
旅は終わって


☆苦難の旅立ち
唐突だが、いま私はバンクーバーに向かう機中でビジネスクラスの座席にゆったりと腰をおろしている。
自慢じゃないが私は飛行機にはお金をかけないタイプだ。最近はインターネットで格安チケットをさがすことにしている。
今日もたまたま会社の同僚(藤城氏)との雑談でこんなことを言っていた。「たかだか10時間我慢するだけで10万も節約できるのだから、私は腐るほどお金がない限り、エコノミーにしか乗りませんよ。」と。
その私が何故いまビジネスクラスに座っているのか。エコノミーがオーバーブッキングでラッキーしたというよくある話ではない。世の中は波乱に富んでいるとしかいいようがない。
驚くべき事態が起こったのだ。(笑)
いや、笑い事ではない。ではなにが起こったのかお話ししよう。

会社を15時に終え、成田エクスプレスで成田空港に着いた私は、空港で妻と待ち合わせをしていた。
妻が私を見つけ歩み寄ってきたが、どうも様子がおかしい。表情がこわばっているのだ。会うなり「たいへんなことになっているみたい。」と言う。
聞くと航空券が受け取れないという。
いわゆる格安航空券のシステムを知らないとわかりづらいので、簡単に説明しておこう。
多くの格安航空券んは、航空会社→卸売→小売→空港の受渡会社→個人 という具合に流れる。私たちがインターネットなどで格安航空券を予約すると、多くの場合、空港の団体カウンターで当日のチケットを受け取るわけだが、受渡しをしているのはそれを専門にしている会社で、私たちにチケットを売った小売の会社(HISとか)ではない。私たちはこの小売りの会社を旅行会社と呼んでいるわけだ。
受渡会社は事前に小売会社から航空券を受け取っているわけだ。そうでないと当日受渡会社は私たちに航空券を渡すことができない。
妻によると、小売の会社から受渡会社に今日の朝、「チケットを送らないので客とは対応しなくてもよい。」という連絡が入ったというのだ。
そんな馬鹿なと思いつつ受渡会社のカウンターに行くと、受渡会社の職員は「こんなことは通常はないことだが、あとはお客様と旅行会社(小売会社)で話し合ってもらうしかない。」と言う。
震える手で旅行会社に電話をするが、案の定、留守電になっている。
やられた、という思いで頭の中はいっぱいだ。
受渡会社にかけあおうにも、受渡会社はチケットの受渡しをしているだけで、チケットを発券するとかそんな権限はもちろんない。
さあ、どうする。絶体絶命のピンチだ。
ならば航空会社だ、ということで、当日搭乗することになっていたエア・カナダのカウンターに行った。
まず事情を話し、私たちの名前が搭乗者リストに載っているかを確認してもらったところ、名前は入っているという。
ならばなんとかなるのではと思いきや、いくら搭乗者リストに名前が入っていても、航空券がなければ搭乗はできないと言う。もし乗りたければ新規に航空券を買うしかなく、しかも今日は満席なのでキャンセル待ちになるというのだ。
航空会社としては小売会社と顧客のトラブルには無関係ということなのだ。たしかにそれはわかる、しかし俺は代金も払っているというのに乗せてもらえないのかぁ。。。と絶望感はつのるばかり。
もし乗れないとなると俺はどうなるのか。あんなに頑張って仕事をして、休暇をとるために調整もしたのに、どんな顔して会社に行けばいいというのだ。
もし新規に航空券を買うことになると、当然料金は正規料金だ。聞いてみると、既に払った金額の倍くらいする。
うーん、ということは通常の3倍の料金で飛行機に乗るっていうことだ。。
もう頭はパニック状態。
まれに旅行会社が顧客の代金を持ち逃げしたなどという記事が新聞に載るが、こんなことが我が身に起きるとは。しかも当日空港に来て発覚するとは。さあ、大金を払って旅に出るか、すごすごと自宅に戻るか、究極の選択だ。

