今月の編集部おすすめの本


【ライフスタイル】
自然に学ぶ 生活の知恵
「いのち」を活かす三つの原則
石川光男
日本教文社
定価1333円+税

″自然に学ぶ″新しいライフスタイル
 著者が10年前に出した『自然に学ぶ共創思考』の、いわば゛健康編″。「バブル崩壊の火種がくすぶっていたように、世界一の長寿社会の背後に生活習慣病の増加がしのび寄っている」と、今の日本人のライフスタイルに危機感を抱く。そこで、現在の日本人の健康問題を考えるとき、著者は「自然に学ぶ」ことを提案する。自然界を支えているシステムには、゛バランス″、゛はたらき″、゛つながり″という三つの原則が働いている。その原則を自らの健康管理に取り入れた新しいライフ・スタイルを、著者は、この本でわかりやすく説き明かしてくれている。



【ライフスタイル】
すべては「単純に!」(シンプリファイ)でうまくいく
ローター・J・ザイヴァ−ト、ヴェルナー・ティキ・キュステンマッハー
訳=小川捷子
飛鳥新社
定価1600円+税

役に立つ人生の整理学
 『すべては「単純に!」でうまくいく』が多くの人に読まれている。現代人は、主に、物、お金、時間、健康、人間関係、パートナーという6つの厚い層に囲まれて生きている。その主目的は、自分に合った人生の目的を達成するためで、そのためには、先の6つの厚い層をできるだけシンプルに、必要最小限にそぎ落として生きることだと、この本は教えてくれる。実生活に即し、具体的なところが人気の秘密といえる。情報が氾濫、複雑化する現代社会においては、人生の整理学は、確かに必要かもしれない。



【体験学習】
ファシリテーション革命
参加型の場づくりの技法
中野民夫
岩波アクティブ新書
定価740円+税

゛ファシリテーター″の役割が注目されている
 最近、゛ファシリテーター″という言葉をよく耳にする。いったい、゛ファシリテーター″とは何なのか? 「一般には、参加・体験・相互作用を重視した学びや創造の場である゛ワークショップ″の進行促進役を゛ファシリテーター″と言うことが多い」と説明する。゛ファシリテーター″は「先生ではないし、上に立って命令する゛指導者″でもない」。単なる司会者とも違い、グループ・ワーク、プロジェクト・ワークなどで、参加者ひとりひとりの思い、メッセージ、意見などを、上手に引き出し、創造的な場をつくる、演出する゛支援者″といった感じである。アメリカの心理学者、アーノルド・ミンデル氏が、゛プロセス・ワーク″で、使用したのが最初だと思うが、現在では、゛ファシリテーター″の養成を目的とした講座が日本でも開かれるようになった。企業、行政、市民団体、学校などでも、゛ファシリテーター″の存在が注目されはじめている。



【世界】
いま、抗暴のときに
辺見庸
毎日新聞社
定価1400円+税

″もの食う人びと″の視点から世界を見る
 辺見庸さんは、ベストセラー『もの食う人びと』(共同通信社刊、角川文庫)を発表した後、世界に対する発言は、作品ごとにラジカル度を増してきている。この著書も、そのラジカルな作品のひとつだが、それは、いったいどうしてかということを考えると、その原点には、あの『もの食う人びと』があるような気がしてならない。この作品は、彼が共同通信の記者時代、世界で最も貧しい生活を強いられている人々の海に潜り込み、″食えない生活″を目撃、その実状を丹念にルポしたものだった。辺見さんは、その人たちの視線で世界を凝視し続けることを自らに義務づけているのではないか。″食えない人々″の側から見たとき、世界はどう映るのか、その答えがこの作品はじめ、最近の辺見作品には顕著に現われている。



【世界】
もしも、あなたの言葉が世界を動かすとしたら
マーガレット・ウィートリー
訳=杉田七重
PHP研究所
定価1450円+税

″言葉の力″が世の中を変える
 「わたしたちはみな、もっと早くやれ、もっと競争力をつけろ、さらなる利益を追求せよと、発破をかけられているのが現状です。しかもそこには短期的な展望しかありません」と、著者のマーガレット・ウィートリーは、『もしも、あなたの言葉が世界を動かすとしたら』で、現状を分析、「ものごとは明らかにまちがった方向に進んでいる」と指摘する。さて、そうならば、私たちにはどのような脱出手段があるのだろうか。著者は「飾らない対話こそ、この世界に働きかけ、変化を起こす、大きな力が宿っている」と″言葉の力″に原動力を見出そうとしている。


(ステップアップ マイウエイ ぴあ2003.4掲載)