日韓関係
産経新聞 H13年7月14日より
今こそ交流ではないのか
日本の歴史教科書をめぐって日韓の間で外交摩擦が起きている。
韓国は日本に対する抗議、報復の意味で、防衛交流の中断や
政府官協議の中止、さらに「日本孤立化策」として国際舞台での
日本非難の強化などを発表した。自治体交流や民間の文化交流でも
韓国側の一方的な中止が伝えられる。
いかにも感情的な対応だ。
それが韓国なのだとして受けとめるしかないが、ただ、自分たちの
いう通りにしてくれないといってたちまち相手に怒りをぶつけて
相手とは話をせず、外に飛び出して他人に訴えて回るというのは、
成熟した外交姿勢ではない。
1998年の大統領訪日で「過去は清算された」と宣言し、
対日友好外交を進めてきた金大中政権の今回の急変ぶりに
われわれは驚かざるをえない。
知日派の金大中大統領は日本の教科書制度が「複数検定・自由採択」
で政府の介入に限界があることは、当然承知のはずだ。
韓国側の過度の対日要求が日本の国民感情を刺激し、日本各界の
韓国に対する感情が悪くなることも知らないはずはない。
にもかかわらず、国を挙げて性急な日本非難の「反日路線」に
急旋回した背景については、国内政治の苦境から脱出するためとの
見方も伝わっている。相変わらず、「反日」が世論の迎合を受け、
政治的にプラスだということだろうか。そうでないことを祈りつつ、
知日派大統領として知日ぶりを生かした理性的な外交を
切に望みたい。
それにしても韓国側で出ている日本との交流中断の声はおかしい。
逆に今こそ相互理解のため交流すべき時期ではないのか。
歴史認識に違いがあればお互い交流する中で意見を述べ、
説得し、協力を求めればいいのである。
その際に、日本側も韓国側も大いに意見を述べ説得すべきである。
韓国では依然、日本も韓国と同じく国定教科書で一種類しかないと
誤解している人が多いと聞く。したがって日本では、
いわば右から左までいろんな教科書がありうるのだという
日本の事情を、韓国の国民に理解してもらうべきだ。
そもそも歴史教科書の記述が間違っているかどうかは
国家間で交渉する外交問題ではない。学者たちの議論に
まかせるべきなのだ。
韓国側が早くこの常識に立ち返ることを望みたい。