そのときふと思ったのだ。たしかに不運だが、特に命に別状があるわけでなし、お金の問題にすぎないじゃないか、と。
けっこうな大金ではあるが、私にとって旅はまさにライフワーク。この機を逃すと今回の目的地には一生行けないかもしれない。(ちょっと大袈裟だが)
もう気持ちは決まった。航空会社の市毛好江似の責任者にキャンセル待ちをお願いし、めでたく出発30分前に航空券を手にしたわけだ。
正規のエコノミー料金(いわゆるPEX料金)を払ったが、どういうわけか座席はビジネス。航空会社が気を利かせてくれたというよりも、もう座席はビジネスしか空いていなかったのだろう。
長い長い話になったが、私たちのビジネスクラス初体験はこうして生まれたわけなのだ。

(もちろん日本に帰ったらその旅行会社から金を取り返そうと努力はするが、取り返せる可能性は低いだろう。)
(後日、お詫びがHPに掲載されたが、被害者はかなりの数にのぼる。詐欺まがいの計画倒産の匂いもする。)

☆どこに行こうか
最初から衝撃の展開だったが、話を旅に戻すことにしよう。
今回の目的地はカナダのバンクーバー島。バンクーバーではない。バンクーバーの西に大きな島があるのをご存知だろうか。南北に500km近くあるのでかなり大きな島だ。
私も昨年までこの島の存在すら知らなかった。この島の一番南にあるヴィクトリアという都市がブリティッシュ・コロンビア州(バンクーバーのある州)の州都で、世界で最も美しい町と言われているらしい。もっとも世界で最も美しい町は世界中にたくさんあるので本当のところはわからない。ヴィクトリアはイギリス風のガーデニングがさかんな町で、日本からの観光客も多いとのこと。
でも私は別にガーデニングが好きなわけでもなく、行こうと思ったのは、ヴィクトリアから北に約250kmのキャンベル・リバーという町。ここはSalmon Capital of the World と呼ばれている釣りのメッカらしい。ハゼ釣りくらいしかしたことがない私だが、インターネットでたまたまこの町がヒットして行きたくなってしまったのだ。のんびりと釣りとゴルフをしよう、そんなノリだった。だから今回の旅のタイトルは「キャンベルリバー サーモンの都」のはずだった。
ところが、出発の直前になってちょいと事情があって、目的地を変更した。目的地はヴィクトリアからキャンベルリバーの途中(約100km)にある町ナナイモになった。
ナナイモのことはあまりよくわからない。でも私たちの旅の目的地はここナナイモになったのだ。
今回は本当に波乱万丈の旅なのだ。私も海外にはかれこれ80回近く行っているが記憶に残る旅になると思う。間違いなく!

☆ヴィクトリア
  
さすがにビジネスクラスでの飛行は快適だった。食事なんかはどうでもいいのだが、やはりあの座席のゆったりさ、そしてほとんど180度近くまで水平になる心地よさ。
疲れが全然違う。でも今後も私の旅はきっとエコノミーだと思う。(笑)

バンクーバーで50人乗りくらいの小さな飛行機に乗り換えて、ヴィクトリアまでは30分足らず。州都の空港にしてはこじんまりしている。
町のほうも観光客で込んではいるが、町自体はがこじんまりとしている。本当はゆっくりしたいところだが、ヴィクトリアには1泊だけ。
明日の朝にはもうナナイモに出発だ。

☆ナナイモの衝撃
●ああ、車上荒らし
ナナイモはビクトリアから約100kmで、車で1時間半くらい。港町でその対岸はバンクーバー。バンクーバーからのフェリーでナナイモに渡るのもポピュラーなルートのようだ。
最初に話したように、本当はキャンベルリバーというずっと北にある町に行きたかったのだが、わけあってここナナイモにずっと滞在する予定に変更した。
しかし旅人の気持ちは変わりやすいもの。ヴィクトリアのB&Bのオーナーにも、もっと自然にあふれた地域に行くように勧められ、やはりキャンベルリバーに行きたくなってしまった。
もちろん、ナナイモだってとても自然にあふれた町だが、旅人っていうのは遠くによりよい場所があると思ってしまうもの。(笑)
そういうわけで、ナナイモには1泊だけして体調を整えてからキャンベルリバーに向かおうということになった。
泊まったのはアメリカやカナダによくあるホテルのチェーン。

