雑記帳


山中のご馳走
そもそも下界でひと様に自慢できるほどおいしいものを食べているわけではないので、山の上でも大したものを食べていない。グループで行く場合は私を除けば美食家揃いなので黙っていてもおいしいものが出てくるし、紅葉の秋に仲間と鍋と切り身を担ぎ上げたこともあったが、こういうことについて文句を言うつもりは何もない。
これが単独行になると、自分以外は誰も献立を考えないのでいきおい食べられればいいという内容になる。主食はカップ入りのラーメンが定番で、行動食はソーセージだのカロリーの多いビスケットだの総菜パンだの、たまには行動食が主食になったりする。これは日帰り山行でもそうでなくても同じようなものだ。
かさばらず、すぐに食べられるものとしてはおにぎりが一番いいと思う。これは大きく言えば日本が誇るファストフードであり、栄養と同時に水分も摂れる合理的な食事だ。主食にも行動食にもなれる。蜜柑などの柑橘類も特に暑い季節には必需品だ。りんごやなしと違ってすぐ皮をむいて食べられるので行動食のカテゴリにはいるだろう。柑橘類は中身が房になっているから食べたいだけ食べてあとはポリエチレンの袋にでもいれて次の休憩時にでも食べればいい。


しかし他の季節はともかく暑い季節の山で最大のご馳走は、喉が乾いたときに飲む山の水と汗だくの身体に吹き付ける涼しい風だと思う。同じ風でも下界の風とはありがたみが違う。眺めの良さは季節ごとにそれぞれだが、風はやはり夏に限るようだ。
水は飲む場所を選ぶ必要がある。地域に限って言えば、エキノコックスの存在がある以上は北海道に行って生水を飲むべきではないだろう。私の友人が大雪山に行った折り、山の生水を平気で飲んでいる中年女性に出逢ったそうだ。控えめに注意をしたところ、「私は水を飲んでおなかをこわしたことなんてないのよ」と言われたそうな。こういう方はエキノコックスがキタキツネなどを媒介して人間の肝臓に取り付く寄生虫で、キタキツネが飲むのと同じ水系で水を飲むのも同様の感染危険性を持つこと、感染して無処置の場合は「致死的な経過を辿」ることを知ったほうがいいと思う。

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