雑記帳


星明かりと月明かり
まだ学校の生徒だった頃は股旅ものの小説が好きで、その中に夜旅をする主人公が月明かりや星明かりだけを頼りに提灯も下げず街道を行く情景が出てくる。夜の都会の明かりに慣れきった子供には、「月や星ってそんなに明るいものか」としか思えず、地方に旅行に行って街灯の明かりのない外に出ると、本当に真っ暗で不安になった。
夜間登山らしきことをしたことは一回しかないのだが、昼間でさえ暗い植林の中を歩いたものだから夜は本当に真っ暗で、ヘッドランプの明かりが唯一の照明だった。たまに林が切れると遥か遠くに都会の明かりが海の一部のように見えて、日帰り登山だというのに誰もいない山の中で懐かしささえ感じさせられたものだ。そのときは空の天体を気にする前に夜が明けてしまった。
四方を山に囲まれて町の光が入ってこない場所で幕営すると、晴れた夜空で月がなければ都会では見ることのできない天の川が見られる。でも星だけでは足下がよく見えない。これが満月でも出ていようものなら、少なくとも外ではヘッドランプ不要。10メートルくらい離れても人の顔が区別できる。もっとも、月が煌々としているときは、町中同様に星はあまり見えない。
満月時の明るさならば、江戸時代の渡世人でなくても夜道を歩いていけそうだ。樹林の少ないアルペン的な稜線なら、山頂の小屋から早立ちする人はヘッドランプを点ける必要はないかもしれない。でもガレ場だとやはり必要か。

 


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