翌朝、さあ、キャンベルリバーに行こうと勇んでレンタカーの置いてある駐車場に向かったところ、どうも様子がおかしい。私たちの車(三菱ギャラン)と黒いワゴンが隣同士に駐車しているが、そのそばに警察の車が止まっているのだ。そして黒のワゴンの持ち主らしき男性(ドイツ人)が警察官と話をしている。
なんだ、なんだ、と胸騒ぎ。私の車に近づいていくと、あっと一瞬息がつまった。リアウィンドウがこなごなに割られているのだ。
そうだ、車上荒らしなのだ。
これまで海外でレンタカーを借りた回数はけっこうな回数になるが、初めての経験だ。
空港での事件といい、今回の旅では信じられないことばかり起こる。
呆然としていると、警察官が貴重品は置いていなったかと尋ねてきた。
車の破損のことで頭がいっぱい(果たして保険が利くのだろうかとか、この車で旅を続けられるのだろうかとか)だったが、よく考えると荷物は部屋に運んでいた。
ふーっと息をつき、貴重品はありませんと答えた。
警察官(ホフマン氏)によるとこのあたりは犯罪が多い地区だとのこと。
警察官は名刺をくれ、名刺の裏の番号(ファイル・ナンバーというらしい)は大切だから忘れないようにと言って、去っていた。
警察官が去ったあと、まずは荷物をトランクに入れようとトランクを空けて呆然。そうだ、私のゴルフのキャディバッグだけはトランクに入れていたのだが、それがないのだ。
うーん、私が丹精こめて揃えたゴルフ用品があっという間に幻となってしまったのだ。タイトリストのキャディバッグも、ニューゼクシオ(1W)も、アディダスのシューズも。。。
ゴルフは私にとって旅の大きなテーマ。今回もじっくりと練習をしようと思っていたのだ。
救いはホテルのマネージャーのDebさん(女性)がいろいろと面倒を見てくれたということ。
電話で警察へキャディバッグの盗難を報告してくれたし、レンタカー会社(ハーツ)に連絡をして代車をナナイモ空港で受け取れるようにしてくれた。そしてホテル代はいらないとも言われた。
ホテル側に駐車場の管理責任がどの程度あるかわからないが、そういう点は抜きにしてもとても丁寧に対応してくれた。そのおかげで、私たちもだいぶ落ち着きを取り戻したのだ。

というわけで私たちはホテルをあとにしてナナイモ空港に向かい、無事代車を手に入れた。フォードのトーラスで、三菱ギャランよりもランクが上のようだ。ちょっと得をした気になった私が悲しかった。(笑)

●ナナイモ警察にて
新たなレンタカーを手に入れた私たちだが、ゴルフのキャディバッグだけでなく、音楽CDを20枚ほど入れたケースも盗まれたのに気づいた。電話では上手く説明できそうもないので、直接ナナイモ警察に行くことにした。
警察官のホフマン氏は警察署に戻ってはいなかったので、受付で別の警察官にCDケースの盗難を届け出た。
警察官「どんな曲が入っていたんだい。」
私「うーん、日本の曲やアメリカの曲だよ。そうだ、ビリー・ジョエルが入っていたなぁ。」
警察官「ビリーか、あれはいいよね。」
私「そうだ、カナダの曲だって入っていたよ。セリーヌ・ディオンはカナダ人だろ。」
警察官(嬉しそうな顔をして)「おお、セリーヌか。じゃあ、ジョニ・ミッチェルは持ってきたかい?」
私「えっ?ジョニ・ミッチェルなんて知らないよ。」
てな具合の会話だった。このへんが日本の警察と違い、なんとものんびりしていて状況も忘れ楽しくなってしまった。(笑)

(CDケースはその後Debさんから連絡が入り、ホテルの駐車場の茂みで発見された。)

