乗りにくい路線(近畿〜九州)


 近畿

 大都市のすぐ近くにも、意外と立ち寄りにくい区間があるものです。

 【1日2往復】南海電気鉄道・和歌山港線(和歌山港〜水軒)=2002/05/26廃止
 和歌山港駅までは特急「サザン」も走っていますが、末端の1駅区間は超閑散区間になっています。この区間の第3種事業者は和歌山県なので、何らかの公益目的で残しているのでしょう。乗車したのはもう10年以上前になりますが、その時も今もほとんど同じ形態のまま、走り続けているのが不思議な区間ではあります。
 −−と書いていたところが、2001年9月の和歌山県議会で土木部長が「1日平均利用者が7人。踏切幅が狭く道路渋滞を招いているため、廃線も選択肢の一つ」と答弁。県と和歌山市、南海は同年12月、「廃線やむなし」で一致。廃止日は繰り上げとなり、あれよあれよという間に、上記の日付で廃止されてしまいました。
 というわけで、過去帳入りしていますが、記録と惜別の意味で、この欄の記述は残させていただきます。 

 【1日2往復】有田鉄道(藤並〜金屋口)=2003/01/01廃止
 2001年11月1日ダイヤ改正で、従来の5往復から朝・昼の1日2往復だけになりました。しかも、運転順序が上り→下りとなっているので、起点の藤並駅側から列車だけで往復するのは大変です。なお、通学生などが乗らない休日と第2・第4土曜日はすべてがバスで、列車は1本も走りません。
 こちらも廃止されました。寂しい限りですので、この欄の記述も残させていただきます。(運休期間のある路線も参照)

 【休日2往復】西日本旅客鉄道・山陽本線(兵庫〜和田岬)
 鶴見線、名鉄・築港線と並ぶ臨海工業地帯の通勤用路線。利用者のほとんどいない休日は朝と夕に1往復ずつ走るだけです。平日は2001年7月の電化により増発されましたが、兵庫発で9:10〜17:15の間は1本もなく、乗りにくいことに変わりはありません(ダイヤは2012年1月現在)。2001年7月7日には神戸市交通局・海岸線が開通し、同線にも和田岬駅(地下鉄出口はJR駅の目の前です)が設置されたので、一般の人は地下鉄を使えば困らない状態。報道によると、「JRの線路が地域を分断している」などとして、廃止を求める声も出ているもよう。成り行きに注目したいと思います。

 【朝のみ運転。土曜・休日は4往復】阪堺電気軌道・上町線(住吉〜住吉公園)=2016/01/31廃止
 2014年3月1日のダイヤ改正で住吉公園停留場発着の電車の大半が阪堺線・我孫子道発着に変更されたため、住吉公園発着の電車は天王寺駅前〜住吉公園間の平日5往復、土曜・休日4往復と激減。しかも運転は朝のみで、住吉公園停留場は平日8時24分発が最終となり、「日本一終電が早い駅」として知られるようになりました。同停留場は阪堺線・住吉鳥居前停留場と近接しているとはいえ、あまりの大胆な策に、びっくりです。
 ちなみに路面電車の閑散区間としては、かつては名鉄・岐阜市内線の岐阜駅前〜新岐阜駅前(2003/12/01休止、05/04/01そのまま廃止)がありました。日中は交通渋滞により新岐阜駅前で折り返すことが多く、岐阜駅前停留場には「あまり電車は来ません」旨の掲示があったのです。
 

 中国・四国

 山陽と山陰を結ぶいわゆる「陰陽連絡線」は、もともと運転本数の少ない線区が多いのですが、近年のダイヤ改正のたびに、一段と列車の削減が進んでいるのは寂しい限りです。

 【1日3往復】西日本旅客鉄道・芸備線(東城〜備後落合)
 2005年3月1日のダイヤ改正で減便され、新たに超閑散線区の仲間入りをしてしまいました。

 【1日3往復】西日本旅客鉄道・木次線(備後落合〜出雲横田)
 三段式スイッチバックが存在するこの区間もどんどん列車が削減されてしまいました。私が出雲坂根駅で「延命之水」を飲んだ頃は、たしか急行も走っていたはずですが……。従来は4往復だったのですが、2003年12月改正でさらに削減され、3往復化されてしまいました。なお、観光シーズンには定期列車とは別に、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が走ることもあります。(運休期間のある路線も参照)

