Q1 鉄道事業法とは


A1 鉄道事業の根拠法

 1987年4月1日。ご存じの通り、日本国有鉄道(国鉄)が民営・分割化され、JR旅客6社と貨物1社(そのほかに通信、研究所など)が発足した日ですが、この日はJRだけでなく、民鉄も含めた鉄道界全体にとって節目の日でした。
 それまでは、同じ「鉄道」であっても国鉄は日本国有鉄道法、民鉄は地方鉄道法と別々の根拠法に基づいて規制・監督を受けていました。
 しかし、JR各社は「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社法」という特別法に基づく特殊法人ではあるものの、形態の上では多くの民鉄と同様に株式会社になりました。このため国鉄改革と同時に1987年4月1日施行された鉄道事業法に基づいて、民鉄と同様の免許制に移行(2000年3月からは許可制)することになりました。つまり、JRと民鉄は鉄道事業法という同じ土俵に乗ることになったわけです。

 旧・地方鉄道法と鉄道事業法には様々な相違点がありますが、私なりに改正ポイントをまとめると、以下のようになります。
 (1)JRと民鉄の規制を一本化
 (2)大幅な規制緩和(ダイヤ、料金などの変更を簡略化)
 (3)鉄道の運行と所有の分離を可能に

 このうち趣味的に面白いのは(3)です。
 国鉄改革の焦点の一つは貨物輸送の扱いでした。旅客輸送は地域内の輸送が大半のため、地域単位に分割することが可能でしたが、貨物輸送は1000km超の長距離輸送をも一貫して担当できる組織とする必要があり、全国1社体制とすることが望まれました。しかし、貨物会社がインフラ(線路)を自ら保有することはコスト的に無理があるのは明らかでした。
 そこで採用されたのが、インフラの所有・建設主体と運行主体を分離する「上下分離」の考え方で、インフラは旅客会社が所有し、貨物列車を運行する会社は旅客会社に対し、線路使用料を支払うというものです。

 鉄道事業法はJRと民鉄を同列に扱うことが原則ですから、上下分離の考え方は、JRだけに認めるべきものではありません。そこで、貨客分離以外での適用も認めることになり、第2種鉄道事業第3種鉄道事業という区分が生まれました。
 考えてみれば、道路交通、航空など他の交通機関では、インフラ(高速道路や空港)の所有・建設主体と交通事業者が異なるのは当たり前ですね。同様の考え方を鉄道事業にも採り入れることで、鉄道インフラの整備促進を図ろうという狙いもあったのです。


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