☆キャンベルリバーを目指して
キャンベルリバーはナナイモの北、約150kmのところにある。
30分くらいはけっこう交通量のある地帯だが、そこを越えてしまうともう車もまばら。19号線をひたすら北に向かう。この地域の高速道路の速度制限は110kmで、飛ばす車でもせいぜい120kmだ。日本みたいに無茶な車にはほとんどお目にかからない。1時間も走るとキャンベルリバーはもうすぐだ。
さて、宿はどうしようか。
ナナイモに8泊する予定を変更してしまったので、この先の予約は入っていないのだ。
そもそも最初はキャンベルリバーに滞在するつもりだったので、一度は予約も入れていた。そのうちの一つがサーモン・ポイント・リゾート
ネットで見つけたのだが、とてもよさそうなところだったのだ。とにかく名前がいい。サーモン・ポイントなんて釣り人でなくてもちょっとわくわくする響きではないか。
ひょっとしたらまだ空きがあるかもしれないと思い、サーモン・ポイントへと向った。
ここはカナダによくあるRVパーク。RVというのは日本でいうキャンピングカーで、そうした車でキャンプをする場所なのだ。サーモン・ポイント・リゾートにはRVを持たない私たちのような人のために、キャビンや貸しRVもある。
あこがれのサーモン・ポイント・リゾートの受付に辿り着いたが、結局空き部屋はなかった。ああ残念。夏休みの終わりとはいえ、やはり混んでいるようだ。
7泊しようと思っているので、やはり宿選びは慎重になる。今回の条件は眺望。せっかく海辺の町にきたのだから、海の見える部屋でのんびりしたいもんだ。
盗難のショックで疲れてはいたが、根性で海岸沿いの道路を行きつ戻りつしてようやく見つけたのが、サンドパイパー・ビーチ・リゾート。町の中心から車で20分くらいあるので、まわりの雰囲気も落ち着いている。うまい具合にキッチン付きの部屋が空いていた。設備はちょっと古いが、テラスから海が見えるので、海を見ながらのんびりと食事ができる。気が付けばサーモン・ポイント・リゾートとは目と鼻の先。
飛び込みで見つけたにしてはよい宿だと思う。オーナー夫妻もとても感じがよい。多少は運が向いてきたのかもしれない。

☆キャンベルリバーというところ
   
キャンベルリバーは人口約3万人の町、キャッチフレーズは「Salmon Capital of the World」だ。
ヴィクトリアから約250km北に位置するので、気候はだいぶ涼しくなる。たまたま滞在中は冷気が入ってきたようで、最高気温は22〜23度、最低気温は12〜13度くらいだった。通常だと25〜26度くらいまでは気温が上昇するらしい。
こんな気温だからとても快適な夏を過ごすことができる。
キャンベルリバーはバンクーバー島の東岸の町なので、海峡(ジョージア海峡)越しに本土の山々が眺められて、とてもユニークな眺望だ。雪をかぶっているような高い山々も見えるので、ひょっとしたらカナディアン・ロッキーが見えているのかもしれない。(真偽不明)
フィッシング・リゾートだけあって、ヨットがたくさん停泊しているし、貸しボート屋もいっぱいある。とても眺めのよい釣り用の桟橋(ディスカバリー・ピア)があり、多くの人がのんびりと釣りを楽しんでいる。でも、けっして混んではいない。日本にこんな桟橋があったらもうたいへんな人込みになってしまうのだろう、と少々うらやましい気持ちだ。
桟橋での釣りはルアー釣り。何度か足を運んだが、ついぞ釣り上げたシーンにはお目にかかれなかった。ただ、釣り上げた直後らしき巨大なサーモンを見た。けっこう大物が釣れることもあるようだ。

☆サーモンの都のシーフード
●海の幸は期待できるか?
釣りをすれば釣った魚を食べることが気になるのが日本人。海辺の町だから日本人としては海の幸を期待したくなる。
私も旅行が好きでいろいろな国の海辺の町を訪れたが、結論からいうとあまり期待できない。スーパーマーケットに行ってみればすぐわかる。そもそもスーパーの中のシーフード・コーナーなんてごくごく小さくて、置いてある種類もたかがしれている。サケ・タラ・オヒョウ(halibut)・エビ・ホタテ・カキ・カラス貝くらいのもので、カニ風味のスティックも堂々と売られていたりする。(笑)
やはり日本は魚に関しては世界一のこだわりの国だと思う。
だからレストランでシーフードを注文したってがっかりするだけなのだが、ついつい、ひょっとして美味しいかもと期待して注文してしまう。今回もサーモン・ポイント・リゾートのレストランで「Seafood Fettuccini」なるものを注文した。ホタテ・スナッパー(タイの一種)と野菜をカレークリームであえたパスタだが、まあこんなもんかという感じ。魚介類大国に住む日本人としては満足はできないのであった。