 【1日4往復】西日本旅客鉄道・三江線(口羽〜浜原)=2018/04/01廃止
 陰陽連絡線の中で最後に開通した区間で、もともと流動が少ないところを無理に結んだのでしょう。途中の宇津井駅は高架上にあり、地上に出るには何段もの長い階段を降りねばならないのはよく知られています。

 【1日3往復】西日本旅客鉄道・小野田線(雀田〜長門本山<本山支線>)
 公立学校の完全週休2日制で、以前は第1・第3土曜日だけ走っていた昼下がりの列車もなくなり、2002年3月改正では毎日5往復に削減。さらに2012年3月改正で、朝2往復、夕1往復のみになってしまいました。かつてこの区間は、旧型電車クモハ42が走っていることで知られていましたが、私が乗りに行ったときは、肝心のクモハ42はお休みで、同じく単行ではあるもののクモハ123が代走していました。運転士さん(ワンマンです)に聞いたら「明日(月曜)の午後までお休み」とのこと。クモハ42は2003年3月15日のダイヤ改正で運用を外れてしまったため、残念ながら乗車機会を逃してしまいました。

 九州

 JR九州の大規模な列車削減が注目を集めています。

 【普通列車は3往復】九州旅客鉄道・日豊本線(佐伯〜重岡)
 【普通列車は下り1本・上り2本】九州旅客鉄道・日豊本線(重岡〜延岡)
 JR九州は2016年10月、株式を東証1部に上場し、完全民営化を果たしました。この結果、鉄道事業の経営改善によりいっそう取り組む必要が生じたことなどから、同社は2017年3月17日のダイヤ改正で、九州新幹線と在来線を合わせて1日117本の減便を実施しました。
 なかでも、日豊本線の大分・宮崎県境は極端です。以前から普通列車の運転本数は佐伯〜市棚=3往復、市棚〜延岡=4往復だけとなっていましたが、さらに削減。この区間を普通列車だけで乗り通そうとすると、特に下りは佐伯6時18分発、延岡7時26分着の朝の1本(2761M)しかなくなりました。なお「JTB時刻表」にはグリーン車記号とともに「グリーン券は当日車内で発売します」との記載があり、特急用車両の間合い運用であることがわかります。
 ちなみに、佐伯〜市棚にある上岡駅と隣の直見駅、(直川駅を1駅飛ばして)重岡駅と隣の宗太郎駅は、続けて読むとそれぞれ人名のようになる(上岡直見、重岡宗太郎)というのが、駅名クイズなどではおなじみですが、重岡駅、宗太郎駅の順でたどれる列車は、上記の列車だけということになりました。 

 【1日3往復】九州旅客鉄道・肥薩線(人吉〜吉松)=2020/07/04から運休中
 言わずと知れた「日本三大車窓」の一つ、「矢岳越え」の区間。大畑、真幸とスイッチバック駅が2つあり、特に大畑駅はループ線の途中にスイッチバックが含まれるという日本でここだけの線形が特徴です。
 九州新幹線開業とともに観光ルートとして整備され、「いさぶろう」「しんぺい」が走るようになりましたが、2018年3月17日のダイヤ改正では1往復削減され、3往復となりました。
 さらに、その吉松駅より先では、吉松〜西鹿児島を運行する特急「はやとの風」2往復も繁忙期のみ運転と格下げに。18年はNHK大河ドラマ「西郷どん」が放送され、鹿児島県に注目が集まりましたが、それでも減量ダイヤとなったのは厳しいですね。

(2022年01月02日最終更新)


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