Q2 鉄道と軌道の違いは


A2 根拠法がいまだに別

 「鉄道」の根拠法は地方鉄道法から鉄道事業法へという変化を遂げましたが、路面電車などの「軌道」は、軌道法という別の法律が根拠法になっています。なぜこんなことになっているかというと、鉄道事業が運輸省の所管なのに対し、軌道については、運輸省と、道路を管轄する建設省との共管となっているためです。軌道法は若干の手直しはされてきているものの、いまだにカタカナ書きの古めかしい文体が異彩を放っています。また、鉄道事業では「許可」(2000年2月末までは免許)という用語を用いますが、軌道法では「特許」といいます。免許と特許の実質的な違いはほとんどないとされていましたが、鉄道事業の方は許可制移行により、一定の基準を満たす場合には、原則として営業を認めるという方向に変わることになります。一方、軌道の方は、自動車交通等との調整が必要なため、従前通り特許制を維持したのだと推察します。

 とはいうものの、鉄道と軌道の区別というのは、わかったようでわからないものです。鉄道は原則として道路に敷設してはならない(鉄道事業法第六十一条により、やむを得ず建設するときは建設相の許可が必要)のに対し、軌道は特別の事由のない限り道路に敷設するというのが原則(軌道法第二条)です。しかし、道路上はでなく専用の敷地(軌道法では「新設軌道」と称する)に敷設されている名古屋鉄道・豊川線が軌道である一方、道路との併用区間もある江ノ島電鉄が鉄道であるなど、両者は混然としているのが実態です。地下鉄でも大阪市だけは軌道です。
 最近では、新設されるモノレールが「都市モノレールの整備の促進に関する法律」(1972年制定)による補助を受けるために軌道となる例が北九州高速鉄道などに見られます。さらに案内軌条式のいわゆる「新交通システム」では、乗っていると1本の路線なのに、区間によって鉄道と軌道が入り交じっているケースも神戸新交通(ポートライナーほか)はじめ各地で見られます。これも道路上に設置されている場合は軌道扱いになるのに、同じ道路でも「港湾道路」の場合は港湾施設の一部ということで鉄道扱いになっているようです。運輸、建設両省のなわばり争いという気もします。
 中央省庁改革により、2001年1月には両省は国土交通省に統合されました。従って、鉄道も軌道も一つの省の中で事務が完結することになったわけです。これを機に、鉄道事業法と軌道法の一本化にも期待したいものです。

 ところで、軌道法には、鉄道事業法の第2種や第3種に相当する上下分離の規定はありませんが、旧・地方鉄道法と同様に第十六条で運転管理委託と受託が認められています。西日本鉄道・北九州線は1995年4月1日から筑豊電気鉄道に業務委託していますが、路線の大部分が廃止される2000年11月26日を機に、存続区間は鉄道事業に切り替え、西鉄が第3種、筑豊電気鉄道が第2種となりました。また、都営地下鉄12号(大江戸)線の環状部を建設中の東京都地下鉄建設は、軌道法適用の舎人新線(日暮里〜見沼代親水公園(仮称)の新交通システム)の建設も担当していますが、経費削減のため、完成後は東京都に運転委託することも考えられています。


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