半導体素子使用上の注意事項

基板実装上の注意事項

使用環境に対する注意事項

設計上の注意事項

半導体素子の寿命



基板実装上の注意事項

静電気
ICは静電気に弱いものです。特に乾燥する冬場などは静電気を帯びやすいので注意が 必要です。ICのリードに触る前にアースに触って人体の静電気を逃がしましょう。 リストストラップなどで静電気を防止すれば完璧です。
半田付け
半田付けの方法には、半田ごてによるもの、リフロー法、半田ディップ法等が有ります。 一番気を付けないといけないのは温度です。特に半田ディップを行う時には注意が必要です。 半田ごてを使う時には漏電に注意しましょう。100Vがこて先から印加されてICを 破壊することがあります。
放熱板
半導体素子と放熱板の熱伝導を良くするため、シリコーン樹脂を塗布します。 シリコーン樹脂は隙間ができない範囲でできるだけ薄く塗った方が良いです。 放熱器をネジ絞めする時には絞めすぎないように気を付ける必要があります。 絞めすぎると内部のチップが割れてしまうことがあります。また素子と放熱器の間に 異物が入らないように気を付けましょう。

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使用環境に対する注意事項

温度環境
一般のICは周囲温度摂氏85度までしか保証していません。気温が85度に上がることは 無いのですが、密閉したケースに入っていたりして放熱が悪いと周囲温度は85度を超える ことがあります。特に消費電力の大きな素子は注意が必要です。
強電界・強磁界
ICは強磁界にさらした場合、モールド樹脂やICチップ内部の分極現象によ りリ−ク電流の増加などが発生することがあります。 テレビの偏向ヨ−クの近傍にLSIを実装した事により、誤動作を起こしたという事例 もあります。このような場合には、実装場所の変更や電界/磁界シ−ルドが必要です。
外乱光
半導体素子に光を与えますと光電効果により、起電圧が発生し誤動作を起こす場合 があります。モールド樹脂によっては赤外線を通すものがあるので注意が必要です。

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設計上の注意事項

最大定格
最大定格とは、瞬時たりとも越えてはならない規格です。 最大定格の項目には端子電圧、電流、許容損失、温度などがあります。 最大定格を超えると素子が劣化したり破壊したりします。 外部からのサージ電圧がかかる恐れのある場合は最大定格を超えないような保護回路を 組み込む必要があります。
ラッチアップ
CMOS構造のデバイスに特有のラッチアップと呼ばれる状態になることがあり ます。これはCMOS IC自身が内蔵する寄生のPNPN接合(サイリスタ構造)が 導通し、ICに数百mA以上の大電流が流れ、破壊に至る現象です。 ラッチアップは、入力・出力電圧が定格を越えて内部素子に大きな電流が流れた場合、 あるいは電源端子の電圧が定格を越えて内部素子が降伏状態になったときに起こります。 この場合定格外の電圧印加が瞬間的なものであっても、一度ICがラッチアップ状態にな ると大電流は保持され流れ続けます。ラッチアップを防ぐには次の点に気を付けます。 入出力端子の電圧レベルをVccより上げない、またはVssより下げない。
熱設計
半導体素子の故障率は使用温度により大きく加速されます。また、内部の温度は 周囲温度と素子自身の電力消費による温度上昇の和となります。信頼性確保のためには 次の点に配慮して下さい。

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半導体素子の寿命

熱ストレス
温度は寿命を短くする最大の要因です。特に消費電力のおおきな素子は ディレーティングで温度を下げることが信頼性を上げることにつながります。 オンオフの繰り返しなどによる温度変化も寿命に効きます。温度変化があると 熱膨張係数の差によって繰返し応力がかかり、接合部分がオープンしたりします。
電流マイグレーション
ICのチップ上では数マイクロメーターの太さのアルミで配線されています。 アルミは電流密度が高くなるとマイグレーションを起こして断線にいたります。 通常はそのようなことにならないよう十分な太さで設計がされています。
ストレスマイグレーション
アルミ配線はシリコン基板の上に乗っており、さらにその上のパシベーション膜に はさまれています。パシベーション膜は数百度の高温で形成されるので、室温に下がる と熱膨張係数の差でアルミとの間に応力が生じます。この応力が大きくなると アルミがマイグレーションを起こして断線にいたります。 通常ではそのようなことにならないように設計をしています。
アルミ腐蝕
モールド樹脂は水分をある程度通します。また樹脂とリードの境界は剥離し易くて その間からも水分が侵入します。水分と一緒に塩素イオンなどが入り込むとアルミ配線を 腐食させ断線にいたります。半田のフラックスには塩素イオンが入っているため半田付け の後の洗浄が悪いとアルミ腐食を起こします。
表面汚染
水分と一緒にナトリウムイオンなどがチップに侵入すると汚染による故障が 発生します。ナトリウムイオンはシリコン酸化膜の中で自由に移動して、電位の低い ところに集まります。集まったイオンがチップ表面にリーク電流を生じさせて 故障となります。パシベーション膜はナトリウムイオンをブロックしますが、この 膜に欠陥があると侵入を許してしまいます。
半田脆化・リード金属疲労
電源のオンオフなどによる温度サイクルがあると、熱膨張係数の差による応力が 発生します。基板と素子の膨張係数の差による応力はリードと半田によって吸収されます。 応力が繰り返されることによりリードの金属疲労、半田の脆化が進みます。 最後にはリードが折れるか半田付け部分が外れてしまいます。
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niwa@asa.email.ne.jp