顔学講座

顔に個性を取り戻せ!
朝海猛(日本顔学会)


 前回、日本女性の口が大きくなりつつあることを紹介したが、逆に「いい男」の口は小さくなってきた。キムタクにしろ、武田真治にしろ、往年の二枚目より顔のバランスでいえば口は小さい。

 となると現代の若者の顔は男女差を狭めつつあるのだろうか。「だから私たちが増えているのよ」とニューハーフはおっしゃるかもしれない。

 男女間の接近もさることながら、現在は本人の顔を見ていて気になるのが、個性の乏しさだ。10人のうち半数は似た者同士に見えてくる。

 衣食住が均一化され、化粧術が巧みになって、さらに整形も可能という時代の現象かも。化粧や美容整形は、社会生活(他人に見られる生活)上で重要であり、否定するつもりはないが、はたして自分の個性を出すための手段と自覚しているかどうか。

 こうした状況に加え、今の日本には社会の緊張感が希薄だから、生き生きした個性あふれる顔は発見しにくくなった。顔の語源は気顔(キホ)とされる。本人の気力、気持ちが外に表れるのが顔。他人との違いを表現してほしいものだ。


 犯罪者だけが個性的な顔、という昨今の日本じゃ、笑い飛ばすわけにもゆかぬゾ。

(地球人通信1997.4)