●魚は寿司に限る
ご多分にもれず、私も「魚は寿司に限る。」と思う日本人である。世界での寿司人気は衰えを知らず、カナダのスーパーにはだいたい寿司がおいてある。テレビのモーニングショーの料理コーナーで寿司の作り方を紹介したりもしている。だから、キャンベルリバーのような小さな町にも日本食レストランが2つもあるのだ。もちろん日本で食べるよりも割高だが、カナダ人はどんな寿司を食べるのか興味深いので、「山葵(ワサビ)」という店に入ってみた。
この店はレストランというよりも軽食店という感じで、看板にもSushi Cafe と書いてある。メニューを見ると最初にのっているのが「Makimono」だ。カナダの寿司はスーパーでもそうだが、巻き物が人気なのだ。もちろん「Nigiri」もあるが、ちょっと割高な感じ。私たちは Makimono(サーモンとキャンベルリバー)と天ぷらを注文した。キャンベルリバーという名のMakimonoの具はというと、サーモン・かに・アボガド・卵・きゅうり。
板前さんは日本人なので味は本物。美味しかったが、お腹がいっぱいになるほどの量はない。やはりここはCafeなのだ。

☆ゴルファー魂は死なず
ナナイモでキャディバッグを盗まれたときは、もう今回はゴルフはできないのかと落ち込んだが、ゴルファー魂は死なずである。翌日にシューズを買い、クラブはレンタルでプレーすることにした。キャンベルリバーのガレージセールで中古のプルカート(手引きカート)もゲットした。
キャンベルリバーにゴルフ場は3つある。一番本格的なのはストーニー・クリーク・ゴルフクラブだが、クラブもなくしたことだし初心に帰ろうということで、ストーニー・クリーク以外の2つのゴルフ場でプレーをした。
●サラトガ・ビーチ・ゴルフクラブ
ここは日本でいうショートコース。でも、パー3だけでなく、パー4もパー5もあってウッドを使えるホールがある。それに練習場もあるので、傷ついたゴルファー心(笑)を癒すのにはうってつけなのだ。料金は9ホールで15ドル、レンタルクラブは8ドル。
コースは荒れ放題で、日本の河川敷コースよりもひどい状態ではあるが、誰でも(未経験者でも)気軽に遊び半分にプレーするにはよいコースである。カナダらしいのは、こうしたコースでもメンバー制になっていて、日曜日の
朝はメンバーのコンペが開かれるのだ。
最初のうちはレンタルクラブの違和感からかまともに芯に当たらなかった。しかし、これは言い訳。9ホールをまわったあとで練習場で100球ほど打つことを3日続けているうちに、だいぶ当たるようになってきた。
実は現在はフォーム大改造中。もっと基本に忠実なフォームを身に付けて、いつの日か人に教えられるくらいのプレーヤーになりたい、と決心したのだ。改造フォームはまだまだしっくりこないのだが、ショートコースでは物足りなくなってきたので、いよいよ18ホールのゴルフ場に場所を移すことにした。

●セコイア・スプリングス・ゴルフクラブ
ダウンタウン近くにあるゴルフ場。距離が短い(300ヤード以下のパー4が8ホール)のが難点ではあるが、コースの手入れもよいし、とても美しいコースではある。
それにほどよく空いているのがいい。去年の夏休みはカナダでゴルフのハワイとか言われているケロウナに行ったのだが、ゴルフ場がとても混んでいたのだ。今回旅先にフィッシング・リゾートであるキャンベルリバーを選んだのは、釣りをする奴はゴルフはあまりしないだろう、という発想。予想どおり空いていて、他のプレーヤーと組まされることもなく、一人でプレーしていた。
料金は通常は42ドル(約3700円)だが、トワイライト料金というのがあって、14時からは30ドル、16時からは25ドルになる。クラブレンタルはウィルソンが20ドルで、キャロウェイは35ドルだ。私は当然ながら安いほうを選んだ。ウィルソンといいながら出てきたのはダンロップのスティール・コアというクラブ。まだ新しいスチールシャフトのクラブだった。
ここでは4日間プレーした。

