雑記帳


「ない!」
山に来て忘れ物に気付く場合、ものによっては洒落にならない場合がある。想像しただけで怖いのは、夕暮れ、近くに小屋がないテント場に着き、設営しようと思ったらポールがなかったとか。テント本体がなかったらもっと怖い。


自慢ではないが、よく忘れるのがカトラリー(フォーク、スプーンなど)である。さて食事でもしようか、と湯沸かしの準備を始めると気付く。季節に関わりなくよく忘れる。それでも大昔にザックの雨蓋に入れっぱなしにしていた割り箸とかが発見されて事なきを得るのだが、代替用品が何もなかったことも一度だけあった。仕方ないので手近なところの細い木の枝を折り取ってナイフで削り上げ、即席の箸にしたこともある。草木は取らないのが当然の昨今からすれば後ろめたいのだったが、勝手な都合とはいえ背に腹は代えられないのだった。
次によく忘れるのはカップである。さて茶でも飲もうか、と湯沸かしの準備を始めると気付く。特に暑い季節に忘れることが多い。夏とかは湯を沸かそうという気が起きないので、カップを使うことがあまりないせいか見もしないで山行が終わることも多く、そのまま「中に入っているだろう」と次の山行でもザックの中をろくに確かめないまま現地に来て、実は入ってなかったことに気付くのだった。こういうときは仕方ないのでコッヘル(鍋)でお茶を飲んでいる。
考えてきてみると、食事関連での忘れ物が多い。山小屋での一泊山行でのこと、朝食を食べて出発してしばらく歩き、昼になってさて食事だとばかり座り込み、ザックからバーナー、ガスカートリッジ、水筒、食料、と身の回りに並べてきて、何か重要なものがないことに気付く。おいおい、コッヘルがないぞ。
手持ちの食料はアルファ米主体の湯で戻すタイプだったので、水を溜めて火にかけられるものがなければ話にならない。そのときは鍋も薬缶も食器もなかったのでお手上げである。行動食は飴しかなかったのでその糖分で空腹をごまかしつつ、急いで山を下ったのだった。


他にも、ラジオを持ってきたのはいいが電池がなかったとか(これも洒落にならない)、キャンドルランタンを持ってきたのはいいがキャンドルがなかったとか、水筒とガスバーナーと薬缶とカップはあるのだがお茶がなかったとか、間抜けな話は尽きないのだった。笑い話で済んでいるうちはいいのだが。
2000/8/16 記

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