雑記帳


英語第二公用語構想
英語で「山に登る」とはなんと言うのだろう?やはりclimbingか?しかしクライミングといったら天然にせよ人工にせよ壁を登るような気がする。高尾山を登るのも谷川岳岩壁を登るのもジムの人工壁を登るのもclimbingでよいのだろうか?確かに日本語ではみな「登る」と言ってはいるが....。それにそもそも高尾山も谷川岳もmountainか?高尾山とかはhillではないのか?


こんなレベルのことで自ページ英文化構想の初っ端から迷っていると、総理大臣の私的諮問機関(つまりブレーンですな)が「英語を第二公用語に」との報告書を出したという新聞記事が目に入ってきました。アジアで比較しても英語力が弱い、これではこれからのグローバル時代に外交交渉や商契約上の協議を主導的に進められない、というのが基盤にあるようです。対策の一環として、上は官公庁文書から下はレストランのメニューまで英文を併記する、小学校から英語を習わせる、英語教師を夏休みの間とか海外研修に出す、などという案も出ているらしい。
とりあえず思いつく案を並べてみました、という趣ですね。安直の感は否めません。たとえば初等教育からの英語授業ですが、「子供は頭が柔軟だからこの時期から覚えさせれば....」という考えが前提にあるように思えます。しかしそのもくろみ通りにはいかないでしょう。小学生が英語を習ったとして、それを使う場所がない。多言語国家でない日本では日本語さえできれば(もちろん方言でも)、何の不自由もない。使わない技術はすぐさびる。毎日WEBサイトを見れば、なんて案もあるかもしれませんが、読解能力は上がっても交渉能力の基礎の会話力はいつまでたってもつかないでしょう。もちろん表現力も。要するに成人するまでに記憶できる単語の数が少々増えるだけ、という結果になる気がします。
どちらかといえば公務員や会社の採用試験で英語試験を強化したほうがよほど当構想をぶちあげている人たちの目的に叶うのではないかと思います。だいたい中学校・高等学校と6年間も現場では使いものにならない英語教育をやっていることに大した反省もせずに、ただ教育年数を増やしましょうとか、和製英語が氾濫している町中にさらに英単語(文章ではない!)を溢れさせましょうという単純な発想で効果が現れるわけがない。


学校では生徒の事実上最大の動機付けは「受験でいい点を取る」というもの。構文(例.not only〜but also...)とか単語とかの機械的暗記主体の教科内容を続けている限り、自分の意見を英語で言えるようになるわけがない。言語は使ってこそ身に付くはずですよね?nativeのspeakerを授業の場に連れてくるというのを以前からやっているようですが、効果は出ているのでしょうか?授業はクラス40人に教師一人で週3コマくらいでしょうか、これで生徒一人当たりにすると年間でどれだけの会話ができるのでしょうね。単にnativeの発音を聞いているだけのような気がします。
教育局面でまず手をつけるべきことは中高の学級人数を最低でも現状の半数以下にすることでしょう。そして自由な題目での英会話時間を増やし、ここでコミュニケーションの基礎を作る。つまり生徒一人一人に時間を与えるわけです。英会話教室で生徒が40人だなんて考えられませんよね?こうして会話が増えることでクラス内人間関係も改善され(るかもしれず)、一石二鳥です。
こういった根本に立ち入った構造変更を行わない限り、改善は見込めないでしょう。でも日本の行政・官僚って他人を型にはめることが好きな人が多いみたいだから、上のひと(教師)が言って下のひと(生徒)は聞いているだけ、という自分たちの組織と同じ図式(つまり上意下達。下位者の意見を基本的に不要とみなす)を変えることには絶対に取り組まないでしょうね。期待するだけ無駄かも。
学校以外になると英語を話さなくてもいい人たちの動機付けはさらに難しい。したがって、もし本当に日本人の英語能力を高めたかったら、社会を他のアジア諸国と同じ状況に置くことです。つまり、無理にでも他言語国家化するのです。入国管理局の審査を劇的に緩和し、公私の採用試験も国籍不問に改善して、こんな不況の日本でもよければ誰でも歓迎しますよと世界に意志表示して各国各地域から(英語話者に限らず)人を受け入れ、日本語を話す人数を国民の半数近くにしてしまう。そのうえで英語を公用語にすれば、まず役所と病院と駅、ついで今まで日本語のみだったあちこちの職場で英会話が通常の光景になることでしょう。ただし人口密度がかなり上がるでしょうけど。


なお、最初の疑問ですが、解けてません。climbing以外にもgoing upとか言ってよさそうだというのはわかりましたが。高尾山はとりあえずsmall mountainということにしておきました(笑)。
2000/02/19 記

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