スタッフの人たちの気持ちのよい対応が距離の短さををカバーしてくれた。旅先のゴルフもけっこうな回数になったが、稀に冷たい対応をされることもある。別に相手にそういうつもりはないのかもしれないが、「やはり俺たちは場違いなのか。アジア人だし、英語もあまり話せないからな。」と穿って考えてしまう。
このゴルフ場のスタッフはとても気持ちよく相手をしてくれる。私たちの拙い英語にもしっかりと耳を傾けてくれるし、プレーが終わると、「調子はどうだった。明日の予約も入れようか。」と聞いてくる。
スタッフというと一つ面白い話。コースを回っているとアジア人(中国系?)の若い女性が草むしりをしていた。会う都度に簡単な挨拶を交わしていたが、内心では、「やはりアジア系は下働きなんだな。厳しいな。」などと思っていた。
ところが最終日(4日目)のプレーを終え、女房とラウンジでビールを飲んでいると、その若い女性が声をかけてきた。なんと日本語なのだ。
話を聞くと、この3月に日本の大学を卒業したあと、知人の紹介でホームステイをしながらゴルフ場の手伝いをさせてもらっているという。れっきとした日本人である。
もう6ケ月近くなるが、この町で日本人に会ったのは初めてのこと。日本人遭遇確率の低い町のようである。

(カナダのゴルフ事情に興味のある方は去年のページをご覧ください。)。

☆ボート遊びの人々
   
まあ毎日ぶらぶらとしているわけだが、たまにはどこかに行こうということで、ストラスコナ州立公園に行ってみた。車で1時間ほどで、もう森林リゾートなのだ。多くの湖が点在していて素晴らしい公園だ。
カナダを旅していてよく見かけるのが、「BOAT LAUNCH」という表示。辞書で調べてみて、ボートを水に降ろす場所ということがわかった。
私たちが「BOAT LAUNCH」という表示のある湖畔でのんびりと景色を眺めていると、老夫婦がボートを車で引っ張ってきた。実際にボートを湖水に降ろすところを見るのは初めてだったので、興味津々で見ていると、奥さんのほうが話しかけてきた。
奥さんの話ではもともとはカナダ本土の北部に住んでいたが、9年前にコートニー(キャンベルリバーから南に50kmの町)に移ってきたという。クリーニングの仕事をしているという。
ボートのことを聞いてみた。
私「カナダではボートを持つのはたいへんなのかな?」
おばさん「そうでもないわよ。このボートは会社所有だけれど、従業員も使えるようにしているわ。」
私「でも高いのでしょ?」
おばさん「そんな高くはないわ。このボートは4,000ドル(約36万円)よ。」
40,000ドルの間違いかとも思ったが、彼女は4,000ドルと言ったように聞こえた。
でも最後におちがある。
私「仮に私が買えたとしても、東京では置くところがないよ。(笑)」
おばさん「それもそうね。(笑)」

☆マウント・ワシントン
ストラスコナ州立公園の翌日、今度はマウント・ワシントン・アルペンリゾートに行った。宿の奥さんに頂上からの眺めが素晴らしいと聞いたためだ。
海辺の町、キャンベルリバーから1時間もかからずにもう山岳リゾート、冬は広大なゲレンデとなる。この自然環境にはため息が出てしまう。
出不精の私が2日も続けて遠出(といっても1時間)をしたわけだが、このときふと次のようなことを思った。
高速道路が無料というのは地域の活性化に役立つのではないだろうか。
無料の効用は2つ。@無料ゆえ当然利用者、観光客も増えるし A無料であれば料金所など不要だから、今まで通過点にすぎなかった町も乗り降り可能となる。
このうちAの効用は大きいのではないだろうか。現在はICのない町っていうのはどうしても過疎化しやすいけれど、高速道路を開放すれば隣町との行き来も増えるし、住民の意識も変ると思う。(高速道路でどことでもつながっているという意識)
昔はともかくこれだけの車社会になっていまだに高速道路が有料なんて、ちょっと変。こんな国ってあまりないんだよなぁ。。。

