顔学講座

社会が顔を作る

朝海猛(日本顔学会)


 リンカーンが、アメリカ力合衆国第16代の大統領に就任した直後、友人がひとりの人物を紹介して「あなたに役立つ」と言った。そのとき、リンカーンがその人物について、「男の顔は40になればその人が全責任を負うべし」と、推挙を断った話は有名だ。

  40になるまでの社会生活の投影が、顔を美しくも醜くもすると考え、その人物に疑間を投じたリンカーンは、すぐれた顔学者だった。

人の顔は社会や生活が作る。独裁者の支配する国の人々、混乱した国の人々。彼らの顔を思い浮かべてください。社会が乱れたり目標を失うと、人の顔は卑しくなる。少なくとも、高貴な顔、信頼できそうな顔ではない。

今、日本とて、顔ではえらそうにできない。もろに社会を[顔現]している。誤解を恐れずにもうひとつ例を出すと、美人タレントたちの顔。例外なく口が大きくなっている。口が大きいのも新型美女の基準なのか。

  古来から人相学では、ロの大きい女性は動物的であり、積極性に富むと断じる。そして一歩間違うと「尻軽」になりかねない、ともいう。むかし、美女の口は小さかった。まぁ、貞潔なんていう男に都合のいい条件を女性に押しつけたかったのだろうが。


 現代の美女には、積極性という長所だけを期待し、一歩間違えるほうはご容赦願いたいのだが、さて?

(地球人通信1996.10)