完全学校週5日制で学力低下が心配

2002年2月11日(月) 産経新聞

完全学校週5日制 中学校長の7割「学力低下する」

「塾通い増える」は5割

今春から始まる完全学校週5日制をめぐり、全国の中学校長にアンケートを行ったところ、7割が「学力が低下する」と考え、5割が塾通いの増加を予想していることが十日、全日本中学校長会の調査で分かった。さらに、「テレビやゲーム、マンガなどで過ぎ押す時間がさらに増える」と考える校長は9割、「家庭での過ごさせ方に問題がある」とする校長も8割に上るなど、学校側の不安が浮き彫りになった。

調査は、昨年8月、各都道府県から3校ずつ計141校を対象に実施。136校の校長から回答を得た。予想される生徒の週末の過ごし方では、「テレビやゲーム、マンガなどで過ごす時間が増えると思う」と回答したのは123校(全体の90.4%)。「ゲームセンターやカラオケに行く機会が増えると思う」も64校(47.1%)にのぼり、週末の有効活用を不安視する声が目立った。

週末への懸念(131校回答)では、「家庭での過ごさせ方に問題がある」が109校(83.2%)、「土曜日に保護者不在の家庭が心配」が113校(86.3%)、「生徒が参加できる地域社会での活動が少ない」が124校(94.7%)など。

これらの懸念が学力低下への不安にも結びついているようで、完全週5日制実施後の予想として94校(69.1%)が「学力が低下する」と回答。72校(52.9%)が「塾に通う生徒が増える」としている。

週末の過ごし方について、文部科学省は「自然体験活動など、ゆとりの中で生きる力をはぐくむ」方針を打ち出しているが、東京都台東区や埼玉県深谷市、茨城県つくば市など、土曜日の補習実施を探るケースも目立ってきており、ゆれているのが現状だ。

調査結果について、全日本中学校長会の鈴木一男教育研究部長=東京都港区の青山中学校長=は「学校と家庭、地域との連携をより深め、相互の信頼関係を高める必要がある」と現状の問題を指摘。

その上で、「文部科学省が『学びのすすめ』のアピールを行い、宿題や補習を奨励したことで、学力低下に対する不安は薄れている。また、週末講座の推進など地域住民を巻き込んだ取り組みも始まっており、暗い材料ばかりではない。各校で工夫して欲しい」と求めている。

 

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アピール 「新学習指導要領」は学力低下に拍車

公立高校教諭 山谷健一(大阪市淀川区)

「高3生の学力軒並みダウン」を伝える本誌の記事を興味深く読みました。

この調査は進学上位校を対象にしたもので、中位校や下位校ではもっと学力低下が著しいことが想像できます。

こうした学力低下は、2003年度から実施予定の「新学習指導要領」でさらに拍車がかかるのではないかと、危惧しています。

大学など各方面から指摘されている「学力低下」とは、受験技術を磨く生徒の学習結果が反映したものといえます。

「受験戦争」「受験地獄」を緩和する目的で大学入試科目が軽減され、少子化による学生数の減少に対応して試験内容の程度を下げている現状が「学力低下」の遠因になっています。

その意味で、新学習指導要領に盛り込まれている「ゆとり」や「多様化」は大きな問題をはらんでいます。

「ゆとり」とはいったい何を言うのでしょうか。「多様化」とはどういうことなのでしょうか。

根源的な、あるいは哲学的な問いかけが欠落しているのです。

言い換えると、受験勉強の技術的な緩和だけを図る考え方を打ち出しているにすぎないといえます。

学力回復を装いながら、実際は「学力低下」の原因に目をつぶり、学力修復への道筋を「ゆとり」「多様化」といった言葉でごまかしているのではないでようか。

学校現場の教師の立場から言えば、主要5科目のうち国語力の低下がもっとも気掛かりです。

生徒に問題を解かせる場合、問題の意味を理解できない者が年々増えています。

パソコンやワープロの普及で、手で実際に文字を書く機会が減り、漢字の読み書き能力も落ちています。

新学習指導要領では、世界史を必修にするより日本史を必修にすべきですし、英語より日本語を重視する方向に転換してもらいたいものです。

英語、世界史に重きをおくのは、欧米諸国との競争を意識しすぎた結果であり、足元を見ない軽率さを感じます。

文部科学省には現場の教師の声を率直に聞いて、新学習指導要領の練り直しを求めます。

ピント外れな改革を止めて、実施の見送りを求めます。

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