☆ちょっとだけカナダっぽいこと
   
マウンテンバイク
子供たちに大人気のようで、マウント・ワシントンに行ったときにも貸し自転車屋が繁盛していた。日本であまり見ないのはリフトで自転車を頂上まで持っていけるところ。多くの人々(大人も)が自転車とともに頂上に登っていた。
●ヒッチハイカー
日本ではあまり見かけないヒッチハイカーだが、こちらではとてもよく見かける。ハイウェイでは「ヒッチハイク行為は違法だ」という看板も出ているが、けっこうチャレンジしている人が多い。そのたくましさには驚いてしまう。
でも求めに応じて車が止めるシーンには結局お目にかからなかった。
●木製の電信柱
ゴルフ場で気づいたのだが、電信柱が木でできているのだ。私の子供の頃は日本でも電信柱は木製でよじ登った記憶がある。現在は東京ではあまりお目にかからないが、こちらでは木製が主流とみた。帰国前に泊まったB&Bの周囲の住宅街の電信柱も木製だった。さすがは木材大国、カナダということか。
●ゴルフ場の看板
欧米の国々は自己責任だと言われる。大昔の学生時代に法律の授業でもそう教わった。アメリカの公園のシーソーには「事故を起こしても責任は負いません。」と書いてあるとか。
カナダのゴルフ場にもそうした警告がある。
要約すると「グリーンフィーを払ったとしても、貴方が物を壊したり、人を傷つけたりしたときの責任は、貴方自身の責任ですよ。」

☆B&Bオーナーは外国人
最近カナダやオーストラリアを旅行するときはなるべくB&Bに泊まることにしている。
B&BはBed and Breakfast の略。朝食だけが付いている小規模(せいぜい2〜3室)の家庭的な宿で、英国が発祥の地。だからカナダやオーストラリアのように元々英国の植民地だった国ではよく見かけるわけだ。
日本流にいえば民宿。日本では洋風民宿をペンションなどと呼ぶようだが、このB&Bは日本の民宿やB&Bとはちょっと趣が異なる。
小規模に商売っぽくなくやっているのだ。部屋が余っているので貸してあげますよ、くらいの気楽な感覚で、家だって本当に普通の家だ。
日本のような規制だらけの社会では、こうした簡易な宿をやるにも旅行業法という法律をクリアするのがたいへんなのだが、外国では簡単に開業できるようなのだ。
例によって、泊めるほうも泊まるほうも自己責任でやりなさいという精神なのだろう。
B&Bに泊まるとオーナーとの会話やらなにやらで逆に気を遣って疲れてしまうこともあるのだが、国柄や土地柄が垣間見れて面白いのだ。今回も到着日と帰国前夜はB&Bに泊まることにした。

●ヴィクトリアのB&B
名前は「THE CARRIAGE HOUSE BED & BREAKFAST」。場所は町の中心から10分歩いたくらいだが、とても落ち着いた雰囲気で便利な場所柄のためか、まわりにはこうした小さな家族経営のB&Bやインが多い。
建物は100年以上!経っているというが内部はとてもきれいでそんなに経っているとは思えない。(でも音はちょっと響く。)
ここの奥さんは日本人。(なおこさんという)カナダに来て5年という。
カナダ人は移民に慣れているそうで、とても暮らしやすいとのことだ。
前回のカナダ旅行(みちの九 「ケロウナ カナダのゴルフ天国」)でも触れたが、なおこさんに聞いても、やはりカナダ人とアメリカ人はいろいろな点で違うとのこと。
この点は多くの人が共通して感じているようで、機中で話をした日系カナダ人のスチュワーデスさんもこの点を力説していた。(どう違うかは前回の記述を参照)
なおこさんの旦那さんはアメリカ人だが、アメリカよりもカナダのほうが性に合うということで、30年前に移住してきたとのこと。
アメリカとカナダの行き来(移住)は比較的簡単だそうで、カナダっぽい人がアメリカから来て、アメリカっぽい人がカナダから出て行くので、カナダはよりカナダらしくなるということか。(笑)

●コルドバのB&B
帰国前夜はコルドバという町(ヴィクトリアから20分くらいの空港への途中にある町)のB&Bに泊まった。
予約をしていたのはCordova Ridge B&Bだが、実際に泊まったのは Bayside Ridge B&B。何故かというと、Cordova Ridge B&Bのオーナーがダブル・ブッキングしたとかで、こちらにまわされたのだ。(普通はないことだが。。。)
ここの家族は旦那さんがフランス人、奥さんがベトナム人。旦那さんは1980年にこちらに移ってきたとのこと。奥さんとどうやって知り合ったかは不明。
旦那さんは宿(3室)の運営が仕事で、奥さんはヘア・スタイリスト。要は床屋さんで、家の中に床屋用の例の椅子が置いてある。
子供は2人いて、9歳の男の子と7歳の女の子。ユニークなのは2人ともいわゆる学校に行かせていないのだ。旦那さんの考えらしく、ヴァーチャル・スクールとかいってパソコンで授業を受けられ仕組みがあるそうで、そういう形で勉強している。親もだいぶ勉強を教えているようだ。
旦那さんはフランス語を教え、奥さんはヴェトナム語を教えているので、男の子は9歳にして、英仏越の3ケ国語を話せるというわけだ。うーん、うらやましい!
この宿はとても家庭的な雰囲気で朝食も家族と一緒に食べるスタイル。これまでなかったスタイルだ。
さほど客に気を遣うわけでもなく、奥さんは朝から女の子にベトナム語で数の数え方を教えている。
しかも朝食の途中で急にフランス人の友人とやらもやってきて当たり前のように朝食を食べ始めた。(笑)
そのフランス人(友人のほう)は日本で18年働いていたとかでけっこう日本通。ゴルフも好きなようで、ゴルフの話題になったときこんなことを言っていた。
フランス人「いやあ、日本はゴルフのプレー代が高いのには驚くけれど、もっと驚いたことがあったよ。日本人はビルの屋上(top of the building)でゴルフをするんだもんなぁ。あれにはびっくしたよ。」
うん、たしかにあります。町なかの屋上にネットを張って練習をするところが。なにやらちょっと日本人であることが悲しくなった。(笑)

☆旅は終わって
今回の旅は成田空港で航空券を受け取れないわ、旅先で車上荒らしに遭うわで、これほど波乱に富んだ旅は初めてだった。
空港では旅に出るべきかけっこう悩んだけれど、今にしてみれば行ってみてよかったと思う。
どの国にも悪い奴がいっぱいいる。
営業停止になった旅行会社の奴らなんて極悪人だ。商売だからそれがうまくいかなくて破綻することはありうるのだから、その点はしかたないと思う。でも何故お客さんに電話一本できなかったのか。ドッキリカメラではないのだから、空港に行ってみたら航空券はもらえませんでした、というのはひどすぎる。そういう人たちは職業人としての倫理を持っていないだけではなく、人間としての倫理も持ち合わせていないのだろう。(怒りは収まらず!)
ナナイモの車上荒らしも然り。
でも救いはどの国にもよい人がいることだ。
往路の日系カナダ人のスチュワーデスさんはとても同情してくれて、内緒でワインを一本プレゼントしてくれた。そして航空会社(エアカナダ)の苦情申立書に事情を書けと勧めてくれた。もちろん航空会社には何の責任もないわけだが、つい先日航空会社から3000ドル(約21,000円)のクーポン券が送られてきた。まあお見舞いのようなものみたいだ。
キャンベルリバーのゴルフ場(セコイア・スプリングス・ゴルフクラブ)では、私がゴルフクラブを盗まれたことが口コミで広まったらしく、何人ものスタッフが「盗まれてたいへんだったわね。」と声をかけてくれた。
とてもよい教訓になったと今は冷静な頭で考えている。

私の旅にも人生にも、これからも多くの困難が起こるだろう。でも、きっとめげずに進んでいけると思う。うん、たぶん。
最後の最後で話そうと思っていたことがあったのだが、訳あって話せなくなった。いつの日か話せる日がくるだろう。(ちょっと意味深)

それでは次の旅までさようなら。




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